第4話 お嬢様の華 (エレンディア視点)
ワタクシの名前はエレンディア=スケープゴート
ラム財団のにより育ったスケープゴート家の一員である。
ワタクシはちょっと過去を思い出していた。
執事のクリスと一緒に今日もつまらない日々を過ごしていた日。
「ねえクリス、貴方はどうしてこんなにも尽くしてくれるの?」
「それはですね、お嬢様。私は貴方のお姉様に命を救われたからですよ」
「お姉様?」「ええ」
スケープゴート家は闇の一族。中世では皇帝の死を無かったことにするお付きをしていた。
スケープゴート家の女性は自らの命を糧にして人を蘇生する力を持つ。
一族はそれを糧にして生きてきた。
「究極の自己犠牲…」
まさにそれである。
ワタクシのラム財団は世界中のありとあらゆる場所にいる。
ラム財団の大体の人は『命を救われた恩を返す』だけで動いている。
これは善意だ。ラム財団の人間は究極の善に対して少しづつ善を返していく。
ワタクシの兄弟は30人、従兄弟は1000人以上だろうか…
スケープゴートの男は何不自由無く生きている。働くもよし、遊び続けるのもよし。
兄弟は分けて世界に散らばっている。
ワタクシは日本という場所で暮らしている。
ワタクシは母様も生きている。ただ姉はほとんどいない。
これはビジネスではない。善意なのだ。
姉達は愛する者の為に死んだ。
そして姉が愛した人は亡くなった姉のために何かできないかと模索する。
模索した結果たどり着くのがラム財団だ。
目の前にいる若い執事。クリスは姉様の婚約者だった人だ。
交通事故で右腕以外の全てを失った。そしてエリート街道一直線。婚約済み、絵に描いたような幸せから落ちた事に絶望した彼はその右腕で自分の命を絶ったのだ。
そして彼はさらに絶望した。別れを告げたハズの婚約者である、ミカナ姉様が『自分と同じように』死んでいたのだ。
クリスは姉のように元気な姿を取り戻した。
死んでしまった婚約者に対して何ができるかを模索し、彼はたどり着いた。スケープゴート家のラム財団へ。
そしてワタクシの執事となって今に至るわけで…
「なんだかよくわからないわ、誰かの為に死んじゃうなんて」
「普通はそうですよ。私にはわかりません。だから使いたい人にお嬢様は使って下さいね」
…なんだか違和感を感じた。
その違和感をワタクシは小学校の友人、工藤瑠璃に相談した事がある。
「気持ち悪いわ!何それ?家の為に尽くします!ならまだいいけど、そこは絶対に使わないでと言うべきでしょ!」
「そういうものですの…?」
「そうよ!エレンは道具じゃないわ!しかもそうやって命を救われた人間が恩を返す辺り呪いか何かよ!だからエレン、貴方は絶対に使わないでねそんな力…」
「ありがとう瑠璃…」
今思えば瑠璃が怒ったのはあれが最初だっただろうか。
そして中学は学区の都合で瑠璃とは離れ、学園で再会するのである。
その時にワタクシは命を、全てを捧げたい人を見つける事になったのだ。
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