えっ?ゾンビっているんですか?

第37話 どないすんねん

「…でドゥーンってなるのが面白怖くて、繰り返してたんだけど、それが感電だったのよ」

「オマエ…若いころから変わってんねんな」

「まさかレジ打ってて感電してると思わないじゃない」

「感電じたいが珍しい体験やで、自ら進んで感電しにいくことないがな」

「感電だと解っていればいかないわよ、痛くは無いのよね…ただ身体に過度な重力が掛かるのが楽しいというか、怖いようなドキドキが快感だったというか…」

「感電しとるからの、ドキドキするやろね、身体では造りだせん電気が心臓に走りよんねん、そりゃ一目ぼれの比じゃないやろ」

「だからか!! 恋が出来ないのは…仕方ないことだったんだわ…ある意味、事故よ」

「はい?どういうこっちゃ?」

「だから、感電を超えるドキドキを感じないからー恋が出来ない的なことよ」

「…医者行け…綺璃子キリコ、重症や…」

「なによー、じゃなきゃなんなのよ!! アタシ、そんな見た目悪くないと思うわ、なのに恋に恵まれないのわ、なぜなの?」

「それが自分で解らんようやから、医者行け言うとんじゃ」

「医者と付き合えってこと?」

綺璃子キリコ…ワシが後でネット使うて、いい医者見つけたるさかい…それ以上、悪化させんといてくれや、たのむわ」

 夕食後に、コンビニデザートの食べ比べをしながら、平和な夏の夜を過ごす珍妙な2人。

 噛み合わないのか…いいコンビなのか…。


 。―――。

「…というわけで、久しぶりに普通に依頼がありましたので、今夜出かけます」

「前回はボランティアみたいなもんやからな」

「うん…まぁ人助けしたと思えばよしだよね」

「せやな、だけどタダ働きやで」

「うん…人助けだから」

「せやからタダ働き」

「もう言わないでー、タダ働きで天国まで行ったのよー、なんか手応えでも無ければ呑み込めないじゃない現実をー」

「正確には、天国一歩手前ですけどね」

「逝きかけたのね…アタシ…」

「せや、臨死体験の向こう側や…言うなれば」

「臨死体験の向こうって…生なの?死なの?」

「そこを綱渡ってんやで綺璃子キリコ

「そこで踊ってたんやのー、呑気なもんやで…」

「タイトロープダンサーね」

「綱の上で盆踊りて…ダンサーちゃうで、大道芸や!!」


「ところで、不破ふわさん依頼って、どんな内容なんですか?」

「ゾンビが出るっていうんですよ」

「ゾンビ?どこで?」

「お寺で…だそうです」

「なんで寺でゾンビやねん」

「なんでよ?変?」

「変やろが!!」

「なにが?」

「死体が起き上がって動くんやで」

「だからゾンビなんじゃない」

「アホやのー」

「なにがよ!!」

綺璃子キリコ…日本は火葬の国でしょうが」

「ん…あっ、そういうこと」

「えぇ…まぁそれもそうなんですけど…依頼主が住職さんでしてね」

「マジでか?坊さんが悪魔使いにゾンビ退治を依頼するんかい、ウケる」

「腹出して笑い転げてるんじゃないわよ」

「ウケるやん、坊さんが死体怖いって、ウププ…なんや、小麦アレルギーのパン屋みたいな」

「どんな例えよ…」

「まぁいずれにせよ、墓場にゾンビなんて、日本じゃ考えられませんよ」

「え~ゾンビじゃないんですか~」

「なんで残念そうやねん」

「なんかこう、ゾンビがワラワラ出てきて、BAN!! BAN!!って感じでサバイバルホラーみたいなアクション女優みたいな感じで活躍する展開があっても」

「撃つんかい…オマエ拳銃撃つ気でおったんかい…」

「なんでよ、アタシ霊気だか妖気だか、よく解らないものは撃てるのよ」

「その自分でも、よう解らんもんをワシに撃っとんのかい…」


「とりあえず、早めに閉めますから、掃除しちゃいましょうか」

「はーい」×2


 。―――。

綺璃子キリコ…なんで弁当用意してきたんや?」

「アンタはホントに…いい、ゾンビといえば籠城戦だからよ」

「なんやねん…それ」

「襲われる、逃げる、その先は教会かホームセンターと決まっているのよ」

「なるほど…その後、ショッピングセンターで束の間の休息があって」

「そう、大量のゾンビが、なだれ込むの…バカがいるのよ…お約束で」

「ここは寺で…大量のゾンビは街におらんが…」

「1泊くらいはするんじゃない」


「で、その先が逃げ込むべきお寺ですね」

 3人の目の前に広がる、見事な荒れ寺。

「雰囲気はあるわね♪」

 なぜか楽しそうな綺璃子キリコであった。

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