毛むくじゃらな犬をめぐる冒険

作者 大澤めぐみ

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★★★ Excellent!!!

随所随所でシュールなやりとりで笑えたり、かと思ったら含蓄のある言葉や積み重ねてきた思いに心を打たれたりします。
けどその時その時では、それらの単体でとても面白いものが、読み終わるまでは物語上どのような役割を果たすか分からないというのがミソです。

伏線というのはそういうものだと言われるとそうかもしれないのですが、この作品では小ネタだと思ってたものが意外な役割を果たしたり、逆に重要だと思ってた出来事が思っていたほど本筋に関わらなかったりします。
その予想のつかなさがとても面白くて、すごく好きです!

思えば普段生きている現実もそうで、いま自分がメインだと思って取り組んでいることとは別に、全く異なる文脈の出来事が起きてそれに対処せざるを得なくなったり、メインの筋だと思っていることがいつの間にか別の仕組みに切り替わっていたり……ということの繰り返しです。
そうは言ってもフィクションというのは、あっちゃこっちゃ色んな文脈の出来事が起こるよりは、見せたい筋を明確に示すことがセオリーだと思うのですが、今作はそのセオリーは可能な限り外しているように思えるのです。

それは音程をぎりぎりまで揺らして不協和音すれすれを奏でる現代音楽のような、危うくてハラハラする試みであるように思えます。
ですが、そこは大澤めぐみさんの技量とセンスによってしっかり着地します……これが本当にすごいと思います。
読んでいる途中「これはどう終わらせる気なのだろう」と不安になっても、最後にはフィクションとしての読み味をきっちりまとめてくれます。
このハラハラ感を是非あなたにも味わってほしい。
大丈夫、時速120キロでズバンと着地します。

★★★ Excellent!!!

めちゃめちゃ面白かった。登場人物が生き生きしてるし、人物それぞれの話そのものも面白いし。

ローテンションの語り口調に反して話の展開的には激しい事が起こってるギャップも面白い。

あと某作家をリスペクトしてるけど、その私生活のとこも作品中の要素にしっかり組み込まれててクスッとなる。

随所に仕掛けと面白さが散りばめられてて…いや〜すごい。面白かった。傑作。

★★★ Excellent!!!

ある種の女たらしの才能がある主人公と、彼の家族を中心として一騒動起きていき、それがどんどん膨らんで最後は時速百二十キロでズバンッ!と着地するお話でした。
若い頃はめちゃくちゃヤンチャをしていた老紳士や、アル中寸前の母親、強い幼馴染みや謎の美少女など魅力的な登場人物達が活き活きと描かれています。
本当にめちゃくちゃおもしろいので気になる単語が一つでもあったら是非呼んでみて欲しい作品です。

★★★ Excellent!!!

空中二段ジャンプを決めたらそのままバグって空に放り出されて漂っているかのように様々なことが主人公の周りで(主人公とはあまり関係なく)起こる。どれもこれも胡乱でとらえどころがない。
ジャンルもよくわからないまま(ラブコメでいいのか?)箱をひっくり返した展開が続くが(「箱」というのはこの物語で重要な役割を果たす)、最後にはすべてが収まるべきところに収まっていく。伏線を張るとはどういうことかを考え直させてくれる作品。

★★★ Excellent!!!

むしろ女の子と何にもねんごろになってねえ!
駄目な主人公はヒモの才能がある故に女の子には不自由しないんだけど、甲斐性が無いから結局は飼われているだけなんですね。
女の子は誰も主人公に男として期待していない。
だけど、とある理由で裏社会の重鎮っぽいオッサンからはモテモテです。
むしろ一番評価されているし、とある理由が無くても仲良くなれそうな雰囲気。
作中で一番ドラマを感じるキャラもオッサン(別のオッサン)だし、ゴールド・D・ロジャーみたいな昭和の怪物みたいなオッサンも出てくるし、とてもオッサン成分が強いラブコメでした!オッサン好きにはおすすめです!