仮面の下
「ミラン殿、どうか助けてほしい」
夏至祭りの翌日のことである。
朝食後の花草茶をすすっていると、強くて、綺麗で、頼りがいがあるはずの女が泣きそうな顔でやってきた。
ひとまず家の中へ通し、椅子を勧める。アクイラは落ち着かないのか、きょろきょろと周囲を見回した。
「猟師の家が珍しいか?」
「いえ。男性の家に来るのは初めてで……その、綺麗に片付いているのですね」
朝餉を済ませたばかりとは思えないほど食堂は綺麗だった。食卓は鏡のように拭き上げられているし、使った食器も洗ってきちんと棚に片付けられている。床にも食べ零し一つ落ちていない。この家の主の性格が窺い知れる。
「普通だろ、これくらい。それで、今日はどうしたんだ。また厄介な獣害事件でも起きたか?」
来客用に淹れ直した花草茶を出しながら、ミランも席に着く。
「いいえ、その……完全に私事なのですが」
「……あのな」
ミランは溜め息を吐き、アクイラを指さした。
「俺とあんたは仲のいい友達じゃない。〔神狩り〕としての仕事なら請け合うことも考えるが、そうでないのなら俺が関わる必要はないだろう」
「そこを曲げて、どうにかできませんか」
アクイラは出された茶に口もつけず、ひたすらに平身低頭だ。よほどの大事なのだろうか。
「……わかった。事情だけは聞く」
ありがとうございます、と前置いて、アクイラは事情とやらを話し始める。
「実は……出たのです」
「何が?」
「ごきぶりが」
「……だから?」
「退治してほしいのです」
ミランはこめかみを抑えて、呻いた。
ごきぶり。説明不要のあいつのことだ。本来は馬陸と同じく土壌生物の一種で、動植物の死骸を食べて自然へ栄養を還元する役割を持っている。
生態系の維持には欠かせない生き物で、危険もほとんどない。それこそ馬陸などと違って毒も持っていない。種としての生命力は強靭だが、個体としてはかなり弱い部類に入り、はっきり言って無害なのだが――どういうわけか人間には病的なまでに嫌われている。
「……冗談だろう?」
「いたって真面目です」
そんなもの顔を見ればわかる。なにせ、昨日の演武の時よりも顔が真剣だ。だからこそ、頭を抱えたくなるのだが。
「そんなもん、扉を開けておけば、そのうち出ていくかもしれないだろう」
「扉を開けているうちに二匹目が侵入しないとも限らないではありませぬか!」
「いや、ほんと……ちょっと待って」
ミランは頭痛がしてきた。たった。たった一匹の虫が原因で、あの無双を誇った騎士が助けを請いに来るとは。
「ちょっとは情けなくならないのか。いやしくも禄を食む身分だろう?」
「ほんっとーに駄目なのです」
税を払うのを止めたくなるような情けない声だった。
「というか、そんな事情なら、なおのこと別に俺じゃなくてもいいだろう。部下にでも頼めばいい話だ」
そもそも〔神狩り〕は人の手に余る猛獣――古い信仰における『神』を打倒するための存在だ。普段は猟師として生活しているものの、そこには格式と伝統、矜持がある。
それをごきぶり退治のために招聘するなど前代未聞だ。〔神狩り〕という信仰的存在の意味を重く受け止める村の年寄りが見れば、恥知らず、厚顔無恥と罵られてもおかしくないほどの暴挙である。
その意味では、ファウナの生態調査の手伝いも冒涜的なのだが、あくまで知識と経験を駆使した護衛であり、〔神狩り〕として雇われているわけではないため、際どいところではあるが受け入れられている。
純粋に交友のある個人としての頼みであれば別なのだろうが、先刻、ミランが言ったように二人はそういう関係ではない。あくまで二人の繋がりは、魔犬討伐において協力し合った〔神狩り〕と騎士という仕事上のもの。個人的な便宜を図るほどではない。
