GAME 24「ドゥルガーの塔(2)」
「ドゥルガーの塔」は、基本的にはアクションゲームだ。
とは言え、「マダオ」シリーズのように飛んだり跳ねたりはない。いわゆる「見下ろし型」の平面マップの上で、キャラクターは上下左右にしか動かない。立体的な動きはないのだ。
各階はランダム生成の迷路になっていて、一部の階を除いて必ず「鍵」と「扉」が存在する。「鍵」を取得し、「扉」へ到達すると次の階へ移動出来る仕組みだ。
ただし、迷路の中には各種のモンスターが待ち構えていて、ギルガメシュの行く手を阻んでいる。これを倒したり避けたりしながら進まなければならない。
ギルガメシュの攻撃方法は、基本的に「剣」による刺突のみだ。
ボタンを押している間は剣を構え、離すと収める。剣を構えていない時は盾を正面に構えるので、一部の遠距離攻撃はそれで防げる。
剣を構えている間は、盾は左側面に向けられる。この状態でも盾による防御は有効で、左側からの遠距離攻撃を防ぐことが出来る。
ただし、剣を完全に構える、もしくは完全に仕舞うまでには多少のタイムラグがあり、その瞬間はギルガメシュが全くの無防備になる。めったやたらに抜刀と納刀を繰り返していると、危険極まりない。
モンスターは多種多様。
例えばファンタジーではお馴染みの「スライム」。基本的に一撃で倒せるけど、「スライム」側もギルガメシュを一撃で殺す攻撃力を持っている。また、色の違いで能力が異なり、一部のスライムは魔法まで使ってくる。
「騎士」タイプの敵はドゥルガーによって生み出された魔物。一撃では倒せず、剣を構えた状態で何度も交差する必要がある。その度に相手とギルガメシュの「体力」が減っていき、先にそれが尽きた方が負けとなる。
なお、「体力」は隠しステータス扱いで、現在値を確認する方法がない。これが地味に辛い……。
他にもファンタジーの王道である「ドラゴン」タイプや、ワープして魔法を放ってくる「マジシャン」タイプの敵も存在する。
「スライム」と同じく、それぞれ色や形で能力が微妙に異なるのが特徴だ。その特徴を見極め、適切に対処していく必要がある。
「よーし、じゃあ早速『ドゥルガーの塔』を攻略していこう!」
「お~!」
既にファムコンの電源は入っており、「THE TOWER OF DURGA」のタイトルロゴが表示されている。
この時代のファムコンタイトルにありがちな、黒背景でBGMもない、地味なタイトル画面だ。
けれども――。
「よ~し、じゃあスタート!」
ルーくんがスタートボタンを押すと、画面に「FLOOR 1」と表示されファンファーレのような勇ましいBGMが鳴り響いた。
「わっ、かっこいいね!」
「でしょ? このゲームは音楽も良いんだよ。――あ、ほら始まるよ」
そしてメインゲーム画面が表示された途端、行進曲を思わせる勇壮なBGMが流れ出した。
シンプルながらもこれからの大冒険を感じさせる、名曲だ。
「ほんとだー、おんがくカッコイイ~! よ~し、おんがくにのせてギルガメシュさん、ゴー!」
ルーくんが十字ボタンを押し、ギルガメシュが第一歩を踏み出す――が。
「おそっ!?」
ギルガメシュのあまりの鈍足ぶりに、ルーくんが驚愕の声を上げていた。
……ああ、やっぱり。ルーくんの目から見ても遅いよね。
全身鎧のせいなのか、ギルガメシュの動きは他のアクションゲームの主人公に比べてあまりにも遅かった。
遅すぎて遅すぎて、初心者の中には一階で「時間切れ」となってしまう人も少なくないくらいだ。
「ねぇねぇアッくん、ギルガメシュさんは『Bダッシュ』とかできないの?」
「う~ん、『Bダッシュ』は無理だけど……二階で足が速くなるアイテムが手に入るよ。まずは頑張って、一階をクリアしてみよう」
「……うん、わかった!」
