GAME 31「マッポー(2)」

「よ~し! おたからをぜんぶとりもどしちゃうよ~!」


 僕の見本プレイが終わり、ルーくんへバトンタッチ。

 幸いにして僕の見本プレイはノーミスで終わったので、ルーくんの目には「簡単」に見えたらしく、やる気に満ちている。

 最近は「魔王村」やら「ドゥルガーの塔」やら「ゲルダの伝説」やら、高難度のゲームばっかり遊んでいたから、気楽に遊べるタイトルに飢えていたのかもしれない。

 ……「マッポー」の次も、出来るだけ単純なゲームを選んだ方が良いかもな。


 ――とはいえ、「マッポー」も決してヌルいゲームではないんだけどね。


「わわっ!? ねこさんどいて~!! ――あっ!?」


 画面上では、ルーくん操るマッポーが、ニャーキーズの挟撃を受けてあえなくやられていた。

 ニャーキーズはマッポーに追いすがるような動きをする。なので、マッポーの両側にニャーキーズがいる時は、注意して動かなければならない。

 不用意にどこかの階へと移動すると、前からも後ろからもニャーキーズがやって来て、ジ・エンドとなってしまうのだ。


「む~、ちいさいねこさんたち、マッポーさんのことスキすぎない?」

「あはは、そうだね。ニャーキーズさん達は、意地でもマッポーさんに付いていこうとするんだ。だから、動きを先読みして、挟まれないようにマッポーさんを動かさないとね」


 実際、ニャーキーズが予想外の動きをすることは、ほぼ無いと言っていい。落ち着いて対処すれば、延々と躱し続けることも出来る位だ。

 もっとも、ニャーキーズは何匹もいるし、ゲーム自体の制限時間もあるしで、中々「落ち着いて対処」すること自体が難しんだけど……。


 最序盤でやられてしまったものの、ルーくんがへこたれた様子はない。

 「魔王村」のような理不尽な難度ではなく、「ちょっと頑張ればどうにかなりそう」な程度ということを、肌で感じ取っているのかもしれない。

 ルーくんはすぐに気を取り直して、ゲームを再開した。


「よ~し、次こそまけないよ~! ……あれ? アッくんアッくん、おっきいねこさんが、おたからのうらにかくれてるよ?」

「ああ、ニャーヌコさんはね、ああやってお宝の裏に隠れる習性があるんだ。隠れてる間にお宝を回収すると、少しだけ得点が増える上に、ニャーヌコさんがしばらくの間おとなしくなってくれるんだよ」

「そうなんだ! よ~し、それじゃあさっそくおたからを……」


 言いながら、不用意にニャーヌコが隠れているお宝へとマッポーを近付けるルーくん。

 しかし――。


「あっ!?」


 マッポーがお宝に近付いたところで、不意にニャーヌコがお宝の裏から飛び出した!

 哀れマッポーはニャーヌコの奇襲を受けて、やられてしまった。


「も~! おっきいねこさん、いきなりでてこないでよ~!」

「あはは、今のはタイミングが悪かったね。ニャーヌコは、しばらくするとまた飛び出してくるから、狙うなら早めにね」


 ――等と、序盤こそ苦戦する場面が多かったものの、ルーくんは段々と「マッポー」に慣れていった。

 この手の、ある程度パターンが決まっているゲームは、ルーくんの得意分野なのだ。


「ねぇねぇアッくん、あのピカピカひかってるドアはなに?」

「ん? ああ、あれは――」


 洋館の中には幾つか「ドア」が存在する。

 ドアはAボタンかBボタンで開閉が可能なのだけれども、ちょっと面白い仕組みがある。なんと、なのだ。

 同じ階にいて、ある程度まで近くにいれば、マッポーがドアから離れていても開閉出来る、謎仕様だ。


 ドアはドアノブが付いている方向に開く。ドアが開いた際、開いた側にニャーヌコ達がいると吹き飛ばして気絶させられる。

 面白いことに、ニャーヌコ達は自分でドアを開けた際にも、ドアにぶつかって気絶することがある。勝手に気絶してくれるのだから、儲けものだ。


 ……それで、ルーくんの言っている「ピカピカ光っているドア」というのは「パワードア」と呼ばれる特殊なドアだ。

 その性能はというと――。


「ルーくん、光ってるドアが開く方向に猫さん達がいる時に、ドアを開いてみて?」

「えっ? ……こう?」


 ルーくんは言われた通り、「パワードア」の前にニャーキーズを引き寄せてから、パワードアを開いた。

 すると――。


「わっ!? なんか!」


 「パワードア」からビーム(正確には「衝撃波」)が放たれて、ニャーキーズ達を画面端へと吹き飛ばしていった。

 哀れ、途中で偶然同じ階にいたニャーヌコも巻き込まれて画面外へと消えていき……彼らの消えていった方から得点表示がスライドしてきた。


「ルーくん、光ってるドアはね、開くと今みたいにビームが出て、猫さん達をやっつけられるんだ。でも、一つのドアにつき一回しか使えないから、よく考えて使うんだよ」

「わかったー! よ~し、ねこさんたちをぜんめつさせるぞ~」

「……ルーくん、目的が変わってるよ」


 そんなこんなで、ルーくんは「マッポー」を気に入ってくれたようだった。

 やはり、しばらくの間は単純なアクションゲームを中心に遊んでもらうことにしよう――。



   *次回予告*


 最近では、ルーくん達が僕のマンションで晩御飯まで食べていくことも多くなっていた。

 しかも母さん、「晩御飯作るの大変」とか言って、宅配ピザに頼りだす始末。

 ルーくんが肥満児になったらどうするんだ!


 ――等と言いつつ僕もピザを食べるんだけど。

 ふむ、そう言えば食べかけのピザみたいなキャラクターのゲームがあったな……。


 次回、「パクパクマン」をお楽しみに!


(注:この次回予告には一部嘘が含まれています)

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