第26話 お国のため

「1.2.3.4.ご苦労さん!! 2.2.3.4.お疲れさん!!」


「あの~、ここでいいんですか?不破ふわさん」

「はい、自衛隊のキャンプ地です、今回の依頼はココで起こる怪奇現象を止めることです」

「自分らーでなんとか出来そうな装備持ってますやんか…」

「うん…出番無さそうなんですけど」

「それが出来なかったから、出番なんじゃないんでしょうかね」

「それって…ヤバそうな感じがしますけど…」

「まぁ、行きましょうか」


 。―――。

「で…あの倉庫が怪異の現場でー」

「えぇ、その倉庫横のテントが待機場所です」

「キャンプやのー」

「食事は出るそうですよ」

「カレーと豚汁ね、自衛隊といえばカレーと豚汁よ」

「いや…別に被災地ではないので、それと決まったわけではないと…」


「カレーと…」

「豚汁ね…」

「キャンプの鉄板や!!」


「キャンプファイヤーがあったら完璧ね」

「マイム・マイム踊ってな~」

「懐かしいですね、子供の頃やらされましたね…」

不破ふわさんも踊ったんですか?」

「えぇ…一度だけ…」

「一度だけって?」

「はぁ…キャンプファイヤーの前で踊ったら…その…サラマンダーを召喚しちゃいまして」

「えっ?」

「キャンプ場が火事になっちゃいましてね…それ以来、キャンプは不参加で…」

「召喚士って、うっかり踊ったらアカンねんな…」

「偶発的に超常現象を起こすものなのね」

綺璃子キリコ、オマエ良かったの~」

「なにが?」

「オマエ、寝相悪いやん…オマエが召喚士やったら寝ぼけながら何を召喚しくさるんかと…」

「なっ、寝相悪くないよ!!」

「オマエ…寝言も言うし、よだれは凄いし、たまに呼吸しとらんねんぞ」

「無呼吸症候群ですか…それは危険らしいですよ綺璃子キリコさん」

「いやいやいや…この猫の言う事ですから、そんなことありませんから」

「アホ、この猫やからこその情報やろが、枕カバー臭いやんか」

「それ以上言うな…」

「昨日かて、グガーッ、グガーッと絶好調で寝とる思うたら、突然ンガッ…って静かになって、ブフゥゥゥ…ってまた呼吸し始めたんやで…ハラハラするわ、オマエのグガーッが始まると…ンガッ……ちょ…やめ…」

 綺璃子キリコの目が座っていた、イプシロン(仮)に向けて伸びた手の先から殺意が視えるようであったという。


「しかし、何も起きませんね」

「話だと、毎晩のように起こるって言ってましたけどね~」

「誰の話や?」

「ん、自衛官の人」

「食器返しに行ったときに聞いてきたんだけどね」

「ふんふん」

 イプシロン(仮)が身を乗り出す。

「この倉庫は昔から曰く付きらしくてね、旧帝国陸軍時代から…」

「えっ?このキャンプ場、そんな古くないですよ、元々、採石場を訓練ついでに整地しただけだそうですけど…」

「これや…なぁ、怪談話なんちゅうもんわ、適当なもんなんや」

「なによ~」

 ギコッ…ズル…ズル…。

「なんの音?」

「なんやろね、飲み過ぎてトイレを探しとる綺璃子キリコが這ってるような音やね」

「例の怪奇現象ってやつじゃないですか」

「えっ?」

「そういえば、それで来てたんやったな、忘れとったで、なぁ」

 イプシロン(仮)が綺璃子キリコに同意を求める。

「アタシは…わ…忘れてなんかないわよ」

「ウソやん…声うわずってるやん」


「お仕事です、見に行きましょうか」

 テントから出てみると、特に誰がいるわけでもなく、静かな夏の夜。

 不破ふわさんがライトを照らして、倉庫の入口あたりを見ているが、とくに変わったこともない。

「何もないですね…」

「そのようですね、特に誰かがいた感じはしないですけど、そうするとあの音は?ってことになっちゃうんですよね」

「せやな…怪しいものは何も無いの~妖気も感じんしの~、まぁ変わったことといえば、この何かを引きずったような跡くらいや」

「ん?」

「バカ猫…充分にでしょうが」

 不破さんがライトで後を辿って行くと、照らされた先に人影が、女?

「うわっ!! 誰かおるやん!! 怖わっ…深夜の人影怖わっ」

「誰です?」

 不破さんが声を掛けると、ゆっくりと振り返る女性。

「税金ですよね~…返してもらっちゃダメなんですか?」

「いやぁぁぁぁぁぁあ…あ…あ…?」


「イプシロン(仮)」

「なんや綺璃子キリコ

「とりあえず確保」

 スッとロープを差し出す綺璃子キリコ

「おとなしくしといたら手荒な真似はせぇへんからな」

綺璃子キリコさん、幽霊じゃあありませんでしたね」

「残念なような…安心したような」

「なんや…あっけないのー」

「まぁ…報告にいきましょうか」

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