第12話 レアドロ周回はロマンか地獄のどっちか

 鳩が何だろうこの人…みたいな目で才子を見ている。


「拙者は主殿の従僕にして2号の霧隠才子と申します」


「あ、愛人!?」


「ではワタクシは3号ですのね?」


「すでに3人目!?」


「ワタシもいますよ~」

才子の髪からにゅっと黒凜子が出てくる。


「ハーレム野郎だった!?」

鳩さんがすごいテンパってますね。



「せ…正妻は誰なの…?」

「そこにいる凜子どぐぼぇっ!」


凜子の右ストレートがいい角度で入った。


いいオチになってなにより「ぐぼぇっ!」


俺も喰らった。理不尽では?


「あーんーたーらーはー…」


「でもこれ正妻にしておかないとさらに怒るやつですわね」

「ワタシもそう思いますよ」


さらに拳が2発刺さった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ということで、同中の敵ですが…ヤバいです。」


「あそこにかわいい妖精さんがいますね?」


指をさす。ふよふよと羽の生えたかわいい生物が浮いている。



「あれですが、索敵こそ50Mぐらいしかありませんが…」


「ありませんが?」


「戦闘に入って攻撃を受けたら…」


「受けたら?」


「ここにいる一番タフなガールである凜子さんが死にます」


「「え!?」」



「というより一番タフなのが驚きですわ」

「話が進まないからスルーしておくね」

凜子さんニッコリ


「そしてあそこにいる大きいゴーレムですが…」


「ですが?」


「うちのPTでの最速忍者である才子さんの倍は早いです」


「倍!?」



「ちなみに才子さんは100M走何秒ぐらいですか?」

「おそらく1秒ぐらいではないかと…ああ、空気抵抗が無ければもう少し早いかもしれないですね」


「ソニックブームは起こらなくて安心したわ」



「私達もう詰んでません?」


「だったら才子をここに呼んでませんね…」




「健様ならここを超える手段があるんですわよね?」


「ああ…もちろんだ」



ということで行こう。この先へ



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「けむり玉!」


煙幕が漂う。


そう、これが作戦である。


ここの敵は当たり前のように逃走不可属性がついている。

だが…技逃げでは普通に逃げれるのだ。


必ず先制できる陣形技、ダッシュストリームを使用して、必ず逃げる技であるけむり玉を使う。


これだけで突破できるが…。



ここに来る場合、絶対に狙うべきレアアイテムが存在する。


それを落とすまで帰れません。


「…ねぇ…そのレアアイテムってドロップ率何%?」

「0.2%」


凜子さんの顔が絶望に染まった。


500戦すれば出る計算だし、なんとかなるはずよなんとか。



「というわけで、隠しボス前ではありますが、ここから連戦です」


「うう…」

「主殿…何か手加減できませんか?」

「無理」


即答である。


このダンジョン…ボス前には敵がいないのである(即死罠はあるがマーキングはしている)


戦闘不参加組の2人は結構大変そうではある。ここまでほぼダッシュだったしな…


「……この人たちにはスタミナという概念が無いんですの…?」

「…(言葉が出ない)」


ゲームの主人公ってずっと走ってるけど疲れてないよね?多分そのおかげでPTメンバーは大丈夫なんだろう…


「ボス手前の部屋の脇にある小道の奥の部屋…ここにいる…」

「このラブリーラビットを倒します」


「「「「え…?」」」」


目の前にはかわいらしいウサギがいる。


ちなみにこのウサギはボーパルラビット…首狩りウサギの上位種である。


「もちろん普通に戦えば負けます」

「「「「ええ…?」」」」


「ということで戦い方ですが…」


「ここにギロチントラップがあります。」


さっきから謎の空間から一定間隔でギロチンが落ちてきている場所がある。



「ということでこの手前で凜子は盾を構えててね?絶対に油断しないで」

凜子さんは盾を装備できるのです。


凜子、才子、俺の順番で並ぶ。


「凜子、ストレングス、ファランクス、シールドアップ」


「…ストレングス、ファランクス、シールドアップ」

腕力強化呪文、ダメージカット、クリティカル回避の技、シールド防御率、シールド減衰率強化の呪文である。

何でもできる凜子さん本当に素敵。


「ディフェンダー、プロテクションも」

「…ディフェンダー、プロテクション」

防御力UPの呪文、体力強化呪文。


「才子、絶対必中の儀」

「…承知しました」

これは投擲技の命中を100%にする特技だ。ラブリーラビットは基本的にこちらの攻撃は全て回避されるからな。


「タイミングを合わせて飛び苦無だ。いくぞ?」

緊張が走る。ギロチンの落下に合わせて投げなきゃ最悪死人が出るからな…。

ちなみに今の陣形はランパードという防御力を上げる陣形技ができる状態になっている。


索敵範囲が100Mぐらいしかないのが救いだな…。


「いくぞ…3…2…1…今だ!!」

苦無がラビットに当たった瞬間ものすごい勢いで盾に突進してきた。


「ランパード!」

陣形技、ランパードだ。これで敵の物理攻撃を20%削ることができてノックバックを受けなくなる。


「…!!!!」

ものすごい衝撃が凜子の盾に入る。ってかゲーム的には3人連なってる状態であるのに、衝撃がこっちにも来るって凄すぎる。


そして…無慈悲なギロチンの刃が振り下ろされた。



ラブリーラビットのドロップは外れの方のドロップであるウサギ肉だ。今日のご飯だな。



「……とりあえずこれをあと499回でーす」


そんな目で見るなよ…俺も超怖いよ…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る