第33話二面性(にめんせい)ある獣(けだもの)  プロローグ

プロローグ

 

ある日西口慶介はいつもどおり仕事を終えて、妻がいる家のドアを開けた。

「ただいま」

いつもかえってくる妻の絵里の声がない。慶介は首を傾げて、いつも絵里がいる可能性が高い台所に向かった。

「絵里?」

いつもいい匂いがしているはずの台所に、なんだか鈍い匂いが鼻を突く。みると、台所には血まみれのエプロン姿の絵里が倒れていた。

「うわぁあああああ」

慶介は悲鳴をあげて、慌てて警察を呼んだ。

 その後駆けつけてきた警察に、慶介は事情を話した。

慶介は妻の絵里を殺していない。それなのに、警察は慶介のことを犯人扱いした。なんでも妻絵里を殺害した凶器の包丁から慶介の指紋が見つかったそうだ。そんな馬鹿な。本当に慶介は絵里を殺していない。絵里が殺されたあの日だって、慶介は仕事に行っていた。本当に慶介は絵里を殺していないのだった。

本当に俺は絵里を殺していない。

本当に俺は絵里を殺していない。

慶介は叫び続ける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕の友人は馬鹿である。 赤沼たぬき @duhiyutou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