第3話 クエスト完了

 結構、森の深くまで入り込んでいたので、帰りは森の外まで転移した。


 街道沿いに歩いて街まで戻ると、ギルドへと向かうために大通りを進んでいく。


 ギルドに到着すると、スイングドアは壊れたままだったので、開かれた入口から中へと、抵抗なく入ることが出来た。


「あれ、マオさん? どうしたんですか? 聞き忘れでもあったんですか?」


 マオがギルドに入ってきたのに気づいて、事務処理をしていた受付嬢が声をかける。


「いや、クエストの達成報告に来た。」


「えっ? まだ数時間しか経ってませんし、手ぶらですよね?」


 マオが手ぶらでやって来たので、そのまま受付嬢は、疑問を呈した。


「あぁ、そういうことか。どこか広い場所はあるか?」


 マオの受け答えに疑問しか湧かないが、受付嬢は、とりあえず聞かれたことには返答した。


「広い場所なら、モンスターの解体スペースが裏にありますよ?」


「そこに案内してくれ」


 本来なら受付が、安易に持ち場を離れることはないが、今の時間帯は冒険者も少ないため、自分1人が抜け出しても差し支えないだろうと、案内につくことにした。


「こちらへどうぞ」


 マオは、受付嬢のあとを追い、解体スペースのある裏へと進む。


「そういえば、名前をまだ聞いていなかったな」


「私の名前はマールといいます」


「そうか。これからもよろしく頼む」


「はい、お任せ下さい」


 簡単な自己紹介が終わり、2人が解体スペースにつくと、そこにいた業務員が解体作業を行っていた。


「シンさん。お邪魔しますね」


「おう、マールじゃねえか。どうした?」


「こちらのマオさんが、広い場所を求めていたので」


 マールにそう言われたシンが、探るような目付きで、マオを値踏みする。


「お前さんがマオか?」


「そうだ。今日、マールに冒険者登録をしてもらった」


「へぇ、駆け出しか。俺はシンってんだ。ここの責任者をやっている」


 筋骨隆々とした姿が特徴的で、責任者と言われても何ら不思議に思わなかった。


「よろしく頼む」


「ところでお前さん、こんな広い所で何する気なんだ? 俺の大事な仕事場なんだから、壊すような真似は止めろよ?」


「それはない。モンスターを討伐してきたから、広い場所に出したかったんだ」


「もしかしてお前さん、収納持ちか?」


 聞きなれない言葉にマールが反応した。


「シンさん、収納持ちって何ですか?」


「マールはこの業界じゃ、まだ日が浅いから知らねえか。たまにいるんだよ、【アイテムボックス】っていう、スキルを持ったやつが。かなり珍しいスキルで、アイテムにあるマジックポーチの上位互換だ。容量はマジックポーチの比じゃねぇがな」


「そんなスキルがあるんですか!? 初めて聞きましたよ!」


「冒険者の間じゃ有名な話だけどな。そいつがパーティにいるだけで、遠征とかもだいぶ違ってくる。手ぶらであっちこっち行けるから、引く手数多なんだよ」


「へぇ、凄いですね」


「で、お前さんは、そのスキルを持ってるんだな?」


「持ってないぞ。俺が使えるのは【無限収納】だ」


「なっ!? 無限収納だとっ!」


「シンさん、またわからない単語が出てきたんですけど」


「【無限収納】は収納系の最上位だ。その名の通り、一切容量を気にすることなく、収納することが出来る。これは、【アイテムボックス】よりもレアで、一生のうちに使い手に会えれば、ラッキーとまで言われているものだ」


「そんなにレアなんですか? 今、目の前のここにいますよ」


「……ラッキーだったな」


 シンは視線を逸らして、バツが悪そうに答える。


「それで、モンスターを、ここに出して構わないのか?」


「あぁ、済まない。熱くなりすぎたようだ。構わないから出してくれ」


 【無限収納】から次々と出される魔物の死体に、シンは驚愕し目を見開いた。


「こいつは……」


 全て出し終えると、そこには山積みとなった、薬草、ホーンラビット、ゴブリン、フォレストウルフが眼前に広がった。


「すまないが買取査定は、今日中には無理だ。明日までには終わらせるから、今日のところは、クエスト達成報酬だけ貰って我慢してくれ」


「あぁ、わかった。マール、クエスト達成報酬をくれ」


「……」


「マール!」


「えっ? ……あ、何ですか?」


 目の前の出来事に呆けていたマールが、マオに呼びかけられて、現実世界へと復帰した。


「クエスト達成報酬だ」


「あ……わかりました。受付へ戻りましょうか。」


「ボーっとしてどうしたんだ?」


「いや……マオさんが、こんなに魔物を出すのが悪いんですよ。誰でも吃驚しますよ」


「そうか。これでも少ない方なんだがな」


「これで……」


 マオの少ない発言に、更に驚いたマールと2人で解体場を後にすると、受付へと戻って来た。


「……で、達成報酬ですね?」


「そうだ」


「えぇと、常駐クエストの薬草の採取に、ホーンラビット討伐、ゴブリン討伐とフォレストウルフ討伐の4種類になります。数が数なんで、ギルドマスターに伺ってきますね」


「わかった」


 マールがギルドマスターに会いに行くと、マオは手持ち無沙汰になったので、次なるクエストの獲物を物色する。


数分経っただろうか……その後、マールが戻って来た。


「マオさん、ギルドマスターからの指示で、Dランク昇格になりました。こちらが報酬になります」


「Dランク昇格?」


「はい、Eランククエストを難なく達成し、相当数の魔物を持ってきたので、下位ランクのままにしとくのが、勿体ないそうです」


「そうか。まぁ、早くランクを上げたかったから、好都合なのだが」


「マオさんだったら、トントン拍子でランクが上がりそうですね」


「そうなればいいな。それじゃ、また明日な」


「はい、また明日」

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