現実が夢をみせる
『いいからこれで撃て!』
僕は見様見真似でライフルを持つと、その小ささに少し驚いた。片手で振り回せるくらい軽い上に、引き金が僕の指より小さい。だけど暴発防止のための枠(トリガーガード)だけはやけに大きく、僕はなんとか引き金を引くことができた。
1発、2発。まるで反動がない。おもちゃの射的みたいだ。少しばかり楽しくなってきた。
だが違和感になれるより早く撃ちきってしまった。当たったのかどうかなんてわかるはずもない。実際に撃ってわかったのは、弾が当たったかどうかなんてほんとうに実感できるものではないのだ。
「弾は?」
『こっちを!』
また後ろからライフルを渡された。変にぬめりのあるライフルだった。泥がぐちゃぐちゃについているのかもしれない。照準を確認する余裕すらなく、僕は再び撃ちきってしまった。
「弾!」
と言ってライフルを後ろに渡そうとして、それを取り落した。ぬめりのせいだ。
そこで気づいた。泥でもなんでもなく、そこには血糊がべっとりとついていたのだ。
ゾッとした。ライフルを拾い直そうとして手が止まったまま、僕はそれに手を触れられずにいた。
熱狂した夢が凍りつく。血を見ただけで、この世界が異世界だろうが、そんなことは全く関係ないんだと理解できた。これは現実なのだ、色濃く! 間違いなく!
現実は夢を見せる。現実が辛いから、夢を見るのだと。
いま僕が見ているものは悪夢だ!
どかん、と目前の陣地で何かが爆発した。水に土が落ちるザザー、という音が遅れて耳に入る。
そのあとも連続でいくつもの爆発が起こった。実際の爆発は地味なものだ。映画みたいに赤い炎も上がらず、ほんの小さく瞬いて、土を巻き上げる。それが夜闇の中で、パッときらめく。
直後に、僕らの左側の、また池を通り越した土手の上で、激しい銃声が聞こえた。一発や数発じゃなく、何十発もの弾が、僕らをいじめていた陣地に撃ち込まれる。
ばしゃばしゃと水をかき分けて走ってくる音がして、その音の主は素早く僕の後ろに滑り込んだ。
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