つまり、ミランに頼むのはまったくのお門違いということだ。
「それができれば苦労はしないのです」
アクイラはもじもじと指を絡ませた。
「部下たちは自分に対して完璧だの、超人だのと幻想を抱いております。自分だってただの人間で、苦手なものくらいあるのです。でも、皆が抱いている期待を裏切るのも心苦しくて……」
「……まあ、間違いなく威厳はなくなるな」
これまでの騎士生活で、そういう場面に遭遇しなかったのが奇跡だ。
ミランは残念な気持ちで胸がいっぱいだった。あのフローラが完璧な女性とか褒めちぎり、ファウナも尊敬の眼差しで見つめていた。アクイラの本当の姿を知ったら、さぞやがっかりするのではなかろうか。
「ところでミラン殿。ファウナ殿とフローラ殿は?」
「フローラは二日酔いでぶっ倒れている。ファウナはその看病している。慣れない薬草の調合とかで四苦八苦しているよ。まったく、ただ酒だからって飲みすぎるから……」
そんなわけで、ファウナはフローラに付きっきりだ。おかげで生態調査を進めることができない。なので、暇といえば暇なのは事実である。
そうですか、とアクイラは胸をなでおろす。
(……ああ、そうか。だからか)
だから自分なのだとミランは悟った。部下や知人ではアクイラの印象はすでに固定化されている。だが、もともとミランは騎士と折り合いが悪い。いい印象がそもそもない。だから、頼ろうと思ったのだろう。
でも、それは――
「はあ……」
ミランは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、何度目かの溜め息を吐いた。
◇
南風が生暖かかった。
昨日の晴天が嘘のように空を暗雲が覆っていた。遠くのほうから雷音も聞こえる。一雨来るかもしれない。雨季の最後のあがきだろう。
こういう、生暖かい風が吹いて、雲の流れが早いときは、だいたい土砂降りになるものだ。
こういう日は何もせず、狩猟道具の整備や保存食の作り置きに専念するものである。雨の日は狩りに出るのは遭難や怪我の元。食料に余裕があるならば、じっと雨が過ぎるのを待つことも必要だ。
……だというのに、なぜ自分は騎士団の城砦などに足を運んでいるのか。
結局、ミランはアクイラの頼みを拒否できなかった。前回、彼らに対して謂われのない暴言を吐いてしまった負い目もある。それに――
(どことなく、ファウナに似ているんだよな)
それは無論、外見の話ではない。その在り方の歪さだ。
アクイラは言った。皆からの期待を裏切るのが心苦しい、と。
それは、かつてファウナがつけていた仮面だ。周囲の期待を気にするあまり、自らの意思を覆い隠してしまった。
けれど、そんな生き方は長く続けられない。事実、ファウナは自分が求める自分と、周囲が求める自分との落差に苦しみ続けることになったのだから。
そんなファウナはミランと出会ったことで気持ちの整理をつけ、懊悩から解き放たれることができた。だが、アクイラはどうだろう。完璧の仮面をつけたまま、これから先も生きていくつもりなのだろうか。
そう思うと、どうしてか放っておけなかったのだ。たとえ、その内容がごきぶり退治だったとしても。
「ここです」
アクイラが執務室として使用している部屋。その隣。
私室として宛がわれている一室は――正直に言って汚かった。
床に脱ぎ散らかした衣類。
所狭しと並べられ、埃を被った小物や調度品。
そして、無造作に積み上げられた使用済みの食器類。足の踏み場もないとはこのことだ。
「おい、騎士団に連絡だ。この部屋、空き巣に入られているぞ」
「あの、うちがその騎士団なのですが……」
「わかっている。言ってみただけだ。こんな有様じゃごきぶりも湧くのも道理だ」
ミランはげんなりとする。
