ガリガリ君みたいな色の女
「ここはどこで、なんでこんなところにいるんですか?」
「そりゃ君も私も、彼らと一緒に行くからだよ。私の言うことがわからないか?」
「そりゃもう、わかりませんよ。何一つ」
呆れを隠しもせずにそう告げる。すべてが夢の中みたいで、でも彼らの体から漂う匂いや下品な言葉が、現実だということを教えてくれる。汗と油、それから酒。様々な臭気がここに充満していた。それだけでも居酒屋が入った雑居ビルを連想して嫌気がさすのに、飛び交う言葉ときたら。僕もそれなりに口汚い節があるが、彼らの言葉はなんというか、酸っぱいのだ。鼻につくというか。
「そうか。ところで君、名前はなんていうんだい」
「僕は……前田。前田です」
さっきまではモンスターたちに視線が釘付けだった僕だが、今はもっぱら彼女のことを眺めていた。単に彼女が美人だったからというより、この蒸し暑い熱気の中で彼女の涼し気な髪を見ていると、心が安らぐ。60円のアイスみたいだし。
「私はローラインだ。それにしても……聞いたことのない名前だね。随分遠くから来たみたいだけど。北のほうかい?」
「え、さあ。多分、東のほうかと」
「そりゃまずい。もし同じことを聞かれたら、西から来たと言ったほうがいいだろうね」
「どうしてですか?」
「そりゃあ……」
彼女は続けたようだが、その先は聞き取れなかった。格納庫中に警報が響き渡ったからだ。天井近くに備え付けられたランプが緑色に点灯し、先頭から歓声があがる。
「グリーンライト! 降下せよ、降下ァー!」
彼らもライフルやマシンガンやらを背負っていて、それがどんな屈強な種族であったとしても、顔をこわばらせていた。雑談が一斉に止んだ。
一体何が始まるのか、皆目検討がつかない。
列は進み始めていた。先頭から、大きな雄叫びが聞こえたと思ったら、すぐに消えてしまう。突然そこからいなくなったように、突拍子もなく。一体何なのだ。
「もしかして、僕はなにかとんでもないことに巻き込まれているんですか?」
「アハハハ。そうだよ。でも君だけじゃない。私も、彼らも、この世界に住んでいる人々すべてが巻き込まれているんだよ。実にメーワク極まりない」
「それってもしかして、戦争ですか?」
「もしかもなにも、まったくその通りだよ。そんなことも知らないでここまで来るなんて、まったくとんだ馬鹿者だな君は」
「い、いや。僕はベッドで寝てて、目がさめたらここにいたんです」
その間に列はどんどん進んでいた。
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