第50話 いざ旅立ち
「あかん…やっぱり早いうちに換金したほうがえぇ」
「そうかも知れないわね…」
少し湿った当たりくじを、しっかりと手にして唾を飲みこむ
酔いが覚めたようだ。
「とりあえず、ティッシュで湿り気を取るんや
「そうね…」
ティッシュでポンポンと湿りを取って、自然乾燥する。
念のため、ラップでコーティングしてみる。
「これで水対策は万全ね」
「せやの…火器にも気を付けなアカンで」
「そうね…はっ!! アルミホイルで包めば?」
「一定時間なら耐えるか…も…」
ラップの上からアルミホイルでコーティングした。
「フルアーマー宝くじね…」
「それを言うなら、フルアーマー当たりくじ…いや、楽園へのチケットやでー」
「天国への切符よねー」
「天国って、オマエ、それじゃ昇天してますやん」
「アハハハハ」
凸凹のアルミホイルをパスしあって笑う2人、近年稀に見るバカコンビである。
そんなこんなで、夜が更けた。
ひがな1日中、こんなことをしていたわけである。
「明日からバイトやん、どうすんねん」
「ん…昼休みにね、銀行へ行くことにしたわ」
「そうなんかい?」
「だってさ、ちょっと休み時間に寄りましたのよ…的な雰囲気で行くことにしたの」
「服装にも気をつけなアカン、ナメられたしまいやからの」
「そうね…明日はスーツで行くわ」
「せやな、それがえぇ…ワシも付き添ってやりたいんだが…店番もあるしの…なにより、猫は…猫は…銀行に入られへんねん…」
「入店お断りだもんね、気持ちだけで充分よ」
「ところでバイトは辞めるんかい?」
「う~ん…どうしようかなと思ってる」
「せやの~文字通り、猫の手を借りるブラックやからの~」
「猫が店番するって…もうちょっとネットを騒がせてもいいネタよね」
「つまりアレや…そうならん、くらい人が来ないっちゅうことや」
「そうよねー売上の95%が怪奇現象絡みだからね…」
「ホンマやの~確定申告どうなっとるんや…」
「自由業というか自営業になってるからね…」
「あんまり羽振りがようなると、査察が入りそうやの~アソコは…」
「所得を何名目であげてんだろ?」
「さぁの~まさか妖怪退治とか書けへんやろ」
「雑収入にしてはデカいしね…」
「まぁ、アレやん、デカい言うても
「それを言っちゃ
「ねー」×2
思わずシンクロしちゃう2人。
。―――。
「おはようございます…
「おはようございます
「どうしました?スーツ着て」
「えぇ…人生の分岐点が今日ですの」
「ですの」
イプシロン(仮)が
「あぁ…そうですか…いいんですけど」
「エヘッ…」
「なんやねん、突然?」
「どうしても…顔がにやけるのよね」
「アホか…でも解るで」
「
「エヘッ」×2
気持ちの悪い笑顔で振りむく2人。
「じゃあ…お願い…しますね」
「はい♪」
「
「グフッ…グフフッ…ドキドキしますことよ」
「ちゃんと持ってきたんかい?」
「大丈夫…無くさないようにブラにテープで張り付けてあるの」
「ブラに?」
「ガムテープで」
「うん…まぁ…ゴワゴワせぇへんか?」
「なんか痒いけど…我慢よ」
「邪魔にはならんのかい?」
「大丈夫…凹凸が無いのが幸いしたわ」
「良かったの~胸薄っすくて」
「うん…たまにはね…いいことないとね、持たざる者が一番強いってね」
「何言うてるかわからんけど…オマエが前向きならえぇんや」
。―――。
カチッ…カチッ…カチッ…ピーン!!
「休憩で~す!! 銀行へ行ってきま~す」
「お疲れ様で~す、お気をつけて!!」
ビシッと敬礼して引き継ぎを済ます。
今まで一度もやったこともないくせに…。
「エヘッ」×2
(危ない薬に手を出したのでは…)
「あの~
「はい、大ジョブです。行ってきます」
「ハイ…」
「アタシ…庶民の気持ちを忘れずに高層階に住んでも、下々の者を見下したりはしませんから…でも高層階には住まう天上人にはなってしまうかもしれませんけど」
「ハイ…?」
「立派や…立派やで
「
走って銀行へ向かうと思ったら…しっかりタクシーを呼んでいた。
「ごきげんよう!! ヒーウィーゴー!!」
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