魔法か!? 魔法だよ。
唾液のことなんてどうでもよくなって、僕はローラインの元に走った。3人のゴブリン達が彼女を取り囲んで、ほのかに光る粉を振りかけているところだった。はだけられた軍服にはぬらぬらとした血が付着していて、とてもいやらしい気持ちなど起きなかった。それよりも、切開した跡も、肩の傷もなくなっていたことに驚いた。
「魔法かよ!?」
「魔法だよ」
つい先程までぴくりとした動かなかったローラインが、くすりと笑った。白い首筋に映える赤い血がやけに対象的で、僕は奇妙な美しさをそこに見出してしまった。猟奇映画の、グロテスクも美しいワンシーンに近いものがある。
「おっと、いつまでも見てもらっちゃ困るな」
「あっ、す、すいません」
背を向けると、すっかり元気を取り戻したローラインの陽気な声が聞こえてくる。
「あ、衛生兵のゴブリンたちも見たかったらどうぞ?」
「魔女の体に興味はねーよ」
「だろうね」
「魔女?」
「そうだ、魔女だ。君の知っている魔女とはだいぶ違うがね。箒に乗って飛んだりしないし、毒薬も作らない。……まあそんなことはどうでもいい」
「そうだぞ。とにかく合流地点に急がなくては」
例のゴブリンが僕らの間に首を突っ込んできて言った。その怪訝なシワの深い顔を数秒見つめると、ローラインは顔をほころばせた。
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