地下へと続く階段

 




 ドアが開くと、足もと《あしもと》に、ひんやりとした空気が流れてきて、鼻先には、しめった匂いがしてきた。


 でも、これだけ人がいたら、少しは怖くないような……と思っている美弥の前で、さっきの話を聞いた叶一が、


「なるほどねー、お盆には縁故えんこの人が足を引っ張りにやってくる、か。

 うちは別にお盆じゃなくても来るよなあ、大輔」

としょうもないコメントをつけている。


 ドアの向こうにも、五、六段の階段があった。


 コンクリートのそれは、湿気でか、少ししめったように変色していた。


「なんだか湿度しつどが高いね、ここ」


 美弥は叶一、一美のあとに、倫子となんとなく手をつないで歩き出す。


 その後ろに気のない様子の大輔。


 そして、その大輔の背にすがるようにして進む、一志。


 最後に、後ろをうかがいながら浩太がつづいた。


「水音……」

 美弥がつぶやく。


 どこかから、雨もりのような音が聞こえていた。


 五、六段の階段のあとに、小さなおどり場があり、そこから、もう二、三段あって、木の床につづいている。


 見上げると、一階の辺りにあるのだろう。


 古く厚いガラスの入った小さな明かり取りの窓から月明かりが差しこんでいた。


「ここに食缶とか置いてあったのね」


 並ぶ木のたなを美弥が見たとき、視界しかいがゆがんだ。


 足もとがれる。


 地震!? と誰かが叫んだ。










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