?????,,????失踪????llヲ?真実17(1) ????‣???? llllllll∫>>?????????????シ?
富杉は正座をしたまま、鳥山たちが観たあの不快な動画の一部を表情一つ変えないで観ている。
画面が暗くなった。富杉は鼻から小さく息を吐き、鳥山たちに視線を振った。
「どうですか?」
鳥山はおずおずと聞く。
「間違いなく、霊的現象と言ってよいでしょう」
衣擦れの音が鳴る。それほどまでに静かな部屋の中だった。
3人は声も出せず一様に驚く。
「あなた方は、途中まで観ていると言いましたが、最初から観たのですか?」
「はい」
「そうですか……」
「な、なんですか?」
蓮口は怯えながら聞く。
「これは呪いです。それも強力な」
「え?」
富杉はパソコンを見つめながらゆっくりと語り出す。
「この動画は、契約書みたいなものです。1から順に説明することで、観た者を
「どういうことですか?」
「あなた方の目にしている
「
鳥山は眉間に皺を寄せながら聞く。
「もちろん、死が訪れます」
「どうすればいいんですか?」
楠木はにわかに信じがたい話に前のめりになって対処法を問う。
「安心して下さい。まだ間に合いますが、相当危険な領域に入りつつあります。本来であれば、すぐにこの動画を観ることをやめ、供養に出すことをお勧めするところですが、依頼はこの動画を安全に観ること……でしたね」
「やはり、難しいでしょうか?」
鳥山は神妙な面持ちで聞く。
「
危険を承知で足を踏み入れるというのであれば、私は全力であなた方を支えます」
「よろしくお願いします」
鳥山は頭を下げる。
「そちらのお2人も関わるということでよろしいですか?」
「は、はい」
楠木が答える。蓮口は不安げな様子で息を呑む。
「では……」と言葉を発した富杉。3人は富杉の言葉に注意を向ける。
「手始めに、続きの動画を観ましょうか」
「え? まだ、用意できてないんじゃ」
蓮口は戸惑いを隠せず意見する。
「はい。ですが、次の動画を観るくらいでしたら、簡単な対処でも通じるでしょう」
「そう、ですか……」
口を濁す蓮口。不安がつきまとう空間の中、富杉は立ち上がり、「こちらへどうぞ」と微笑んで障子戸を開けた。
鳥山たちは富杉の案内の下、回廊を歩いていく。障子に見立てたすりガラスのある窓が光を透過させ、影と光を廊下の床や壁に映していた。
重苦しい会話の後とあって、鳥山たちは解放された気分に浸る。
「素敵な回廊ですね」
蓮口はこのまま黙って動画を観る部屋に行くのが耐えられなくなり、気分を変えようと話題を振った。
「長い回廊だけあって、掃除も一苦労なんです」
光の当たった富杉は朗らかな笑みを見せて言った。こうして見れば綺麗で上品なおば様という雰囲気があった。
「こちらです」
富杉は回廊にひっそりとある襖を開けた。白を基調とした壁紙に囲まれて緑色の畳があり、その上に白蓮がデザインされた少し小さなカーペットが部屋の中央にある。
カーペットの上には小さな椅子が4脚あり、ここに座れと言わんばかりに置いてある。プロジェクターの周りで何人かの巫女が作業を進めている。
「パソコンをお借りしてもよろしいですか?」
「あ、はい」
蓮口は持っていたパソコンを取りに来た巫女に渡す。
「この椅子にお座りなってお待ち下さい」
「ありがたい」
楠木はしみじみと呟く。
「普通の人は正座なんてしなれてませんから、お辛かったでしょう?」
富杉は口元に笑みを携えて聞く。
「まあ、それなりに」
楠木は苦笑いで述べる。
少し部屋が暗くなる。巫女の1人が富杉に近づき、「用意できました」と伝えて小さなリモコンを渡す。
「ありがとう」
すると、4人の巫女が部屋の後ろに座った。
「これでパソコンの操作もできます。あなた方の方がお詳しいと思います」
そう言って、富杉は鳥山たちに小さなリモコンを差し出す。楠木と鳥山は蓮口に視線を振る。
「じゃ、すみません」
蓮口はリモコンを受け取り、リモコンに明記されている文字を読みながら、プロジェクターに映し出されたパソコン画面を確認しつつ操作していく。
動画のタイトルはまたしても文字化けしており、ほとんど読めなくなっている。蓮口は、動画が観れませんでしたという展開を密かに期待して、動画をクリックした。
呆気なく動画が表示されてしまった。越本はローテーブルに座り、カメラを見つめている。キッチンカウンターにカメラを置いて向けているようだ。
1階のリビングはいつもより暗い。窓の外がもう夜になるとはいえ、電気をつけたくなるほどの暗さ。上部の壁につけられたボーリング玉くらいの大きさのいくつもの電球は、燭台のような物に乗せられているが、所々の電球が消えていた。
「××警察署のみなさん、そろそろ僕のメッセージにも慣れてきましたか? 観たくてしょうがないんでしょ? 観たくないと思っても観させてあげますので、ご理解下さい」
「なんか、聞き取りづらいですね」
蓮口は顔を顰める。
「音質が悪いんだろ」
越本の声はこもっているように聞こえた。とても古いラジカセで聴いているような音質だった。映像は映写機で撮ったかのような画質になっている。
「では、続きを話しましょう。僕は白川と安西とで書庫に行きました。屋根裏部屋の入り口は、書庫の天井にあり、屋根裏部屋の壁際に塩を撒いて、正体不明の霊を侵入させないようにしようとしました。その作業の途中、僕は1冊のノートを見つけました」
越本は自分の座っているローテーブルのすぐ横に置いていたノートを手に取り、持ち上げて見せた。
「日記、この山荘の元家主の物だと思われます。前回の動画では、この一部を読み上げました。
僕たちは書庫で最初の部分を読んでいましたが、屋根裏部屋に塩を撒くのを終えたので、1階へ下りました。僕は親父さんがこの山荘を管理している宮橋にこのノートの存在を知っていたか聞きましたが、知らないようでした。
僕たちは、続きを読みました」
越本はノートを開き、視線を落とした。
「2008年6月15日
どうやって調べたか知らないが、あの女がこの山荘にやってきた。仕方なく玄関で対応した。俺の顔を見て、彼女は嬉しそうに笑っていたが、俺には嬉しさなんて微塵もなかった。
今日は帰ってほしいと頼んだ。
彼女は、『なんで無視するの? ずっと一緒にいるって言ったじゃない!』 と言いたいことを
俺が離婚したことでしがらみがなくなったから、2人で一緒にここで暮らしましょうと言い出した。
冗談じゃない!
