第3話 一千万再生

 つくばエクスプレスの車中、ユーチューブで自分の動画を見る。少しでもいいから再生数が伸びて欲しい。


「わ、百万再生を越えてる! すごい! これなら支払いも出来るかも!」


〈再生数が百万再生を越えました! ファンの皆さん! ありがとう!〉


 すごい、すごい、これなら三百万円だって支払えるかもしれない! そうだ代表に連絡してみよう。


「あ、代表? わたし、わたし……ねぇ、ユーチューブ見た? 再生数百万いってるよ? これなら三百万も払えるよね?」


「リコ……百万再生おめでとう……でもな、三百万円には程遠いぞ、ぜんぜん足りない、それどころか、このままじゃ本契約も結べないぞ、うちは百万再生程度で喜んでいるアーティストを雇っておくほど甘かねぇぞ。契約条件は一千万再生だ。契約書に書いてあるだろ? よく読んでおけよ。でも……とにかく、最低限の通過点は達成したわけだから、ひとまずはおめでとうだな、がんばったな、リコ」


「うん……リコがんばったよ! ありがとう代表。また連絡するね」


 契約書か……全く読んで無かった。うちのレーベルに所属している人たちは、みんな一千万再生なんて達成できたのかな……。百万再生で三百万ももらえないなんて、ユーチューブって意外としょぼいなぁ。


 と、思っている間に、もうすぐ駅に着く。ちょっと寝ようと思っていたのに、動画を繰返し見ていたから、全く眠れなかった。


 それにしても、お金借りれるかな……その前に、家出同然で飛び出して来ちゃった事、許してもらえるかな。やっぱり、最初は謝らなきゃダメだよね?


『黙って家を飛び出しちゃってごめんなさい。だって、お母さんがあんまり口うるさいからさ、私だって自分なりに考えているんだから、しょうがないでしょ?』


 こんな感じかな? 親子なんだから、ごめんなさいって言えば許してくれるよね。早く借金を返して楽になりたい……そして、レーベルと本契約を結んで、本格アーティストデビューだわ! がんばるぞ!

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