第14話 友達芝居の幕開け
私を裏切って、マナミと付き合おうとしている(らしい)ヒイラギは、考えようによっては、いい仕事をしてくれた。マナミの一番近いことろへ潜り込んだのだから。
ただ、ヒイラギは、あれからわたしに連絡してこない。きっと、もう連絡するつもりはなかったんだと思う。カノジョが憎んでいる相手に乗り換えようとするのならば、当然の事だろう。
だったら、私はこの場でやっておかなければならないことがある。
「ヒイラギ君、久しぶりね、前にお願いしておいた事、引続きお願いね」
「え? な、何だっけ?」
「やだなあ、忘れちゃったの? 私の事、何もかも忘れちゃうつもり?」
「な、何を……」
「あれよ、お芝居の話し、『友達芝居』の事よ」
「あ……ああぁ、いや、それはさ――」
ヒイラギの声は裏返ってみっともない。マヌケ男の代表の様な見事なマヌケっぷりだ。
「やらないわけがないよね? 断ったら、結構、キツい事になると思うよぉ」
掴んだ……そう思った。ヒイラギは、やっぱり、わたし達が付き合っていた事を、マナミに知られたくないと思っているんだ。返事はしないが、断る事もできないでいる。その顔色は、これまで見たことがない程に青白かった。
「リコさん、お芝居もするの? すごいね!」
「そうなんだよ、本業はアイドルなんだけど、先の事を考えたら、勉強はしておかなくちゃと思ってね、それでね、ヒイラギ君が、脚本のアイディアを出してくれたから、わたしが筋書きを今書いている所なの。ヒイラギ君なら、きっと、いいお芝居してくれると思うんだよね」
「ヒイラギ君もお芝居するの?」
「いや……俺は……」
「やってくれなきゃ困るんだよね、他に適任がいないからさ! ヒイラギ君には、断る権利なんかないと思うよ! 言い出しっぺは、あんたなんだからね!」
ちょっと、感情的になってしまった、気が付かれなかっただろうか。
こらからヒイラギを使って、マナミとの立場を再び逆転しようとしている事に。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます