第15話 サイズ合いませんけど?

 召喚というか…再生の準備を終えて、綺璃子キリコが、甘すぎるオレンジジュースを飲んで待つこと、20分。

「遅いがな~、レイはん、遅いがな~、なんぞいいことしてるんちゃいますやろか、ワシ行ってみようかな~、なぁ綺璃子キリコ

「いいことってなによ?」

「決まっとるやろ!! 美味しいモノ食べてんねん!! ホテイさんビール飲んで、山菜とか、ブランド牛とか、しゃぶしゃぶしとるんや!!」

「アンタ…牛も食べるの?」

「猫は本来、肉食や!! パンダかて肉食うやろが!! ワシ一歩間違うたら虎やねんぞ」

「アンタ パンダも知ってるのね」

「あの人気者パンダを知らん猫はおらん!!」

「いや…動物園付近に住んでなければパンダは知らんでしょ…普通」

「パンダはええねん!! いこか!!」

「騒がしいですね、イプシロン(仮)」

「ん、あっ、レイはん、遅かったやないけ、この女と、しゃぶしゃぶしてたんか?」

「えっ?しゃぶっ…て…なんです…」

 女将の顔が赤くなる。

「あっ! やっぱりや~綺璃子キリコ、しゃぶしゃぶしとったんやで、この女」

 ボグッ!!

「いいかげんにしろ!! バカ猫」


「まぁ…気にしないでください、綺璃子キリコさん準備は?」

「終わってまーす」

「じゃあ始めますか」

「ワシも牛食べたい~」

 綺璃子キリコに引きずられて、蔵の隅へ移動する。

「あっ、女将さんも、綺璃子キリコさんのそばにいてください」

「はい」

「アンタはん、ほんまに、しゃぶしゃぶしてへんの?ちょっと口の周り見せてみ」

 ボグッ!!

「アンタ、もっかいやったら、コレよ、コレ」

 綺璃子キリコがイプシロン(仮)の首に手を回す。

「嫌やん…冗談やん…しませんよ…ほんと」

「静かにしてるのよ」

「ええ子にしとるで…」


 不破ふわさんがDVDを再生する…。

 ピシッ…と小さな雷が宙を走る。

 宙に翼の生えた豹が現れた。

「我が名はシトリー…汝、意中の女性を呼び出してやろう…」

「シトリー様 この女性をここに呼び寄せて欲しいのですが…」

 不破ふわさんは、写真をシトリーに渡した。

「よかろう…」

 シトリーは真っ赤な目玉をギョロッと動かし、床を前足で軽く引っ掻いた。

 床がパカッと裂け、隙間にシトリーが前足を突っ込み、むんずっと掴んで、不破ふわさんの前にドサッと裸の女性を放り投げた。

「この者で間違いないか?」

「えぇ…間違いありません」

「うん…では…貢物を頂戴しようか…」

「なにが御所望でしょうかシトリー様」

 シトリーは鼻をフンフン鳴らして、カップラーメンの空容器に口を突っ込む。

「ふん…コレがいい…コレは食べたことが無い」

「かしこまりました、女将…カップラーメンは、まだありますか?」


 女将が、カップラーメンを2ダース箱で持ってきた。

 シトリーは綺璃子キリコに作り方を聞き、イプシロン(仮)にヒモで背中にダンボールを括り付けられて帰って行った。

「シトリー様~、お湯を入れて3分待つんですよ~」

「せやで、そのまま食べたらアカンねんでー」

「うむ…委細承知、さらば」

 凛々しく消えて行ったが、背中のダンボールがひどくマヌケだった。


「なんで…裸やねん、人間の女は今、裸で寝よるんか?綺璃子キリコも裸で寝るもんな、なっ」

「パンツは履いてるわよ…」

「仕方ないですよ…シトリーは色情の悪魔ですから、意中の女性を呼び寄せ、服を脱がす…そういう職能なんです」

「悪魔の能力って、限定的よね~、便利なようで…そうでもなさそうで…」

「適当に持ってきたDVDで、シトリーが一番、手っ取り早かったもので…それより、何か着せてあげましょうか綺璃子キリコさん」

「えっ?服、着てしまうん?べつに着なくてもええんとちゃいますやろか?綺璃子キリコより、おっぱい大きいし…なんや、あの、おっぱいにモグモグッとしてみたいねんけど」

 ボグッ!!

「なんでやねん!! 素直な欲求やん、オマエや出来んことしたいやん」

「悪かったわね~谷間が作れなくて」

「せやで…高性能のブラジャー使っても出来んって…壊滅的や…グッ…ぞ…ングッ…」

 綺璃子キリコに妖気を吸い取られていくイプシロン(仮)。

「あの~、綺璃子キリコさん…着るものを…」

「あっ!?ブラですか?寄せてあげるブラですか?サイズ合いませんけど?」

「派手なパンツ持ってきとったやんか、ソレでええんとちゃう…グッ…か…ングッ…?」


 裸の女性をベッドに寝かせて、目覚める前に女将が浴衣を着せた。


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