第20話 火男ってブサイクじゃない

「ワシな…ちょっと訳あって、野良ネコやってたときがあるんや」

「ネコだった時代?」

「いや…尻尾2本になってからやけど」

「妖怪って…野良とかいう概念あるんだ」

「ん…野良妖怪って珍しい表現ですよね」

 綺璃子キリコ不破ふわさんに同時に突っ込まれるイプシロン(仮)。

「ええやん…一人ぼっちのときがあったんやな~とフワッと解釈してくれたらええやん、イジメですやん…そんなん言うたら…」

「食べながら聞くから、焼きながら話してくれる」

綺璃子キリコ…オマエっちゅうやつは…ええけどね、ハラミでええ?」


「でな、1人でおってもやることないやん、それでね、たまに街に遊びに行ってたんや」

「えっ?アンタ…今の姿じゃないんでしょ?」

「ん、そらそやで、姿くらい消せるやん、ワシ妖怪やで」

「えっ?そうなの?」

綺璃子キリコ…オマエ、ワシを何やと思うてんの?」

「しゃべる猫…」

「ソレだけやないで!! 妖気さえあれば、ワシ凄いんやで!! 大妖怪 猫又の四郎左衛門 様やぞ…次、何焼こか?海鮮なんかもいってみよか?野菜とな」

「なにが大妖怪だ…ちんけなコソ泥 泥棒猫だろオマエは」

 オーナー馬鹿丸うましかまるが肉の追加とライスを運んできた。

「大妖怪よりは、泥棒猫のほうが、似合いよね」

「なんやとー、もうええ、綺璃子キリコにはピーマンたっぷりや」

「止めて!! ピーマンダメなの、パプリカいう、わけの解らんカラフルラインナップが揃ってからは、ビジュアル的な食わず嫌いなの」

「アカン、自分の皿を空にするまでは、次の肉は食べれません、コレは暗黙のルールやで、万国共通や」

「ピーマン御嫌いですか?」

「見た目、プラスティックじゃないですか~」

「どこがプラチックやねん」

「テカテカしてるとこですかね~」

綺璃子キリコ肉と一緒に食うたらええねん」

「その肉が無いでしょ!!」

「ほな、ピーマン食うしかないの~、次、豚トロ焼こ」

「で…話の続きは?」

「おう…屋台の寿司で余らかす、魚食うとったら、コイツが、なんや自分の縄張りやとか因縁付けてきよって」

「あ~、オーナー登場ですか?苦っ! 焦げても苦い…」

「コイツまだ、普通の猫やってんで、猫が妖怪にシャーッしよるんよ、ほんで、イラッとして、軽く小突いたったんや、ほいだら、寿司屋のおっちゃんが、ケンカしなや言うて、刺身食わしてくれてね」

「うん…焼肉出てこないわね…ピーマンをライスで中和する術を発見したわ」

「なんやかんや色々あってね、おっちゃん死んだんよ」

「唐突ねぇ…ピーマン全部食べたわよ!!」

「立派やったで~綺璃子キリコ…ご褒美、豚トロや」

「おっちゃんが死んでな~コイツ…ワシの傍におったせいか、猫又になってしもうてな…しばらくは一緒に行動しとったんや…そいでね、コイツおっちゃんと同じ寿司職人になるゆうて、聞かんのよ…ワシ無理や言うたんや、肉球あるから握られへんて」

「えっ…ソコなの?否定の理由」

「そしたら、コイツ、泣きながら走って、しばらく行方くらましたんや」

「悲しみの逃避行ですね」

「それがちゃうねん…コイツ、おっちゃんの墓ほじくりかえして、火車になってんねん、おっちゃんの姿をコピーしよったんや」

「おやっさんの後を引き継ぎたかったんですわ」

「それがなぜ、焼肉屋に?」

「そこや…壊滅的に料理の才能がないねんコイツ…食中毒は出すわ、軽い気持ちでフグをさばくわで、大騒ぎやってん」

「軽い気持ちでフグさばいたの…まぁでも未だにいるわよね…年に1人くらい、そういう人、あっ骨付きカルビとライス追加ね」

「よう食うの~、それで…寿司を握ることを諦めかけていた頃に、火男ひょっとこと知りおうたんや…カルビ焼けたで」

「諦めかけた…そこまでやってて、まだ、諦めきってないってメンタル超合金よね」

「借金もありました…」

「そこで、ワシ教えたったんや、火を通せばなんでも食えるってな」

「うん…間違ってはないけど…ダメな発想ね…もつ煮ある?」

「ありますよ」

「んで…牛鍋始めるんやけど…火男ひょっとこのパフォーマンスがきっかけで…江戸の街が壊滅的な火事になってしもうて…」

「えっ?江戸の火事って…まさか…あっ、もつ煮美味しい」

「牛やら豚やら…丸焼けで…食うたら美味かったんやね…」


「なるほど…それで!!」

「えぇ…みんなで焼肉屋ってわけです」

不破ふわさん…なるほどじゃないですよ…大事件の裏にコイツありですよ…」

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