番外編『鍵穴のエルフ キャスカ・ロングウェイ』#17
「クソアマごときが……! 許さねえぞ、許さねえ! 意味のわからねえ鍵穴に弾をぶち込んでも面白くねえ! 大事にしてるその腹を! 俺の角で破ってやる! そしたらそのままダバディアへ走って、お前の死体を晒しまわってやる!」
彼はぐったりしている彼女のもう片方のリボルバーを引き抜くと、私に見せつけるようにハンマーをおろした。
悲鳴が店中に響き渡る。彼女の右足から血が迸り、壁と床に飛び散る。
そのとき私の足に何かが当たって、恐る恐る机の下を覗き込んだ。私の足に、彼女の肉片がはね飛んできていたのだ。
「ああ、あああぁ……! やだ! やだ! やだ!」
彼女を狙うアングストのことなんて忘れて、机をくぐってかけよった。彼女の左足の傷は深く、白い骨が見えていた。必死に彼女のダスターコートをひろうと、それの袖をあて布もせずに巻きつける。
「死なないで! 死なないで! やだ! やだ! やだぁぁ!」
「うるせえクソガキ! あの時は逃してやるのもおもしれえと思ったが、やめだ! てめえの両親と同じところに送ってやる! てめえもだ女! 馬鹿なエルフが歯向かいやがって、身の程知らずが!」
がちり、と撃鉄が起こされる音が聞こえた。
「あぁ……いい……」
彼女の声が聞こえた。恍惚とした声。まるで愛するものと出会ったかのような、蕩けた声。
「でも……この程度じゃお話になりませんわ」
彼女の右手が、私の影で素早く動いた。アングストには私のせいで何も見えなかっただろう。
ガキン、という音が、私達の耳を震わせた。それはリボルバーや、隠し持てる銃の大きさではない出ない音だ。
そして彼女はゴーレムの腕で私をかばい、抱き寄せ……。
「さようなら家畜さん」
アングストの体にマシンガンを叩き込んだ。
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