「箒」は「き」と読むこと

新たな常識を意識に植え付ける作品は名作だ。

と、僕は勝手に定義します。
いつの間にか、ごく自然に読んじゃってましたものね、

箒体(きたい)
箒動(きどう)
筆頭箒手(ひっとうきしゅ)
各箒(かっき)
敵箒(てっき)


箒の刷毛(テール)を振り、サーフ粒子の反発力を捕まえて空を飛ぶ。

主人公ニナ・ヒールドを初めとして、完全な人は一人もいない。完璧っぽい人にもちょいちょい差し込まれるぽんこつエピソード。

愛せるわ、これは愛せる。

体感に重点を置いた飛行描写は、滑翔競技が(わりと野蛮な)スポーツであることをがっちりわからせてくれます。

箒と魔力でなんとなくふわふわと飛ぶのではなく、反発力を求めて箒を操り、アクロバティックに繰り出されるトリックの数々。
腹斜筋がうねる感覚すら覚えますよ僕としては。

その感覚を読者のイメージに投影する見事な語り口、そしてキュートなアリソン。

カタカナ、ひらがなの選択に表れる確かなセンス、そしてキュートなアリソン。

造語や小道具から垣間見えるク・リトル・リトルの文化、そしてキュートなアリソン。


落ちこぼれニナの成長譚、と言うのがわかりやすくはあるのですが、そのイメージとは少し違う。

第一話で提示された「終わり」の可能性にハラハラしつつ、変化していくニナとその周りの物語に浸れば、あなたもいつか気づくでしょう。


箒の音読みは「き」です。


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"2-2:白くてきれいな迷いびと - Snow white strayed" より、『ストリング・バッグ(1)』まで読了。

私の評価ポリシーにより、未完の作品は星二つが最高評価。

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