?????,,????失踪????llヲ?真実17(2)              ????‣???? llllllll∫>>?????????????シ?

「2009年7月13日

あの女が俺の住むマンションに来た。あの女の調査能力には感服する。

彼女はマンションの玄関の外で寝泊まりをし始めた。寝袋をしたため、缶詰を大量に買って生活をし出した。


2009年8月17日

近所からは可哀想な女性と見られていたようだ。彼女は覚えたポーランド語で、自分が置かれているでっち上げの境遇を振り撒いていた。

あの男は不倫相手で子供ができたのに認知してくれない。何かしらちゃんと責任を取ってほしいのに、話さえまともに取り合ってくれないなどと。

近所から俺は悪者で評判になった。仕事場でも俺の噂は広まってしまい、白い目が俺に注がれていった。居づらくなって、会社を辞め、住居も引っ越すことにした。

俺は疲れ果て、彼女の日本に帰って暮らしましょうという誘いについ頷いてしまった。


2009年11月24日

俺は山荘に戻った。帰る場所などここしかなかった。不本意ではあるが、俺は彼女と住むことになってしまった。

ご機嫌な彼女は、俺のために料理や洗濯などの家事をしてくれる。まるで妻のように。

そして、夢を語った。

この山荘でペンションを開いて、2人で慎ましく暮らしていこう。

俺の希望など無視だ。俺の意向を聞くこともなく、自分が描く未来を話していくだけ。俺はこの女との未来に絶望した。

俺の希望は、また元の家族と暮らすことだ。一刻も早く、この女との縁を断ち切らなければならない。


2009年12月24日

ペンションにするための改築が終わった。費用はどこから調達したのか、キャッシュで彼女が支払っていた。

クリスマスイブにペンションの改修終了祝い。

俺は日頃から秘めていた思いを彼女に伝えた。

ありたっけ伝えた。何度も話し、彼女の説得を試みた。

だが、彼女は首を縦に振ることはなかった。

でも諦めない。何度でも彼女を説得する。俺は君のしつこさを見習って、また元の家族に戻る夢を叶える。


2009年12月29日

何度も説得を試みた。だが、彼女は頑なに拒否し、遂には俺の家族を殺すと脅してきた。俺と一緒になるためなら何だってやる。彼女は語気を強めてそう言った。

家族だけは守りたい。だから……殺してやった」


 鳥山たちは絶句する。越本のこもった声が耳の奥で纏わりつく。


「2010年1月1日

最近寝つきが悪い。当然だろう。この手で人を殺したことなんてあれが初めてだし、手についた血の匂いは取れず、いつも俺の記憶を呼び覚ましてしまう。それだけだと思っていた。


玄関のドアをノックする音。俺は警察が来たんじゃないかと戦々恐々としながら玄関のドアを開けた。

誰もいなかった。見通しの良い山荘の前はひらけている。隠れられる場所は山荘の階段横か、俺の車の陰くらい。そもそもそんなことをする人間がわざわざここに来るとも思えなかったが、旅行する冒険者気取りの若者たちが偶然ここに辿りついて、悪戯をしているのかもしれない。


2010年1月4日

俺の楽観的な推測はどうやら間違っていたようだ。

あの女の声が聞こえる。四六時中、どこにいようと、あの女は語りかけてくる。

まだ生きているのか。そんなわけがない。確かに俺は彼女が死んでいくのを見届けた。


2010年1月5日

あの女はこの世にいない。そう、人間じゃなくなった。

彼女に失うものなど何もないのだ。なりふり構わず、俺を苦しめることができる。


2010年1月6日

あいつは死んでも俺につきまとう。幽霊になっても、俺と結ばれたいというのか。


2010年1月7日

俺はこの山荘から出ようとしたが、車が死んでいた。タイヤがパンクしていたのだ。

この付近に人は住んでいない。助けを呼ぼうにも、電話が繋がらない。繋がったと思ったら、彼女の声。それから1分おきに電話が鳴り始めた。俺は電話線を切った。

俺に逃げ場はない。


2010年1月8日

テレビで彼女の名を観た。俺は警察に気づかれたと思った。

自首ができる。俺はホッとした。

しかし、彼女の死体が見つかったのは自宅だった。俺が隠した遺体は林の中。

報道によると、死亡したのは2008年6月頃らしい。じゃあ、ポーランドに来たあの女は一体……。


2010年1月9日

迎えが来る。彼女は俺の側にいる。見えないけど、確かに俺の側にいるのだ。

ずっと見られていて、俺の怯える姿を楽しんでいる。


2010年1月12日

もう嫌だ。誰でもいいから俺をここから出してくれ。彼女の監視から守ってくれ。

由恵よしえ優輝ゆうき……会いたい。


2010年1月13日

間に合わない。


2010年1月14日




――――――迎えだ」




越本はノートを閉じ、カメラに視線を向けた。

その時、激しい物音を立てて画面が回転した。視点が定まらなくなり、越本が映っているのかどうかも分からなくなる。ガタゴトと怪音を響かせた後、画面は上下が逆さまになった玄関を映す。左に階段が見切れているが、そこにいたはずの越本はいなくなっていた。動画はそこで止まってしまった。


