GAME 28「ゲルダの伝説(3)」
無事に剣を手に入れ、遂にルーくん操るシンクの冒険が始まった。
「じゃあルーくん、まずは基本操作を覚えていこうか?」
「おー!」
「ゲルダの伝説」の操作方法はアクションRPGとしてはオーソドックスなものだ――というか、このゲームの操作方法が後発タイトルの基になったというか。
十字ボタンでキャラの移動。Aボタンで通常攻撃(剣を振る)。Bボタンで現在装備している「アイテム」を使用する。
「アイテム」には爆弾や弓矢、ブーメラン等の武器と、
それぞれ壁を破壊したり剣では倒しにくい特定の敵を倒したり、はたまた隠し洞窟や通路を見付けたりするのに役立つ。
装備中の「アイテム」を変更するには、スタートボタンを押して「サブ画面」を表示させる。「サブ画面」では「アイテム」の切り替えの他にも、現在までに取得している「トライアングル」の数も確認出来る、という仕様だ。
なお、初期状態のシンクは「アイテム」を何一つ持っていない。
洞窟やダンジョンの中で発見したり、敵が落とす「お金」を貯めて
「ふむふむ、Aボタンでケンをふる――」
操作を確認する為にルーくんがAボタンを押す。
すると――。
「わわっ!? なんかでたよー!?」
シンクが剣を振る(というか突き出す)と同時に、剣先からビームが出た。
「あ、言ってなかったね。シンクさんのライフ……画面の右上にある三つのハートマークね? これが全部赤い時は、シンクさんの剣からビームが出て、遠くの敵も攻撃出来るんだ」
「ケンから……ビーム……? なんでビームがでるの?」
「う~ん……力が、有り余ってるから、かな?」
改めて「なんで?」と問われると答えに困る。
けれども「剣からはビームが出るもの」としか答えようがなかった。いや、本当になんで剣からビームが出るのだろうか――?
***
――気を取り直して。
「ゲルダの伝説」は比較的自由度の高いゲームだ。
決められた道筋は無いに等しく、全部で九つあるダンジョンの内、大魔王ガロンが待ち構える最終ダンジョン以外の八つは、ある程度は好きな順番でクリアすることが出来る。
ダンジョンにはそれぞれ「LEVEL-1」から「LEVEL-9」までの名前が与えられていて、数字が大きくなればなるほど難度も高くなる。なので、決められた順番はないけれども、数字通りに攻略していった方が楽ではある訳だ。
各ダンジョンには様々なアイテムが秘められていて、それらを取得することで地上マップで行ける場所が増えていく仕組みだ。また、ダンジョンに潜むボス敵を倒すと、シンクのライフをハート一個分増やすアイテムを貰えるので、シンク自身も段々とパワーアップしていく。
そうやって探索出来る範囲を広げながら八つのダンジョンを全て攻略し、ガロンが待ち構える「LEVEL-9」ダンジョンへ向かうことになる。
――けれども、この「自由度の高さ」というのは、時に厄介なものだったりもする。
「ねぇねぇアッくん! つぎ、どこにいったらいいの?」
一通り操作方法を覚えた後、ルーくんには「まずは好きに遊んでごらん」と、特にヒントも与えずにプレイしてもらっていた。
最初の内はルーくんも「よ~し! ぼうけんのたびにれっつごー!」等と、やる気に満ち溢れていたんだけど……いつしか同じ場所をグルグル回り始めて、敵を見付けては条件反射的に倒すという「サーチ&デストロイ」状態になっていた。
で、つい今しがた「自分は何をやってるんだろう?」と正気に戻ったところだった。
思えば、ルーくんに今まで遊んでもらったファムコンタイトルは、「面クリア」型のゲームが多かった。
目的が細かく区切られていて、とりあえずは目の前のゴールへと邁進すればゲームが自ずと進行していく――それが当たり前だったのに、いきなり自由度の高い世界に放り込まれてしまったので、どこへ行けば良いのか分からなくなってしまったのだろう。
「さて、自分の時はどうだったかな?」と考えてみて、ふと思い出した。
そう言えば説明書に序盤のヒントが書いてあったような……?
僕は早速スマートフォンを取り出して、ミニファムコンの公式サイトへアクセスした。
ミニファムコンには説明書が同梱されておらず、代わりにWebサイト上で公開されている。それを見に行ったのだ。
「ゲルダの伝説」の説明書を開いて中をよくよく読んでみると……あった。説明書の後ろの方に、「LEVEL-1」ダンジョンまでの手引きが書かれていた。
流石は南天堂。こういった事態も予測して、説明書にヒントを書いておいた訳だ。
「よしルーくん、最初はこのヒントの通りに進んでみようか? まずは、スタート地点に戻って、そこから北へ向かって――」
***
流石は公式のヒント。あれだけ彷徨っていたルーくんシンクは、今度は道一本間違えずに「LEVEL-1」ダンジョンへと辿り着いていた。
「ルーくん、じゃあ早速ダンジョンへ入ってみようか?」
「お~! いっけーシンクさん~!」
ルーくんがダンジョンの入り口へとシンクを突入させる。
――ちなみに、「LEVEL-1」ダンジョンの入り口は、「顔」のような形をした大きな枯れ木の「口」にあたる部分だ。ちょっとだけ入るのが怖い。
画面がダンジョンマップに切り替わる。と同時に、BGMもダンジョン専用のものへと切り替わった。緊張の瞬間だ。
「わぁ~、なんだかうすぐらいねぇ~」
「ダンジョンだからね」
ダンジョンの中も基本的には「画面切り替えスクロール」方式になっている。一部屋が一画面に収まっていて、通路を通じて隣の部屋へ移動する。
けれども時折、通路の扉が閉まっていて鍵がかかっていることがある。扉の鍵は、別の部屋の敵が持っていたり、その部屋の敵を全滅させると現れたりと、入手方法がいくつかある。
そうやって少しずつ、ダンジョンの中を探索していくのだ。
「ん~なんだかまよっちゃいそう……」
「そうだね。このダンジョンはまだ小さい方だけど、段々広くなっていくからね……。でも大丈夫! 途中で『地図』と『コンパス』を拾えばいいんだ!」
「ちずと……こんぱす?」
「ゲルダの伝説」には「オートマッピング」のようなシステムはない。画面左上に「全体のこの辺りにシンクがいます」という現在地表示こそあるけど、あまり手助けにはならない。
けれども、ダンジョンのどこかに隠されている「地図」を取得すると、ダンジョンの全体図が画面左上に表示されるようになるのだ。
「コンパス」の方はダンジョンのゴール地点――即ち「トライアングル」の場所を地図上に表示してくれるアイテムだ。
そしてゴール地点の手前には当然、そのダンジョンのボス敵がいる。
ダンジョンにはその他、概ね二つずつ「アイテム」が隠されている。
「LEVEL-1」ダンジョンに隠されているのは、確か「ブーメラン」と「弓」だ。どちらも飛び道具なので、持っていれば今後の冒険が楽になる。
さてルーくんは無事にダンジョンの全てを踏破して、最初の「トライアングル」を手に入れられるかな――?
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