俺は家族と一緒に暮らしたかったんだ。
もう不倫なんてこりごりだ。二度としないと誓いを立て、なんとか彼女に帰ってもらった。
2008年9月3日
週1、4日に1度、2日に1度と会いに来る頻度が増していく。あいつは仕事帰りでも俺に会いに来た。彼女の仕事場からここまで来るのに片道3時間半ほどかかるはずだ。日によっては山荘の前に車を止め、車の中で一晩を過ごしていることもあった。まるで張り込みだ。
不倫という罪を犯したとはいえ、彼女は正義のためにやっているわけじゃない。俺と結ばれたいがためにやっている。だだをこねる子供だ」
越本は淡々と日記を読み続ける。
「2008年9月10日
あの女はここに俺がいることを知っている。
俺はもう彼女と会いたくなかった。居留守を使ったが、彼女は山荘の周りを歩き出し、窓という窓を調べていた。窓に影が映り込んだと思ったら、窓がガタガタと揺れる。
俺はカーテンを閉めた暗い部屋の中で身を隠し、息を潜めた。
山荘を一周して、彼女は帰っていった。
2008年10月22日
電気がつかなくなって業者を呼んだ。業者が来たので玄関を開けると、遠くで見つめる彼女がいた。彼女はその隙に俺との交渉を望んできた。俺は忙しいからと一蹴した。
業者が原因を調査すると、山荘に繋がれていた電線が切れていたらしい。外部から意図的な力が加えられて切れたとしか思えないと、業者は話してくれた。
俺は彼女を問い詰めたが、『あなたが会ってくれないからでしょ』と声を荒げる始末。
もう耐えられなくなって警察を呼び、彼女は逮捕された。
だが安心はできない。器物破損程度なら、また出てくるに決まってる。俺はこの山荘から離れることにした」
越本はページをめくる。
「2008年12月30日
俺はポーランドに移り住んだ。さすがのあの女もここまで来るまい。探しようがないはずだ。やっと平穏な暮らしができる。俺はやり直すんだ。新しい人生を。
2009年7月7日
ポーランドで新しい生活を始めて半年以上が経った頃、俺が働いていた文具メーカーの会社に、この会社に
すると、ノック音が2回鳴った。越本は振り向いた。越本は読み上げるのをやめ、玄関を見つめている。静かな間が続く。
「いるの?」
小さな女性の声だった。それでも、確かな音は音声として聞こえてきた。
越本は音を立てないようにローテーブルからゆっくり下りて、床に伏せた。越本はうつ伏せで、死んだフリにも見えるくらいに動かなくなった。
ベランダの外灯の光がリビングに入っており、そこに女性の影が入り込んだ。シルエットからして背の低いショートヘア。窓の外で越本を見つめているのか、女性の影は動かない。越本もまったく動かない。越本の顔は窓から背けられている。
「死んだの?」
女性が発していると思われる声は、越本に聞いているのか。窓の外なのに、越本と同じ声量で聞こえてくる。
この女性が本物の幽霊なら、越本の身が危険に晒されているのかもしれない。固唾を呑んで見守る3人。
画面の中の2人が動かなくなって十数秒後、先に動いたのは女性の方だった。
「死んだんだ。よかった」
影はゆっくり消えていった。女性の影が消えて2分後、越本は上体を起こし、膝をついて、深いため息を吐く。
ゆっくり立ち上がり、カメラに近づいた。カメラは越本が持った音を感知する。画面のアングルが変わり、越本がいなくなったローテーブルを見下ろす。カメラはローテーブルを見つめながら上に着陸した。
画面は階段を映す。越本が画面の横から入ってきて、階段に向かって行く。階段の段差に座り、カメラに体を向けた。持っていたノートを再び開き、ノートに顔を向ける。
「俺は同僚に日本人かどうか聞いたが、女は名前を聞いた途端電話を切ってしまったらしい。
俺はそんなわけないと思いながらも、あの女じゃないかと疑念を持たずにはいられなかった」
また日記を読み始めた。撮影は続行されるらしい。
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