妖貸し《あやかし》

えっ？タイムスリップ？

第29話 やりたかったの～

「ワシ…不満や…」

「なによ…カレーのこと？」

「カレーちゃうわ!!」

「犯人はオマエや!!ってやりたかったんや」

「やりたかったって…アンタ、そもそも犯人解ってなかったでしょ」

「それは台本どおりにやったらえぇんとちゃいますか？」

「なによ、台本って？」

「いやだから、零（レイ）はんが脚本書いてくれればやね、ワシにだって言えますやん」

「うん…晩御飯どうする？朝カレー…昼ラーメン…夜は？」

「うん…オマエ、ワシの話どうでもえぇと思っとるやろ、さっぱり蕎麦とかどうやろか？」

「蕎麦か…たまにはいいね、蕎麦食べに行こうか？」

「食べにって…どうやってワシ食べるんや？出前ちゃうんか？」

「そうよね～不便よね～…あんた家でカップ麺食べてたら？」

「嫌やん…」

「なんで？カップ麺好きでしょ」

「そういうことじゃないやんか!! オマエが店で食うてる間、外で待っててやで、ワシ家帰ってカップ麺って…イジメやん」

「じゃあ出前とる？」

「そうしてやってくれや…頼むでホンマ…メンタル豆腐みたく弱いねんぞ」

　。―――。

「で？なに食べるの？」

「せやなー…ちょっとメニュー貸して」

「カレーうどんにしようかの？」

「えっ？蕎麦でも無ければ、またカレーってどうよ？」

「なんで？」

「朝カレー…昼ラーメンで夜カレーうどん？」

「なんや、和洋折衷感でとるやないけ」

「え～？」

「昼がうどんやったら、その顔は解る、しかしラーメンを挟んでからのカレーやからね、うどんやからね、言うたらカレーサンドやからね」

「あのさ～、蕎麦処杏寿庵（あんじゅあん）だからね、蕎麦処だからね」

「蕎麦で無きゃアカンかったら、メニュー載せなきゃええんとちゃうか!!」

「バカねー、そこを読み取れってことなんじゃないの？ワビサビってやつよ!!」

「アホか!! もう絶対、カレーうどん食うわ、スマホ貸せ!! ワシが電話する」

「好きにすればー、アタシ、かも南蛮蕎麦（そば）ね!!」

「上等じゃ!!」

「シャワー浴びちゃおうっと」

「おう、夏はブラも洗うたほうがえぇんやて、TVでやっとったわ、なんや胸に汗かくとな～…あっオマエ、谷間ないもんな、大丈夫や、安心せぇ…グワッ…」

　。―――。

「梅いなりも頼んでるなんて、気が利くじゃない」

「せやろ、ワシ、お稲荷さん好きやねん」

「夏には、この梅の酸味がいい感じね～」

「せやな～」

「アンタ…キツネじゃあるまいし、お稲荷さんとか好きなのね」

「偏見やで…キツネかてカマボコ食うで」

「そりゃそうね…ん？タヌキ…キツネ…ネギカモ…？」

「なんや？しりとりか？」

「ねぇ、なんで猫って食べ物に名前付かないんだろうね」

「ん？……それ言うたら、天かすいれてタヌキってなんでやねん？」

「そうよねー」

「ネコ印のカマボコとか、ネコ印のかつおぶしとかあってもえぇと思うけどな」

「基本、犬系・鳥系なのよね」

「猫差別反対やで」

「猫ってさ～、泥棒とかさ、いいイメージで使われないわよね」

「だから、それが猫に対する偏見やぞ、先入観っちゅうやっちゃ」

「ん？キツネ…fox…タヌキって英語でなんて言うの？」

「オマエ…妖怪に何聞くねん？raccoon dogや」

「知ってるじゃない」

「オマエ、ひょっとしてワシのことバカやと思うてない？」

「うん」

「オマエ…ワシが何年生きてると思うてんねん」

「何年生きてるの？」

「それは…やなー、ちょっと解らんけど…だいぶ長生きや」

　。―――。

「洗っとくのよー」

「はいはい」

「冷蔵庫にビールと、あと冷凍庫にアイスあるから食べてもいいわよ～」

「ホンマ？」

「うん、ちゃんとお風呂入るのよ、そして掃除しといてね」

「あいよ」

「風呂上りのホテイさんビールは最高や、クーラー効かせた部屋でアイス食べて、最高やね」

　ゴリゴリ君ソーダ味をかじりながら、月夜を眺めるイプシロン（仮）。

(ワシ…幾つやねんやろ？)

　昔と違って、空が低く感じる。

(昔は夜に月を見上げても、空には空しか無かったけどな～今は、ビルがあって…星より明るい光が灯る…だいぶ時代も変わったで…)

「ワシ…なんでこんなこと考えてんのやろ？」

『帰ろう…帰ろうよ…』

「ん？空耳か？」

(アレ…なんや…ボーッとするのぉ…)

「ん…この長屋覚えとるで…ワシ、小っさいころ、ここにおったわ…」

『帰ろう…帰ろうよ…』