ルーくんは一瞬「げっ、マジかよ?」みたいな味わいのある表情を浮かべたけれども、すぐに「足の速くなるアイテム」が手に入ると知って、気持ちを切り替えたらしい。
ルーくんって割り切った時の気持ちの切り替え、早いよね……。
「ドゥルガーの塔」の一階分のマップの広さは、おおよそ画面二つ分。横長になっていて、全貌を知る為には画面をスクロールさせる必要がある。
「鍵」と「扉」の位置もランダムなので、スタート位置から両方とも見える場合、片方だけが見える場合、両方とも見えない場合があり、結構運の要素も絡んでくる。
迷路の構造もランダムなので、「『鍵』も『扉』も見えるけど、それぞれ全く逆方向からしか辿り着け」なんてひどいケースもあり得る。
「わぁっ!? アッくん、なんだかみどりいろのプルプルしてるのがいるよ?」
「それはスライムだよ。スライムが止まっているところを、剣で刺して倒すんだ!」
しかも迷路の各所にはモンスターが待ち構えている。
一階にいるのは、緑スライムだ。特殊能力を持たない最弱の敵だけど、それでもギルガメシュを一撃で殺す攻撃力を持っている。油断しているとあっさりやられてしまう。
「え~と、けんをかまえて……え~い!」
気合い一閃(ただし鈍足)。ルーくん操るギルガメシュは、見事に緑スライムを撃破した。
「よ~し、このちょうしでほかのスライムさんも……わわっ!? アッくん、スライムさんたち、とつぜんうごきだすよ!?」
「うん。だからちゃんと止まっているところを見計らって倒すんだ。不用意に攻撃しに行くと、逆にやられちゃうからね」
「むむむむ……」
緑スライムは動き出す直前に「プルプル」と体を震わせるので、突然動き出すようなことはない。
けれども体を震わせてから実際に動き出すまでの間には、僅かな時間しかない。鈍足なギルガメシュでは、咄嗟に避けることも出来ない。不用意に近付くのは危険なのだ。
ルーくんは常に剣を構えたまま、慎重に慎重に、緑スライムを倒しつつ、迷路を進んでいく。
迷路で迷うようなことはなかったけれども、慎重に進み過ぎているので、
「しんちょうにしんちょうに……え~い! やったー! またスライムさんをたおしたよ! ……あれ? ねぇねぇアッくん、あれ、なぁに?」
「ん? ああ、あれは宝箱だよ」
「たからばこ?」
――それは丁度、ルーくんが三匹目の緑スライムを倒した時のことだった。
画面上に突如として、宝箱が出現したのだ。
「あの中にはね、色々な魔法のアイテムが入っているんだ。一階にあるのは……『
「ふ~ん?」
どうやらルーくんの語彙の中にはまだ、「つるはし」という言葉は無かったらしい。とりあえず「壁を一度だけ壊せるアイテム」としてインプットされたようではあるけど。
そう言えば、工事現場でもあんまり見なくなった気がするな、つるはし……。
――「ドゥルガーの塔」では、このように各階に宝箱が隠されていて、それぞれ出現条件が異なる。
例えば一階の場合だと、「緑スライムを三匹倒す」。次の二階だと、「黒スライムを二匹倒す」だ。
宝箱の出現条件は説明書などにも記載のない、いわゆる「隠し要素」になっている。中には普通にプレイしていたら決してやらないであろう操作も含まれていて、中々に鬼畜仕様だ。
僕が最初に「ドゥルガーの塔」をプレイした時には、攻略本の類も発売されていて、宝箱の出現条件の一覧なんかも載っていた。
けれども、「ドゥルガーの塔」は元々アーケードゲームだ。稼働当初は攻略本なんてものも、殆ど無かったはずだ。果たして、昔のゲーマーの人達は、どうやって宝箱の出現条件を知ったのか……? やはり、自分で色々試してみたり、発見した人が口コミで広めたりしていたのだろうか?
攻略本の存在が当たり前だった、「ファムコン世代」の僕には想像も出来ない世界だな――。
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