「さ、最近はちょっと忙しくて、しばらく掃除できなかったのです」
「しばらく? 半世紀くらい?」
アクイラの典型的な言い訳を、ミランは嫌味で返す。
隊長という役職か、はたまた男だらけの職場における唯一の女性だからか。これまでこの部屋の惨状を見られることはなかったのだろう。いずれにせよ、それに胡坐をかいた怠慢としか言いようがない。
「掃除するぞ」
ミランは腕をまくった。
「え、いや、掃除は自分でするので、ごきぶりだけ退治してもらえれば……」
「この状況じゃ、無理だ」
あまりにも物が散乱しすぎている。このままでは、いざごきぶりを発見してもすぐに隠れられてしまうだろう。倒しやすい場所に誘導するのは狩りの鉄則だ。
「それに、出てくるまでただ待っているのも非効率的だ。掃除していれば、そのうち出てくるだろう。何より、足の踏み場もないのが許せん」
男やもめに蛆が湧き、女やもめに花が咲くとは言うが……なるほど、フローラの言う通り、世の中、ことわざどおりというわけではないらしい。
すると、雨が窓を叩く音が聞こえ始めた。どうやら降り出したようだ。しかも、かなり雨足が強い。雷音も聞こえる。
――決心がついた。この雨では、どう足掻いてもずぶ濡れになる。いま帰るのは得策ではない。ならば、雨足が弱まるまで徹底的に掃除してやる。
まずは衣類の仕分けだ。清潔なものと、そうでないものを分ける。清潔なものは畳んで箪笥にしまい、汚れたものは洗濯場行きだ。
「ミラン殿! 下着は! 下着は自分で畳みますゆえ!」
「黙れ。あんたがするより、俺のほうが早い」
「女歴二十年の自分より、女物を畳むのが早い!?」
次に小物の整理。
「そ、それは貴重な調度品なので、もっと大事に扱って……」
「うるさい。この惨状を許しているという現状そのものが、調度品に対する冒涜と心得よ」
「うう、言い返せない!」
そして、掃き掃除と拭き掃除。
「床に汁物がこぼれているじゃない! というか、自分の部屋で物を食べるなって言っているでしょ! そんなんだから虫が湧くんでしょ!」
「申し訳ありませぬ、母上ぇぇぇ!」
「こんなことじゃ、嫁の貰い手もなくってよ!」
……というやり取りがあったかどうかは不明だが、ミラン主導のもと、清掃は順調に進んでいった。まだ六割がたといった感じであるが。
「これが完璧ねぇ……」
アクイラの憔悴した背中を眺めながらミランは呟いた。過大評価も甚だしい。人間、一部分だけ見て決めつけるのはよくないということか。
「というか、なんでそんなに虫が嫌いなんだよ。ファウナなんかは、喜んで虫を捕まえてくるぞ。俺がちょっと引くくらいに」
森が多い辺境において、生活の中で虫と関わらないことのほうが不可能だ。虫に対する好き嫌いは大なり小なりあるだろうが、アクイラほど極端な虫嫌いは逆に珍しい。
「あの時、お話ししたでしょう。一人で森で迷ったことがあると」
「……ああ、そういえば」
それは魔犬討伐の時のことだ。弔いの鍋を囲みながら、そんな独白を聞いたような気がする。
「その時、ちょうど今のように雨が降ってきたので、近くの洞に避難したのです。最初は薄暗くて気づかなかったのですが、だんだんと目が慣れてくると、洞の壁面にびっしりと虫が張り付いていて、払っても払っても自分に集ってきて、最終的に服の隙間から……それ以来、自分は手足が六本以上あるものが苦手なのです」
その光景を思い出したのか、アクイラは肩を抱えて身震いする。
「あー……」
その虫たちも雨宿りに来たのだろうか。確かにその状況は悪夢だろう。虫嫌いになってもおかしくはない。
「醜態をさらしてしまって、本当に申し訳ないと思っているのですが……」
アクイラがすっかり委縮してうなだれる。
