第19話 妖怪ってバレてんじゃない

「あ~、オーナー御無沙汰です」

不破ふわさん、いつもご贔屓ひいきに…」

 オーナーと呼ばれた男、入道のような外見だが、腰は低いようだ。

不破ふわさん…こんな万年猫又とツルんでるんですか?よしなさい、格が落ちますよ」

「なんやとー、禿げが!!」

 イプシロン(仮)が毛を逆立てて威嚇する。

「未だ半端な猫又風情が凄むな!!」


 とりあえず、肉が焦げる前にサッサと小皿に取り分ける、地味に出来る女綺璃子キリコ

「肉泥棒しか能の無い妖怪が、何を偉そうに!!」

「ちゃんと仕入れてるわ!!」


「火車ってね…昔は、死体を盗む妖怪とされていたんですよ。猫又が死体を跨ぐと火車になるって言われてましてね…」

 不破ふわさんが肉を食べながら綺璃子キリコに話しかける。

「はぁ~、猫又が進化すると火車になるんですか?」

「進化というか転じるというほうが正しいですかね」

「上下関係はないと…」

「そうですね…しかし、イプシロン(仮)がオーナーを知り合いとは思わなかった。ハハハ」

「知らなかったんですか?」

「えぇ…もちろん」

馬鹿丸うましかまるって…悪意を感じるネーミングですよね~」

「誰が付けたんでしょうね、猫時代でしょうけどね」

「そういえば、聞こうと思ってたんですけど、化け猫と猫又ってどう違うんですか?」

「それはですね、猫又は長生きした猫が妖気を帯びて生じた妖怪で、化け猫は飼い主の強い恨みの念を帯びて妖怪化したものです」

「はぁ~…解った様な…解らないような…」

「解りやすく言うと…うっかり妖怪になるのがコレで…」

 と、トングを振り回すイプシロン(仮)を摘み上げる不破ふわさん。

「しっかり妖怪になるのが化け猫ですね」

「ねぇ~、アンタ、なんで妖怪になったんだっけ?」

 綺璃子キリコがイプシロン(仮)に聞く。

 不破ふわさんに首を摘ままれながら、プラーンされてるイプシロン(仮)。

「なんや、気ぃ付いたら…なっとんたんや!!」

「俺もそうだな…尻が痒いな~と思って…あるとき気が付いたら尻尾2本になってたな」

「そんなもんやで」

 プラーンされたまま、トングで肉を挟んで焼き始めるイプシロン(仮)。

「オーナー、御飯大盛り3つと…適当に肉持ってきてください」

「はい、喜んで!!」

「お~い、馬鹿丸うましかまる!! ワシの御飯、かつぶし振ってくれる?」

「なんで、焼肉で?ねこまんまかい…まぁいい…作るわ」

「おおきに!! よろしゅう」


「お知り合いだったんですね、イプシロン(仮)」

「昔な~、ちょっとな~、つるんでた時期があってんな~」

「仲悪く無かったんだ?」

「最初はな…そんなもんや」

「何やってんですか?」

「それ聞く?聞いちゃう?レイはん」

「まぁ…流れ的に…」

「うん、聞きたいやろね…」

「アタシは、そうでもないんだけどね…あっ、カルビ焼いといて」

「あいよ!!」

「ところで、アンタ焼くの上手よね~」

「むしりとった何とやらや」

「うん…昔取った杵柄きねづかね」

「アイツとな、牛鍋屋やっとんたんや」

「はっ?アンタが?商売やってたの?」

「せやで…以外?」

「妖怪が飲食業界に手を出したの?猫が牛焼いてたの…」

「まぁ、正確には煮とったんやけどね…焼いたんはその後や」

「いずれにせよ…昔から人間の中に溶け込んでいるのね~」

「まあな~、今ほど珍しい存在やなかったからね~」

「今はいないの?」

「おるで、ワシおるやんか…」

「いや…ほら他に…」

「妖怪の経営する焼肉屋で、肉食いながら、なに言うてんのや…」

「うん…まぁそう言われると…ね…」

綺璃子キリコさん、妖怪や悪魔なんてのは、どこにでもいるんですよ、昔も今も…あからさまじゃなくなっただけです」

「あの…あからさまにいるんですけど…アタシの真横に…」

「美味いの~ねこまんま、美味いの~、焼肉のタレかけると、また深みが増しよるわ」

「まぁ…変わり種はいるものです…」

「なんの話やったっけ?」

「アンタとオーナーが昔、仲良かったって…」

「あぁ…そうやった…ほな次回は、回想編やな、こうご期待ちゅうやつや!!」

「誰にしゃべってんの?アンタ?」

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