浩太
未来が見える力のことは、両親にも気味悪がられて以来、誰にも言わなかった。
もともと、そんなにはっきり見えるものでもないし、もうおかしなことを言わなくなった自分に、両親がほっとしているように見えたから。
だから、これでいいんだと思ってた――。
浩太はぼんやりと思い出す。
いつも自分を膝の上に乗せて遊んでくれていたおじさんのことを。
あれはいつのことだったろう。
最初に、おじさんがうす暗い部屋の片すみ《かたすみ》で
ぴくりとも動かないそのかたい身体のようすに、子ども心にも、その状態が
突然、膝の上で泣き出した浩太に、彼は驚き、あわてた。
『どうした、浩太?』
抱え上げて、あやしてくれたときのおじさんの顔を思い出し、ふっと浩太は笑う。
その後、何度も繰り返される映像に、浩太はそれがいつか
そして、家族とともに、このキャンプ場に来たとき、感じたのだ。
ここであの事件が起こることを。
あのとき、この建物の方は立ち入り禁止になっていたので、中を見ることは
おじさんの家は、
そして、夏のキャンプ。
おじさんも子どもたちの
『おじさん、おじさん、行くのやめなよ』
キャンプが開始される一週間前、浩太はついに
両親は奥でまだ呑んでいて、見送りには出てきていなかったのだ。
『行っちゃダメだよ。
おじさん、死んじゃうよ』
ぎゅっと
『ほんとだよ、おじさん、信じて!』
浩太は自分が信じられていないと思い、必死におじさんにすがりつき、うったえた。
だが、そうではなかったのだ。
『そうか、あそこでなあ……』
『知ってるよ』
『え?』
『知ってるよ。
浩太に未来が見えること。
口には出さないけど、お前のお父さんもお母さんもみんなわかってる。
だけどな、浩太。
おじさんがあそこで死ぬのなら、それは運命なんだ』
『運命?』
そう、運命なんだ、とおじはくり返し、何かから
自分には、もう止めることは出来なかった。
「運命か……。
わかってたのに、何であの人」
浩太はうつむき、唇を
自分もキャンプに参加するといえば、おじさんは反対するだろうと思い、登録せずに、ひそかに混ざった。
だが、そんな努力もむなしく、結局、事件は起こってしまったのだ。
変えられないから未来なのか――。
浩太の告白に事情をさっした一美たちもだまり込んでいた。
「僕らに真実をつたえようとしているのがおじさんなのか。
それは僕にはわからないんだけど」
そうつぶや《つぶや》くと、
わたしは――
と美弥が口を開いた。
「邪魔をしている方が教頭先生のような気がするわ。
でも、それはたぶん、自分のためじゃなくて、わたしたちのため。
あの人、ほんとにいい先生だったよ。
まあ……、よくは知らないんだけどね」
とらしい
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