微睡の中で
それから四季が何度となく移り変わった。
賢者たちは去り、ミランはただの猟師に戻った。日の出とともに森に行き、必要な分の糧だけを手に入れて生きる生活に。
今日も今日とて大物を仕留めたので村のほうへ持っていった。
村の広場で女衆が鍋を出して、ミランが狩ってきた肉を調理している。
完成するまで、ミランはぼんやりと空を眺めていた。初夏の日差しがまぶしい。穏やかに流れる雲は、時の流れを忘れさせる。
代り映えのしない日々。昨日と同じ退屈な日常。
理想に燃えるわけでもなく。夢に焦がれるわけでもなく。ただ生きていくだけの毎日。
それで満足していた。
――いや、それは嘘だ。
ミランの心は欠けている。ぽっかりと穴が開いている。ファウナと暮らした一年間は、彼の心を大きく変化させてしまった。
あの冬が終わらなければいいのに。そう何度も思った。けれど、決して口には出さなかった。
待つと言ったのだ。帰ってくると答えたのだ。
だから、それ以上の言葉は二人の約束を穢してしまいそうで――
ミランは瞼が重たくなるのを感じた。彼はそのままごろりと地面に横になって、静かに瞳を閉じる。
なに、きっとすぐだ。その時こそ、あの胸の高鳴りの正体を確かめよう。
やがて、ミランは穏やかな寝息を立て始める。
心地よい微睡の淵で――
「ふおお、これは珍しいですねぇ!」
そんな声が聞こえたような気がした。
ファウナの庭 白武士道 @shiratakeshidou
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