第3話 主人公不在

最初こそ優勢だったが、徐々に蓮は押されていく。理由としては彼女の攻撃にあった。


2回行動


ターン制ゲームにおいてこれ程チートな能力はないだろう。

ただ、蓮は回避率でなんとかこれを凌いでいた。


『流石ラスボスってわけね!自分が1アクションしてる間に2回アクションを起こされてる気がするわ!』


蓮の攻撃は捌かれる。ゲームの世界では瑠璃の正面防御率は100%を超える。側面、背面でガード率は下がるのだが、側面でさえ70%のガード率がある瑠璃にクリーンヒットは出なかった。


ガード率が高い瑠璃だが、ガード軽減率も90%を超えている。瑠璃が仲間になるルートの難易度が一番低い理由の一つである。


「奥の手を使わせて貰うわね!」


蓮の体が消えて瑠璃の後ろに現れる。

咄嗟にガードをするが包丁では受けれず、腕を交差して防いだ。

瑠璃のガード判定は2つあり、武器ガードと通常ガードの2段判定が出る。

武器ガードは90%だが通常ガードは30%程だ。それでも破格である。


蓮の拳が腕に当たり、瑠璃は自分の両腕が砕ける音を聞いた。

激しい痛みが走る。

「あああああっ」


瑠璃はその場で砕けた腕を見た。

折れてはおらず、少し痣になっている程度だ。


「これは…確かに砕けて…幻覚?」

「イメージブロウ…凄まじい威力のイメージを乗せた拳よ。大抵の人なら気絶するんだけど…精神力が強いのねアナタは…」


瑠璃は考える、もしこの一撃を腕以外に貰ったら?

頭蓋が砕け、臓腑が破裂するイメージを貰ってしまったら?

意識をしなくても戦闘不能になるのは間違いないだろう。


この女は秘密を知っている。この秘密を健くんに知られてはいけない。

「私は…健くんと幸せになるの…邪魔しないで!!」


悪魔は瑠璃に力を貸す。否、今瑠璃自身が悪魔になりつつあった。

想いだけで悪魔を呼び、悪魔を喰い返した瑠璃は力を解放する。


だが一方的だった。

瞬間移動を駆使した戦いに瑠璃はついていく事が出来なかった。

レベル1の状態でここまで戦えるだけ瑠璃のスペックの高さは窺えるが。



「ホーリーイメージ」

邪なもの、醜いものを浄化するイメージを叩き込まれた。

瑠璃はいつも戦っている。

自身が正しく無いと認めつつも譲れない想いを持っている。


愛して、愛されて、となりにいたい。

二人きりの世界に入り溶けて一つになりたい。


その欲望は消えない。消せない。

だからこそ効いた。効いてしまった。


悪魔の力が消えていく、信仰心を持ってなかったとしても、この世界で冠婚葬祭を行う以上そういったイメージから逃れられないのだ。


だが、完全には消えない。

消させやしない。


自身が醜くても、自身が悪魔であっても

私は隣に居なきゃいけない。


そう誓ったのだ。


「某国のテロリストに憑いてたのも祓えたんだけどねー、でもあと1発かな?」


瑠璃の身体は動かない。


「嫌っ嫌ぁぁああ!」


とどめの一撃が入ろうとしたその時、そこに突風が吹いた。


「義によって助太刀致す。悪いが蓮殿、引かぬのならば拙者が相手をするでござるよ」


二人の間に、戦装束になった才子が立っていた。

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