第10話 最後の輝き

ウゴメクモノが隠しヒロインということで一時期話題になった。


な、なんてクソ要素をブッ込んで来たのだ…と。

会うために10時間。

会ったら三分の一で主人公死亡でゲームオーバー。


ルートに入ってない状態のヒロインを殺し、そのヒロインのルートに入るように動くとウゴメクモノのルートに入る。


基本的にヒロインの死を信じられない主人公と目の前の怪物が織りなすストーリーであり、本作の中でも鬱要素満載ルートである。


最終的にウゴメクモノは瑠璃から主人公を守り死んでしまい、主人公は亡骸を抱えながら宇宙へ旅立つ。


長い旅路の果て、主人公自身がウゴメクモノになり、ヒロインを見つけ嬉しそうに飛びつき殺してしまう。

辿り着いたのは過去の地球、過去の世界であり、18禁版でにゃんにゃんしてたのは未来の自分であったという事実もあるが、何故にタイムワープしたのかはわからない。


ちなみにシナリオ担当は失踪した。


シナリオ担当の最後のツイートは

「俺にもわからない」

だった辺り、このゲームのバッシングやら色々がおかしい事を察して欲しい。


つまり、目の前の黒い凛子は未来の俺なのかもしれないわけだ。


さて、そんな瑠璃でも殺す、地球外生命体であるウゴメクモノだが本作屈指の強さを誇る雑魚である。


もう一度言おう、雑魚である。


「ジェミニスターライト!」

かーらーのー


「デストロイフィンガー!!」

「シャイニングエンドォ!!」

「魔皇縛!」

「クリンゲルローリングクラッシュ!!」

「魔皇縛!」

「シャイニングデビルバースト!!」


連撃システムというのがある。

敵をスタン等の行動不能にすると連撃が開始され、技毎に設定されているスタン値を利用して一定数まで追撃を加えることができるのだ。

この連撃は魔皇縛を使ったダウン値バグの応用である。


今の連撃は理論値ではラスボスを倒し2倍量のオーバーキルを与える程の威力になる。


しかし、もう使う事は無いが。


能力ではバランス型なものの、藤島健には一つの特徴がある。


俺は投げキャラなのだ。


魔神を使ったパワープレイで敵を投げ飛ばす。コンセプトはこうなのだが…



この世界では投げれる敵がほとんどいない。

ほぼ全て掴み無効を持っている。


男性キャラを仲間にする時の試合か、人型のウゴメクモノしか投げ技は使えないのだ。


なので、通常攻撃と魔神ダブルパンチ以外はゲーム中で使う事がほぼない。


なお、ラストバトル時にデストロイフィンガーを覚えてないと最後に逆転負けゲームオーバーになるので近所の秋元さんに奥義書をもらっておこうな。



ウゴメクモノを撃破する。

地球外生命核というアイテムがドロップするが、記念アイテムなだけで何も意味がない。


拾う気も起きないので、そのままにする。


「主殿、凛子どのが!!」


ああ…死んだんだよな…

どうしよう…俺はこれからどうすればいいんだ…


回復薬はオカルト部の先輩に頼むとして…

即死回避はテニス部のアイツで…


「胸を一突…これでは助からぬ…主殿!!」


あー…あの場所で詰むな…回避してなんとかなるか?あー…


「凛子殿?最後に?主殿!!こちらに来てくだされ!」


予定が狂い過ぎてわけがわからんが、凛子の死亡ボイスを聞きに行く確か…

『私には…まだ…』だっけか聞いたら即ロードしてたな…


凛子は…死にそうだ。無理もない。

胸からは血が溢れ、口元にも血が…

血まみれになりながら、か細い声で喋ろうとしている。






「ごめん…ね…まもれ…なくて…」




……は?


なんて言った?


「オイ、ふざけるなよ!なんて言った?」


凛子の呼吸がなくなっていく。身体を起こさせるが、もう身体に力がない。


顔を起こさせる。瞳はもう何も写してない。


「なんで謝る?なんでだよ!俺はお前の事を見てなかった!ただキャラクターで生きるための便利な道具にしてただけなんだぞ?」


なあ、最低だろ?

ミックスオレだってそうだよな。あんだけ嫌な顔になってたんだ。でも飲ませてた。


凛子の生気がどんどん無くなっていく。この感覚を俺は知っている。


ああ…そうだよ、これが死ってやつなんだ。

もう味わいたく無い。自分が自分じゃなくなる。自分が消える感覚。


それを目の前の彼女に負わせた。

ただのキャラだから。

自分が生きるためだから。


いろんな理由をつけて。


凛子は知っていたはずだ…そんな俺だって、最低な奴だって知っていたはずなんだ…


「なんでそんな言葉が出るんだよ!悔しいと思うだろう?俺が憎いって思うだろう?」


誰も答えてくれない。当たり前だ。才子だって何も言えないだろう。



涙が出て止まらない。何も見えない。



光が集まる。この世界では死んだ人間と魔物は世界に還る。


消える瞬間を見たくなくて凛子を床に横にして立ち去る。

「主殿…」

「行こう…」



トポトポとダンジョンの出口に向かおうとした時に奇跡は起きた。







「思わないよ、私はそんなこと思わない」








振り向いた先には輝いた凛子が立っていた。





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