現状に一番不甲斐なさを感じているのは、アクイラ自身だろう。どこの国に、虫を怖がる騎士がいるだろうか。とはいえ、やる気だけで苦手意識が克服できるのなら、最初からこうはなっていないだろう。
「苦手なものの一つや二つ、誰にだってあるさ。でも、問題はそこじゃない。それをひた隠しにしていることだ。そうやって自分を偽っても、いつか化けの皮ははがれるものだぞ」
「好きで偽っているわけではありません。自分がだらしなく、臆病なのは、自分が一番わかっております」
けれど、どうしても言い出せないのだと、アクイラは言う。
「……怖いのですよ。完璧ではなくなった自分に、部隊のみんなは果たしてついてきてくれるのかと。こんな若造に、命を預けてくれるのかと」
その言葉に、ミランはアクイラの苦悩を感じた。
アクイラはまだ若い。それでいて十騎長という士官階級にある。おまけに女だ。レスニア王国で女騎士は珍しくないとはいえ、それでも戦場は男の領分。叩き上げの現場からすれば、下積みのない小娘の下で働くのを快く思っていない者も少なからずいるだろう。
だが、それでもこれまでの任務に支障が出ていないのは、自分が強い女だったからではないか。それが偽りだったとしても、アクイラに完璧な女を幻視したからではないのか。
――完璧な女でなければならない。そうしなければ、自分は部隊を率いる資格がない。
そんな思いが強迫観念となって、弱さを表に出すことを拒んでいるのだろう。
なんのことはない。完璧だ理想だと謳われようと、アクイラもありきたりの悩みを持つ、ただの平凡な人間に過ぎない。
「……すみませぬ。迷惑ですよね、こんな話を聞かされても……」
「それが人間ってもんだろうよ。理想の自分と現実の自分の落差に悩むなんて、当たり前のことだろう」
「当たり前とおっしゃりますが、自分にはミラン殿はそうは見えない。泰然自若として、飄々としている。まるで隠遁した賢人のように。このような矮小な悩みなど存在しないのではないのですか?」
あまりにも的外れな評価に、ミランは苦笑した。
「それこそ、そういった幻想を俺に抱いているだけじゃないか。俺だって悩むときもあれば、怒るときもある。魔犬の時なんかは自分の未熟さに打ちのめされもした。でも、それも自分なんだ。格好つけてもしょうがないだろう。それで、狩りの腕が上達するか? それで獲物が罠にかかってくれるか? あるがままの自分を受け入れて、その上でどうするか考える。それが人生ってもんだろう?」
「それは……」
「俺は、自分らしく在りたいのに、その気持ちを偽って、苦しんでいたやつを知っている。自分のしたいことをするのだと決めた時、そいつは心の底から初めて笑えたんだと思うよ。一つ嘘をつけば、その嘘を守るためにまた嘘をつかなきゃならなくなる。そんな生き方は、最後には自分の嘘で押しつぶされるぞ。
……まあ、正直、俺の知ったことではないけど。在りのままのお前を見ても、俺はそこまでがっかりはしなかったけどな」
生態系において、強い生物ほど数が少ないものだ。そうやって被食と捕食の均衡を保っている。誰よりも優れた長所を持つものは、誰よりも劣る短所がなくては立ち行かない。完全無欠、最強の存在が誕生してしまえば物質の循環が停滞してしまう。それは調和の破壊だ。
美人で、強くて、頼もしい。そんな女は、虫嫌いや、片付けが下手なくらいで釣り合うが取れるというものではないだろうか。
「……おい。聞いているのか?」
ミランなりに励ましたつもりだったが、アクイラからの反応はなかった。呆けたように、壁の一点を見つめている。
その視線を追うと、その先に黒い塊がいた。
「出やがったな」
ミランがすっと立ち上がると、気配を察したのか、ごきぶりの触角がぴくぴくと動く。
かさかさ。
「ひぃっ」
