概要
ひょんなことから、全校生徒の憧れの的である四年生の先輩に飛行箒競技『スカイ・クラッド』の代表選手としてスカウトされてしまったからだ。
なにをどうして劣等生の自分が選ばれたのか皆目検討がつかない。
けれど、彼女にとって誰かに強く必要とされることは、初めての経験だった。
それは昔々の話。
といっても、せいぜい十年くらい前の話だ。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!少女たちは空を翔る
努力はしている。けれどなかなか実らない。
そんなニナが出会ったのは、才能に満ち溢れた先輩ナコト。
貴方には才能がある。そう言われても、いまいちピンとこないニナが一つ一つ、問題をクリアしながら空を翔る姿が生き生きと描かれています。
箒で空を飛ぶことは難しく、命がけの事。
間違えば墜落して死んでしまう。
それでも少女たちは空を飛び、競技を通してぶつかり合う。
飛ぶ理由。それが一体何なのかを考えることで、登場人物一人一人の想い。個性が見え、その世界で彼女たちは確かに生きているのだと実感できます。
そしてこの作品は、ニナが過去を回想する物語となっています。
昔の自分はこう思っていた。というのがニ…続きを読む - ★★ Very Good!!digital magical
かなり理論的に「魔法らしからぬ」整頓された印象は、この魔法というツールが高度に発達したことを顕著に示し、学問としてきちんと体系化されていること、そして不文律的なものを解き明かすような文明力の高さを感じます
同じく、箒を使った競技というのはその魔法世界においてツールとしての魔法が成熟し、魔法の取り扱いにある程度世界の基準が高くまとまった故に現れる「遊び」そしてそこから「競技」へと成熟したことも感じます。
故に世界観はかなり練り込まれており、少し最初読む人からすると難しくとっつきにくいかも、と思うかもしれません。
しかし、この質量はクセになります。
羅列整然と「ツールとしての」魔法を説明するに…続きを読む - ★★ Very Good!!「箒」は「き」と読むこと
新たな常識を意識に植え付ける作品は名作だ。
と、僕は勝手に定義します。
いつの間にか、ごく自然に読んじゃってましたものね、
箒体(きたい)
箒動(きどう)
筆頭箒手(ひっとうきしゅ)
各箒(かっき)
敵箒(てっき)
箒の刷毛(テール)を振り、サーフ粒子の反発力を捕まえて空を飛ぶ。
主人公ニナ・ヒールドを初めとして、完全な人は一人もいない。完璧っぽい人にもちょいちょい差し込まれるぽんこつエピソード。
愛せるわ、これは愛せる。
体感に重点を置いた飛行描写は、滑翔競技が(わりと野蛮な)スポーツであることをがっちりわからせてくれます。
箒と魔力でなんとなくふわふわと飛ぶのではなく、反…続きを読む - ★★★ Excellent!!!空に焦がれる。思いに焼かれる。
エルダー・シングス魔術学院、薬学部に所属するニナ・ヒールドは、お世辞にも優秀とは言えない魔女だ。座学は努力で平均かそれ以上の成績を修めていたが、箒にまたがっての飛行は大の苦手だ。騙し騙しやってきたが、ニナ自身、己の限界を感じてもいた。
飛行学の演習で見事な「墜落」をしたところを飛行競技スカイ・クラッドの代表選手であるナコトに救われる。九死に一生を得たニナだが、その際ナコトに信じられない言葉をかけられる。「スカイ・クラッドの代表選手にならないか」――まともに箒に乗れない魔女に掛ける言葉として、正気ではないように思えた。
この物語で惹かれるのは「どんな落ちこぼれにも光る才能がひとつはある…続きを読む - ★★★ Excellent!!!世界観、キャラクター、ストーリー、どれをとっても隙がない
〈翅翼〉のエリス(2)まで読了。核心に触れるようなネタバレはありませんが、ほんの些細なネタばらしも受け付けない人(そんな人はそもそもレビューを読まないと思うけど)は気分を害される恐れがありますのでお気をつけください。
以下感想。
まず、丁寧に紡がれた作品世界が魅力的で、様々な作中アイテム(鉱石テレビ、魔女雑誌メイガス、無慈悲な誘精灯、ウィチペディアなどなど)が作品を賑やかせながらも完璧に溶け込んでいて、とにかく楽しい。設定のための設定ではなく、こう、ことごとく噛み合っている感じが爽快で好きです。
描写面でも、ときに軽妙、ときに重厚、ウィットとツイストが利いた語り口が、読み進める目と頭を飽き…続きを読む