えっ?偉いの?
第57話 ブラと歯ブラシ
「へぇー、ラファエルと名乗ったのですか?」
「そうなんですよ、その人に送ってもらったんです家まで」
「助かったの~電車賃とか浮いたしの~」
「電車賃ですか…」
「そう、悪いな~と思って、お茶でもって誘ったんですけど」
「用がある言うての~遠慮せんことないのにの~」
「ラファエルを家に…お茶を?」
「まぁ~送ってもらって気づいたんですけど~ベランダに置いていかれてね~」
「どないして入ったもんかとのー」
「そうでしたか?」
(わざとじゃないのかな~)
「結局、もう一度呼んだんですよ」
「すぐ来てくれたのー、デリバリーってちゅうやつやろか?」
「ラファエルを呼んだ?どうやって?」
「コレ貰ったんです」
スマホには大きな羽が1枚、雑にデコレートされていた。
見るからに煌びやかに輝く羽、どうみても鳥のソレとは一線を画する神々しさ。
「キレイだから、張ってみぃ言うてのワシが」
「イプシロン(仮)アナタが?」
「接着剤でピトッとね」
「コンビニで買うてきたんや瞬間接着剤」
「はぁ…で、ラファエルに鍵を開けさせたんですか?」
「チョチョイやったな」
「ねぇー、器用よねーあの人」
「もうちっと、地味に表れてくれへんもんかのー」
「イチイチ金色に光るから目立つわよね~、呼ぶ場所考えないといけないわ」
「あまり気軽に呼ばない方が…」
「ですよね~飛んでるし、今度はこういう服装で来てくださいってファッション雑誌何冊かあげたんですよアタシ」
「喜んでたのー、ラファさん」
「ラファさん?」
気が遠くなる不破さん。
なんとも、自分の店で雇っているバイトが熾天使ラファエルを呼び出すようになろうとは…デビルサマナーもビックリである。
しかも、媒介も無く、貢物もなく、気軽に呼ぶとは…教えた方がいいやら悪いやら。
「出がけに、瞬間接着剤踏んでもうてー、剥がれんのや肉球から
布に包まれたイプシロン(仮)が裏に歩いて行く、
「違うんです、普段はちゃんと洗濯かごに入れるんです、昨日は旅行帰りで疲れてて、外したまま寝ちゃったんですホントなんです」
「やめてください!! アナタ達は…ホントに…なんか買ってきますから、取るヤツ」
「セットで買ったヤツだから、キレイに剥がしたいんです、ラファさんならきっとチョチョイとやってくれますよー、そんな、わざわざ不破さんが行くことないですってー」
「いえ…ぜひ僕に行かせてください…いいやつ買ってきますから、お願いします」
(-"-)
「デリバリーエンジェル…ラファエル…風俗店のようだ」
不破が呟いた。
大天使を軽い気持ちで呼び付ける、自分の店のアルバイトに末恐ろしい恐怖を覚える不破さん。
『癒す者』の名を持つラファエルとはいえ、そこまでする必要があるのだろうか。
バス乗り間違えて冥界に行って、カインとアベルに会って、ラファエルと知り合う…そんな偶然、いや奇跡がAカップのブラジャー引きずってやってくる。
恐ろしい職場になってしまった。
「ある意味…逸材を軽い気持ちで拾ってしまった…」
ブツブツ伏し目がちで悩む不破さん。
「お客さん…お会計!! 1388円!! 後ろ並んでるの見えないの?」
「すいません…」
(-"-)
「買ってきましたよ
「あ~
「取れたんですか…まぁ良かったですね」
「すいませ~ん」
青いブラジャーが浮いている洗面器を持ちながら
「なにをしてるんです?」
「ん?コレか?なんやお湯で落ちるらしいですわ」
イプシロン(仮)が歯ブラシを持っている。
「僕の歯ブラシで何を?」
「これで擦るんやで、やわらかタイプで良かったな
「うん…硬めだと布ダメにしそう~」
「僕の歯ブラシ…はダメになってもいいんですね…」
「はっ…すいません…気にしませんでした」
「ホンマやの~やわらかタイプが、固まって固めになったりしての~アハハハ」
「そんなことないわよーアハハハハ」
つられて笑う不破さん。
「僕…歯ブラシ買ってきます…店番お願いしますね」
「了解で~す」
(ホントにとんでもないバイトを雇ってしまった…)
少し後悔する不破さんであった。
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