第6話 能天気にポジティブに
「ヒイラギ……わたし、もうだめかもしれない……」
「なんだよ、元気出せよ、俺も調べてやるからさ、まだ、自分の偽物がリコに成りすましてるって決まった訳じゃないだろ? リコのお母さんが、懲らしめてやろうとしてるだけかも知れないし……ドリンクバーお代わりしてやるから元気出せよ」
ファミレスのドリンクバーで回復する様な悩みじゃない。でも、男の子ってそうだよね、あんまり深いこと考えてないんだよ、あんまり能天気過ぎて腹が立つけど、いっそのこと仔犬ぐらいに思っておけば丁度いい。褒めて調子にのせておけば、いつもご機嫌でしっぽを振ってくれる……能天気も考えようによってはポジティブだ。
「ありがと、コーラ。ヒイラギはやっぱり、優しいな。落ち込んでるから、余計に骨身に染みるよ」
「まあな! でも、一応彼氏なんだから頼れよ。俺だってリコの後ろでギター弾く以外にも役に立つんだぜ、任しとけ! ところで三百万円の返済はどうだ?
「サイガー? ああ、代表の事ね、うん……一応、待ってはくれるけど、その分借金が増えるんだって……利子っていうの?」
「そうか……まあ、プロモーションビデオ制作契約書にはそう書いてあったからしょうがないな……」
「ヒイラギ読んだの? わたし、レーベルの仮契約書を読んでないからさっぱりわかんなくて……」
「リコは相変わらずだなぁ、そりゃ、読まなきゃわからないよ、制作代金と支払い方法について書いてあったよ。それに、レーベルの仮契約書ってなんだい? 契約したのはプロモーションビデオの制作契約書だよ」
「何か違うの? プロモーションビデオを作って、再生数がのびたらアーティストとしてレーベルと本契約できるんでしょ?」
「あぁ、なんだそう言うことか、だったらそうなんじゃない? 契約書には、そんなこと書いてなかったと思うけど……とにかく僕達は再生数が伸びなかったら、どっちにしろ終わりだもんな。がんばろー! とにかく、リコのお母さんのことも調べてみるよ、知り合いにそう言うの得意な人いるからさ」
「へー、そうなんだ、さすが政治家の息子」
「うん、代議士って身辺調査が大事なんだってさ、秘書さんに頼んであげるよ、きっとただでやってくれるさ」
「ヒイラギ……頼りになるね! ありがとう、かっこいい!」
「当然さ! 彼女が困ってるんだから助けるのが男の役目だろ! 気にすんな」
よかった、少し楽になった。やっぱり、少し多目に誉めておいてよかった。でも、わたしも調べてやろう。このままじゃスッキリしない。
と言っても、どうやったらいいのかもよくわからないけれど……とにかくもう一度実家へ帰ってみよう。行き当たりばったりになってもいいから、とにかく行ってみよう。
「ヒイラギのおかげで少し元気になったよ、とにかく能天気に……いや、ポジティブに頑張ってみるよ」
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