第6話 三匹の子豚

 ある所に三匹の子ブタがおりました。


「僕ちょっと最近腹回りが気になるんだよねー」

「兄貴も? 実は俺もー」

「何だ、兄さんたち2人もこの体型を気にしていたんですか。私もです」


 三匹はメタボで悩んでいました。


 まあ豚ですし悩むだけ無駄……。


「どうすればダイエット成功するかな」

「運動? カロリー制限?」

「――労働ですよ! 家を建てるのはどうでしょう? 狼の脅威もあることですし」


 三男即答です。偉いです。


 長兄次兄も賛成し、三匹は狼の襲来も考慮して家を建てることに。


 長男豚は藁の家を。ふかふかの藁のベッドに飛び込みたいものです。


 次男豚は木の家を。温もりある木の住宅は最高です。


 そして三男豚は頑張って、強い風が吹いてもビクともしない石と煉瓦でできた頑丈な家を建てることにしました。


 しかし、何と言う事でしょう。


「「「え!? 狼だああああ! 狼が来たぞー!!」」」


 建設途中で狼が来てしまいました。

 この話の教訓的なものが無意味と化した瞬間でした。


 遠くでホラ吹きのオオカミ少年も「狼だー!」と叫んでいます。


 安全に隠れられる場所らしい場所もなく、豚たちが右往左往している間も狼の影は徐々に近付いて、双方の距離は3m、2m、1m……。


「「「どうしようブーッ」」」


 切羽詰まってようやく語尾にブー。豚主張しました。


「「「うわああああ食べられるうううう!!」」」



「――――や、拙者草食系ですから」



 狼は通りすがりに侍言葉でそう言うと、颯爽と去って行きました。

 頭に斜めに笠を被り、さすらいの浪人のようです。


「「「はっ? ……はああッ!?」」」


 三兄弟は唖然。


「草食系?」

「狼が?」

「何それ……」


「「「かっこいい……」」」


 雑食の豚たちは、擦り切れた旅のマントをなびかせる狼の背をうっとり見送りながら、自分たちも食事の質を変えてみようということになり、見事に減量に成功。


 うち一匹は鍛えまくって遥か遠くまで旅に出て、三蔵法師と出会ったとか何とか。



 めでたしめでたし。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る