第31話 英語でなんだっけ?

「アホ…タヌキちゃうわ…」

「あ~、なんだっけ?そうそうraccoon dogよね確か」

「ちゃうねん…アレ、ムジナや」

「ムジナ…ってナニ?タヌキ科?」

「まぁ…アナグマやな」

「ラスカル的なアレかしら、なんかファンタジーね」

「アライグマちゃうわ…なに怪異のど真ん中でファンタジー感じてんねん!! どんなアブノーマルな性癖抱えとるんやオマエ」

「アタシ、割とノーマルだと思うけど…あっでもねー」

「どうでもえぇねん…オマエの性的嗜好に興味ないわ」

「そんなにアブノーマルではないわよ…」

綺璃子キリコ、襲われた自覚ないやろ?」

「えっ?アタシ襲われてんの?タヌキに?」

「ムジナや…」

「ちなみに英語で?」

「…raccoon dogや…」

「やっぱタヌキじゃない」

「そこはえぇんや…黙っといてくれる? なんや緊張感無くなるから…」

「うん…なんか眠いし…寝てていいの?」

「えぇで…」

「こういうときって…眠るな!!とか言わないの?」

「大丈夫や…好きなだけ寝とけ」


 。―――。

「オマエも寝かしつけなアカンな~袖引きムジナ…」

 ギロッと袖引きムジナを睨むイプシロン(仮)。

 イプシロン(仮)の妖気に、たじろぎ距離を取ろうとする袖引きムジナ。

 イプシロン(仮)がヒュッと前足で袖引きムジナを引き裂くと、もやがサーッと晴れていく。

 視界が晴れると綺璃子キリコの部屋。

 綺璃子キリコを咥えてベッドへ寝かす。

「疲れたわい…」

 大きくため息を吐くと、2足歩行の猫に変わる。

「性質の悪い妖怪に襲われても、よだれ垂らして寝とるんやから、大した度胸やで…ん?背中クサッ!! なんかよだれでクサ!!」

 もう一度シャワーを浴びて毛づくろいするイプシロン(仮)。

「結界張ってもらおうかの~レイはんに明日、相談してみるかの~」

「ンガーッ…ンガーッ…ングッ………」

「アカン!! 綺璃子キリコ、目ェ覚ましたらんかい!! 呼吸が止まっとるで」


 。―――。

「で…なんか寝苦しかったんですよね~」

「それは、嫌な夢を見たものですね、綺璃子キリコさん」

 チラっとイプシロン(仮)を見る不破ふわさん。

「あっ、じゃあコレを差し上げましょう」

「なんですか?コレ?」

「御札です、安眠の…」

「えっ?ホントですかー、コレ貼ればいいんですか?」

「えぇ、よく寝れるはずですよ」

「じゃあ早速、今夜から、あっ、アンタ、アタシの安眠を妨害しないでよね」

「よ~言うわ…無呼吸よだれ女が」

「よだれ、出してないもん」

「まくら、ガビガビやんか!!」

「あれは、涙よ」

「己の涙は、ネバネバか?ローションか?」

「誰が目からローションだすのよ!!」

「上から、下からローション垂れ流しか!! 締まりのない女やのー」

「もう怒った!! くらえ!!」

 右手で拳銃を真似する綺璃子キリコ

「BAN!」

「イダッ!!」

「BAN!! BAN!!」

「グフッ、ギャンッ!!」

「次はザクッでしょうか?」

 お茶を淹れながら、不破ふわさんが微笑んでいる。

「なんやねん、なんやねんソレ?」

「フフフフ…妖気を飛ばせるようになったのよアタシ」

「なんちゅう…迷惑な特技を身に付けよったんや…末恐ろしい女やで…」


「ところでレイはん…ザクッってなんですの?」

「えっ?イメージ的に次は妖気を刃物のように扱えるようになるんではないかと思って」

「そんなことも出来るんでしょうか?」

「やらんでえぇ…自分の不死身を試す気には、ならんで…ホンマ」

「しかし、器用ですね、綺璃子キリコさん」

「練習しました」

 薄い胸をグイッと張る綺璃子キリコ

「どこで?いつ?怖いやん…隣の住人が殺人鬼でしたってくらい怖いやん」

「妖怪退治できそうですね~ホント」

「いやぁ~それほどでも」

「褒めてないんやで…一番身近な妖怪ワシやでね…その妖気もワシのやで」

「ところで…妖怪って退治できるんですか?」

「う~ん…難しいですよ、妖怪は悪魔と違いますからねー、基本的には死って概念が無いんですよ」

「そうなんですか?」

「えっ?そうなん?」

「なんでアンタが驚くの?」

「知らんかったで…ワシ、死ねへんのか~」

「一時的に身体を失っても、また数か月とかで元に戻りますからね」

「ほぉ~」

「やめて!! そんな目で見るなや、なんや、ちょっと試してみようみたいな好奇心で殺されたらかなわんで…」

「好奇心が猫を殺す…フフフフ」

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