「侵略!宇宙人」編
GAME 13「侵略!宇宙人」
「ねぇねぇアッくん! このテーブルさん、おかねいれるところがついてるよ? どーして?」
ある日のこと。
ルーくんが、うちのリビングに置いてあるテーブルを眺めながら、不思議そうな顔をして尋ねて来た。
一見するとガラスの天板を持った、ちょっと風変わりなデザインの長方形テーブルなんだけど……ルーくんの言う通り「硬貨投入口」が付いている。
そればかりか、なんとゲーム用のスティックとボタンまで付いている。
――そう。このテーブルはただのテーブルではない。
「ふっふっふっ! 気付いてしまったか、ルーくん! 実はね、このテーブルさんは……大きなゲーム機なんだ!」
「えええっ!? これもゲームき、なの?」
「そう。これはね、大昔に流行った『侵略!宇宙人』ってゲーム専用の機械なんだよ」
「侵略!宇宙人」は、一九七八年に発表されたビデオゲームの先駆けの一つだ。
テレビゲーム以前の、店先などに置かれるいわゆる「アーケードゲーム」として発売されて、日本中にブームを巻き起こした名作ゲームで、
特にテーブル型は喫茶店などに置かれて、当時の若者達を虜にした……らしい。
「ねぇねぇ! じゃあ、これでゲームができるの?」
「あはは、残念ながらこれは壊れててね。ただのインテリアとして置いてあるだけなんだ。――でも、『侵略!宇宙人』はファムコンでも遊べるんだよ。やってみる?」
――ルーくんは、一も二もなく頷いた。
***
「侵略!宇宙人」は、自機を移動して敵を撃ち落とす、いわゆる「シューティングゲーム」だ。
システムは至ってシンプル。縦五段、横十一列の計五十五体の「
インベーダーは一糸乱れぬ動きで横へ移動し、画面端に到達すると一段下がって、今度は逆方向へ……という動きを繰り返す。自機のいる最下部まで到達されたら自動的にゲームオーバーになる訳だ。
しかも、インベーダーはただカニ歩きと下降を繰り返すだけではない。自機を狙って「ミサイル」を落としてくるので、それを上手く避けなければならない。
自機の前にはトーチカ(陣地)がいくつか配置されていて、これは敵や自機の攻撃を受ける度に壊れていく。基本戦略は、敵のミサイルを避けつつ、トーチカに隠れつつ、トーチカ同士の隙間から少しずつ「インベーダー」を撃ち落としていく、と言った感じになる。
自機のビーム砲は、一発撃つと「インベーダー」に当たるか、最上部に到達するかしないと次弾を撃てない。つまり、一発外してしまうとその間は次の攻撃が出来ないということになる。
逆に、「インベーダー」に当たりさえすればすぐに次弾が撃てるので、「わざとインベーダーを最下部近くまで引き付けてから、一気に
他にも隠しキャラ的な「UFO」が登場したり、
「……あのカニさんやタコさんがてき?」
「うん。インベーダー……宇宙人だね。あれが段々と下がってくるから、一番下に来る前に全部倒さなきゃいけないんだ」
ファミコン版の「インベーダー」は、紫や青、緑などカラフルに描かれていて、形も三種類ほどある。
それぞれがどんな意図でデザインされたものかは知らないけれども、ルーくんにはタコやカニに見えたらしいな。
「よ~し! ちきゅうのへいわはルーくんがまもるよ~! ……わっ!? うちゅうじんさん、ウンチおとしてきたよ!?」
「あはは、ウンチじゃなくてミサイル……爆弾だね。確かにウンチにも見えるけど」
インベーダーの落としてくるミサイルは、インベーダーから少し離れた所に発生して下に落ちてくる。これは、ミサイルが「糞」に見えないように配慮した結果らしいけど……配慮しても、やっぱり「糞」に見えるよなぁ。
僕も子供の頃はウンチだと思ったし。
まあ、そもそも全てが簡素なドット絵で描かれているので、「見ようによっては」の世界でもあるんだけど。
自機なんて凸の字そっくりで、とてもビーム砲台には見えないしね。
大切なのは「想像力」、か。
「えい! えい! このこの!」
「お、流石に上手いねぇ、ルーくん」
ルーくんにシューティングゲームをやらせるのは初めてのはずだけど、なかなか上手いものだった。
既に「ドンキーゴリラ」や「スーパーマダオブラザーズ」をそこそこやりこんでいるので、「躱す」「当てる」という基本動作はお手の物、といったところか。
でも――。
「あれ? アッくん、うちゅうじんさんのうごきがはやくなってきたよ?」
「ああ、そうだそうだ。宇宙人さん達はね、仲間が沢山やられればやられるほど、動きが速くなるんだよ」
「……そうなんだ。うちゅうじんさんも、なかまおもいなんだね……。やっつけるけど」
天使のような優しさと、悪魔のような無情さを覗かせつつ、ルーくんは淡々とインベーダー達を撃ち落としていった――。
*次回予告*
『つくって、こわして、あそびましょ!』
――ルーくんが最近夢中になって観ている教育番組だ。
子供達が一生懸命作った工作物を自らの手で破壊して、「作ることの大変さ」と同時に「物は簡単に壊れる」という教訓を学ぶという、中々前衛的な番組なんだけど……ふむ、そう言えばファムコンにも似たようなゲームがあったな!
次回、「解体工兄弟」をお楽しみに!
(注:この次回予告には一部嘘が含まれています)
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