なぜだか分からないけどめちゃくちゃ面白い

随所随所でシュールなやりとりで笑えたり、かと思ったら含蓄のある言葉や積み重ねてきた思いに心を打たれたりします。
けどその時その時では、それらの単体でとても面白いものが、読み終わるまでは物語上どのような役割を果たすか分からないというのがミソです。

伏線というのはそういうものだと言われるとそうかもしれないのですが、この作品では小ネタだと思ってたものが意外な役割を果たしたり、逆に重要だと思ってた出来事が思っていたほど本筋に関わらなかったりします。
その予想のつかなさがとても面白くて、すごく好きです!

思えば普段生きている現実もそうで、いま自分がメインだと思って取り組んでいることとは別に、全く異なる文脈の出来事が起きてそれに対処せざるを得なくなったり、メインの筋だと思っていることがいつの間にか別の仕組みに切り替わっていたり……ということの繰り返しです。
そうは言ってもフィクションというのは、あっちゃこっちゃ色んな文脈の出来事が起こるよりは、見せたい筋を明確に示すことがセオリーだと思うのですが、今作はそのセオリーは可能な限り外しているように思えるのです。

それは音程をぎりぎりまで揺らして不協和音すれすれを奏でる現代音楽のような、危うくてハラハラする試みであるように思えます。
ですが、そこは大澤めぐみさんの技量とセンスによってしっかり着地します……これが本当にすごいと思います。
読んでいる途中「これはどう終わらせる気なのだろう」と不安になっても、最後にはフィクションとしての読み味をきっちりまとめてくれます。
このハラハラ感を是非あなたにも味わってほしい。
大丈夫、時速120キロでズバンと着地します。

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