 3人は険しい表情で顔を見合わせ、富杉に視線を振る。

富杉は眉間に皺を寄せ、プロジェクターに視線を向けたまま固まっていた。


「どうですか?」


鳥山は言った後に後悔した。どうですかと聞いたものの、大した考えもなく聞いてしまったからだ。

富杉はこの動画が霊的なものであると結論付けている。聞きたいことはたくさんある。どれくらい安全に動画を観られる環境を整えることができるのか、あるいは動画に込められた越本の思惑なのか、それとも呪いとやらを解くことが可能なのか。

鳥山はそのまま富杉の言葉を待った。


「そうですね。はっきり申し上げますと、この動画は……」


富杉は鳥山たちに視線を向ける。


「あの青年だけで作られたものではありません」


「どういうことですか?」


蓮口は前のめりになって問いかける。


「この動画には呪いが込められています。動画は、複数人の恨みによって形成され、恨みが積み重なり、増幅し、とんでもない力を生み出しています。

彼の口から語られた女性が元凶で、山荘を訪れた者たちの募った恨みに共鳴した。それが霊的現象となって彼等の周りで起こり始めた。共鳴によって生み出された力は人をあやめるまでに強くなり、殺された。

そして動画に映っていた青年はあなた方を恨み、青年の恨みに住まいにしていた女性の恨みが加わり、動画に呪いがかけられた」


「それは、霊視、というもので分かったんですか?」


楠木は戸惑いつつ聞く。


「はい。女性は、あの日記を書いた男性に殺された方で間違いないでしょう。あなた方も呪いにかかっています。ですが、まだ十分に間に合います」


「これからどうすれば?」


鳥山は富杉に伺う。富杉は厳しい表情で口を開く。


「私共は動画を観られる場を用意します。あなた方は、私たちがいない場所でこの動画を観ることをせず、すぐに御祓おはらいを受けて下さい。全ての動画を観終わったら、改めて清めの儀を行います」


「分かりました」


 鳥山たちはその場で富杉の御祓おはらいを受けた。稲妻のように特徴的な折られ方をしたたくさんの紙が、綺麗な棒の先から垂れている。富杉によると、棒の先から垂れた紙を紙垂しでと呼ぶらしく、神聖な領域を作り、邪悪な物を取り去ってくれるらしい。

富杉の声がお経を唱えていく。鳥山たちの対角で結ぶように立つ4人の巫女は、お経に合わせて鈴を鳴らしている。鳥山たちは前に立つ富杉をあがめるように手を合わせ、顔を落として目を瞑っていた。

お経の音はなぜだか心を落ち着かせてくれた。


御祓おはらいが終わり、鳥山たちは礼を言って帰ろうとした。


「鳥山さん」


富杉は鳥山を呼び止めた。


「はい」


富杉は鳥山に近づく。


「すみません、鳥山さんと2人きりでお話したいので、お二方は先に行って下さい」


富杉は鳥山の横で楠木と蓮口に妖艶な笑みを見せる。2人は戸惑いながらも「分かりました」と答えた。

放り出された2人は回廊を歩く。


「アレは女の顔だった」


「え?」


蓮口は驚きながら問いかける。楠木はいやらしい笑みを向ける。


「口説いてんだよ」


「ま、まっさかぁ」


「だって見たかぁ? あの近さ、初対面とは思えねぇぞ」


「まあ、正直近いなぁとは思いましたけど」


「これは後で聞かないとな。蓮口、お前聞けよ?」


「えっ!? 嫌ですよ! 気まずい!」


蓮口は動揺しながら顔を強張らせる。


「お前だって気になるだろ?」


「気にはなりますけど、別に聞かなくったっていいじゃないですか。それに鳥山さんは不倫しないですよ」


「いや、そこじゃなくてー。あの霊能者に口説かれたか聞くんだよ」


楠木は蓮口に体を軽くぶつけて言う。


「ええ~、それもなんか嫌ですよ。楠木さんが聞いて下さいよ」


「いや、そういうのはお前担当だろ?」


「担当ってなんですか!?」


「KY?」


「やめて下さいよ。普通に傷つきますよ」


楠木と蓮口はさっきの動画のことも忘れて、回廊で談笑しながら神社の出入り口前まで向かった。

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