第13話 クリスティーナの決心
街に帰る前に聞いておくことがあった。それは、街までの距離!
自慢じゃないが体力には自信が無い。遠いようなら使い魔に乗って移動したいのだ。
しかし、彼から返ってきた言葉は意味不明だった。
「それは心配ない。一瞬だ」
一瞬? 意味がわからない……
「要するに転移するんだよ。街の近くまで。バレると騒ぎになるから、人気のない街の外に」
転移魔法? ありえないんだけど……だって失われた古代魔法よ? そんな魔法のような魔法を使えると言うの!?
しかも何? 部下も使えるって……部下がいるの? 初耳なんですけど……
わけがわからないわ。王であって王ではないと言うし。だいたい、王様だったら、何でこんなところで冒険者なんてやってるのよ!
しかも、王様の仕事を人に押し付けた? 自分を殺しに来た人間に?
驚きの連続で、もうこれ以上驚くことはないところで、私は物凄い事実を知ってしまった……
「ま……ま……魔王ですってぇー!?」
キャラが崩壊しているとか、どうでもいいわよ! それよりも、目の前の男は、自分が魔王だと言っているのよ!
何よっ! 真祖の私よりも遥かに強いじゃない! しかも、仕事を人に押し付けて、そいつが今は魔王(仮)とかになってるなんて、ありえないんだけど。
全魔族のためにも、誰が魔王(仮)になったのか突き止めないと。
私がこの世界の住人じゃないなんて言わせないわ。ここに召喚された以上、れっきとした魔族の一員よ!
「魔王(仮)は勇者だ」
「「……」」
「はぁぁぁああ?」
ありえないでしょ!? 何よ勇者って! 魔王とは真逆の存在じゃない! 何でそんなのが魔王(仮)になってるのよ!
いくらなんでも突拍子すぎよ。勇者が魔王なんかしたら、魔族は全滅じゃない。魔王の天敵である勇者が、魔王なんてしてたら、どこの魔族が勝てるって言うのよ!
しかも何? 天敵じゃない? 貴方は頭に、お花畑でも咲き乱れてるの? 天敵だから今までの魔王が、死んでいったんでしょうが!
貴方が討たれてないのだって、討たれる前に魔王にしたからでしょ? それに、今までずっと討たれていないってどういうことよ?
「どうもこうも、今まで来た勇者は、今回を除き全て返り討ちにした」
「はぁぁぁああ?」
何で勇者を返り討ちにしてるわけ? セオリーを守りなさいよ、セオリーを! 魔王は勇者に討たれるものでしょ!
それなら何年魔王をやってるのよ? 魔族を繁栄させすぎでしょ。そもそも、勇者が弱すぎるって何よ? 弱いわけないでしょ。しかも、執事より弱い? ありえないわ!
もうこうなったら、証人を呼ばせるしかないわね。さぁ、呼びなさい! 勇者の教育係? そんなの関係ないわ! 今すぐ呼ぶのよ!
「セバス」
「ハッ! ここに」
えっ? 執事じゃない……どこからどう見ても本当に執事だわ。まさか、本当の話とでも言うの?
しかも、私を初見で真祖だと見抜いた。一体何者なの? 貴方の主は、私のことを全然知らなかったわよ?
しかも何? マオは真名のことも知らないの? 一般常識が無さすぎじゃない?
それに、貴方にだけは、抜けているとか言われたくないわ!
いい加減、マオの即位年数を教えてもらわないと。話が全然前に進まないじゃない。
「魔王様が即位なされて、既に500年が経過しております。これは史上最高の統治年数でございます」
……500年? えっ? どういうこと……精々長く続いても100年が関の山でしょ? 必ずと言っていいほど、勇者に討たれるのだし。
100年続いたのだって、たまたま勇者が世に現れなくて運が良かっただけだし。
マオはそんな勇者を、赤子の手をひねるかのように、返り討ちにしたっていうの? どの魔王も勝てた試しのない勇者を?
しかも、今は勇者が魔王(仮)で人族と戦っているの? 魔族軍の戦争の指揮を勇者が? ありえないことだらけだわ。
あぁ、セバスさんは帰るのね。消えたってことは転移魔法? マオが言ってた部下も使えるって、セバスさんのことだったのね。
それにしても、マオは本当に強かったみたいね。さらにセバスさんも強いわね。隙が全然感じられなかった。一体何者なの?
え……悪魔? 意味わからない。何でそんな種族を召喚出来てるの? マオって一体何者なのよ。
それにしても、今までの勇者を返り討ちだとか、勇者を魔王(仮)にするだとか、挙げ句の果ては、悪魔を執事にしてるなんて破天荒すぎるわ。
兎にも角にも私のご主人様は、ちょっと常識のない天然さんみたいだけど、いい人には変わりないわね。
これからは、元の世界に帰るつもりもないし、貴方に尽くして生きていくわ。放っておくと何をしでかすかわからないし。
私がちゃんと見張ってないとね。
とりあえず、今は街に帰りましょうか。
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