第2話 初仕事

「やっぱり、下着は派手な方が喜ばれるのかしら…」

 いつか必要だと思い立ってネットで買った『勝負下着』をマジマジと見つめて考える。

 綺璃子キリコ27歳 独身 無職。

 本日風俗デビューします。

 人妻感があったほうがいいのかな~。

 キャリアウーマン系で売っていこうかな?


 貧乏は倫理を失わせていくものである。

 自分のキャラ設定を考えるが楽しいと思えるようになってきた。

 綺璃子キリコなりに現実を受け止めようとしているのだ。


「これでいこう」

 キャリアウーマン系で、まずは手応えを探って行こう。


「おはようございま~す」

「あぁ…吉備きびさん、お待ちしてました」

「はい…今日からよろしくお願いします」

「はい、こちらこそ…」

「で…さっそくなんですけど…名前なんですけど」

「はい?吉備きびさんじゃダメですか?」

「ちょっと…苗字はー」

綺璃子きりこさんのほうがいいですか?」

「いや…本名はどうかと…」

「困ったな~名刺頼んじゃったしな~」

「えぇ~、本名でですか~」

「軽率でした」

「ホントですよ…身バレしたら、ちょっと困ります」

「ですよね~」

「まぁ…その辺は後で考えましょう…さっそく行きましょうか」

「えっ…もうですか…」

「えぇ…遅れると信用に関わりますから」

「そうですね…解りました」

「覚悟はいいですか、コレ持って」

 オーナーは私に、大きなバックを手渡した。

(この中に、プレイに必要な道具が入ってるのね…一応、ネットで調べたけど…不安だな…上手に出来るかな…アタシ)


「この御宅ですか?」

「はい」

「じゃあ…行ってきます…逝かせてきます」

「いや…僕も行くんだけどね」

「オーナーも来るんですか?オプションですか?」

「なんの?」

「なんでしょうね…複数プレイ的な?」

「ちょっと解りませんけど、行きましょうか」


「勝手に入っちゃっていいんですか?」

「大丈夫です、今日は留守ですから」

「留守?なに?」

「バックから、DVDプレイヤー出してください」

「DVD?…撮影ですか!! 顔出しNGでお願いします」

「再生専用だから、撮影とかないです」

「あ~よかった…安心しました…」

「なにが?」

「動画撮影じゃなくて」

「はぁ…まぁいいですけど…TVにつないで~再生しちゃってください、コレでいいかな」

 オーナーは、DVDを1枚ポイッと投げて、庭へ出て行った。

「再生始まりましたか?」

「はい…たぶん…映像出ませんけど…」

 てっきりエッチなアレが再生されるとドキドキ…いや…いい意味でね…していたのだが。

 画面はなんか…なんだろう…ボンヤリナニカが蠢いているような…。

「音量上げてもらえますか」

「は~い」

 少しずつボリュームを上げていく…ブツブツブツ……なんか聴こえるような。

「そんなもんかな…あんまり広げられないし」

「あの~」

「あ~、ちなみに…何か観えます?聴こえます?」

「う~ん…白いモヤッとしたもんが動いてて…ブツブツ言っているような」

「うん…充分です」

「なにが?」

「さて…夜まで待ちますかね、お昼にしましょう」

「ん?プレイは?」

「本番は夜でしょ…やっぱ」

「あ~…そうか…ロケハンみたいなもんか…夜か…下着、取り換えた方がいいかな?」

「そうですね…初めてだとな~、う~ん、汚しちゃうか…そういう可能性もありますね…用意がいいな~吉備きびさんは、ホントに初めてですか?」

「初めてですよ、ホントに」


「御馳走様でした」

「いえいえ」

 ラーメンは美味しかった…できれば匂いの付かないものが良かった。

「吉備さん…トイレ長いかったから、口に合わなかったのかと思っちゃいました」

「そんな、違いますよ…やっぱ歯を磨いておかないと…失礼かなって…」


「さて…行きますか、サクッと終わらせちゃいましょう」

「……はい…」

 吉備きび 綺璃子きりこデビューします。

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