アクイラが情けない悲鳴を上げた。ただ動いただけなのに。いくらごきぶりとはいえ、哀れになってくる。
「食べもしない生き物を殺すのは気が引けるが、悪く思うなよ」
ミランはじりじりと詰め寄る。その手には蠅叩きが握られている。掃除の最中に発見したものだ。アクイラも苦手なりに立ち向かおうとしたのだろう。
だが――
「こ、こっちに来ました! 来ましたよ!」
窮鼠猫を噛むとでも言おうか、ただ単に状況がわかっていないだけなのか、ごきぶりはミランとアクイラに向かって走ってきた。
「きゃあ――!」
アクイラはすっかり混乱したのか、痴漢に遭った乙女のような声を上げ、背後からミランに思いっきり抱きついた。
「こら、抱きつくなっ。動きにくい!」
「じ、自分から離れないでください! お願いします!」
アクイラは涙目になりながらも、ぎゅっと密着してくる。
妙齢の美人に抱き着かれるというのは、健全な青少年にとって夢のような状況ではあるが――取り乱しているせいか力加減が無茶苦茶だ。訓練の賜物か、腕力はそこいらの男よりも強い。抱き着かれるというよりは組み付かれるといった感じだ。
おまけに、アクイラが身に着けている胸甲鎧が問題だった。腕力による締め付けに加え、鎧の金属部分が肋骨にぐいぐいと押し付けられる。その痛みの尋常たるや――
「あだだだだ!」
思わず、大の男が悲鳴を上げてしまうほどだ。
結局、ミランは痛みと重さに耐え切れず、二人はもつれ合いながら床にうつ伏せに倒れこんだ。どんがらがっしゃんと。それはもう盛大に。
そして、ごきぶりは隙ありとばかりに転進し、どこかへ消えてしまった。もし、これを狙ってやったのだとしたら、なんと賢しいごきぶりか。
「……何やっているんだよ、逃がしたじゃないか」
アクイラに圧し掛かられた状態で、ミランが恨みがましく呟く。
「め、面目次第もございません」
「重いから離れてくれ」
「し、しばらくお待ちを……腰が抜けて……」
どうやらアクイラは腰を抜かしてしまったようだ。ミランの背中に圧し掛かったまま、ぴくりとも動かない。
しょうがないなと溜め息を吐くと、ミランはアクイラのほうへ手を伸ばし、唇をそっと撫でた。
「っ! な、なにをするのです!?」
アクイラは目を白黒させた。がばっと起き上がり、唇を抑える。顔が真っ赤だ。
「ほら、腰が戻ったろ?」
「あ、本当です……」
「猟師だってな、いざ獣と向き合ったら腰を抜かす時がある。そういう時は、こうやって体勢を立て直すのさ」
腰が抜けるという症状は、脳が混乱することで運動を司る部分が麻痺するために起こる。誤解を覚悟で簡潔に言えば、脳が運動の仕方をど忘れするのである。唇や指先といった部位は神経が脳と密接に繋がっているため、そこを刺激することで脳に喝が入り、運動機能が戻るというわけだ。
「で、ですが、いきなり唇を撫でるなど……!」
「唇くらいで何をごちゃごちゃと……」
「ミラン殿は乙女の唇を何だと思っているのですか……!」
「乙女って歳かよ。俺より年上じゃないか」
「い、いくつになっても乙女は乙女なんです! 現に、自分はまだ生娘だし、接吻だって――」
「――ちょっと待て」
なお言いつのろうとするアクイラを抑え、ミランは耳を澄ませる。
これだけ物音を響かせ、大声を出しても部下が様子を見に来ないのはおかしい。ここは騎士たちの砦。人員だって十分のはずだ。
ミランは周囲の状況を探ろうと注意深く神経を尖らせた。すると、彼の耳がわずかな異常を訴える。
おおよそ、騎士の砦で聞こえるはずがないであろう声。すなわち。
「……悲鳴が聞こえる」
アクイラとミランは同時に体を起こすと、弾かれたように執務室から飛び出した。
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