第19話僕の友人は馬鹿である。 解決?

噂や学校の先生からの連絡で、僕に暴力をふるったやつらはもれなく、少年院行きになったと聞いた。僕は安心して、一か月ぶりに学校に登校した。

登校してすぐに賛同君が、僕の席に来てくれた。

「山梨君大丈夫かい?可憐も山梨君のことを心配していたよ」

「心配かけてごめんね。もうけがは完治したから大丈夫。ありがとう賛同君」

僕は今日学校で死ぬつもりだったから、最後に念入りに賛同君には感謝の念をいっておくことにした。

「本当に賛同君に出会えてよかった」

「ああ。僕に出会えたことは神の采配だろうね」

そういって賛同君は、ウィンクした。

学校の鐘が鳴る。自分の席に戻って行く賛同君の後ろ姿を見送る。

あれから匿名で僕のことを殺すという手紙が届いた。多分岩山君達だと思う。岩山君達はまったく反省していないのだ。激しい体の痛み。僕は痛みが大嫌いだ。けれど岩山達に罰を与える死に方を僕はすることにした。

意味がある死というものは邪道だけれど、僕は大嫌いな岩山達に嫌がらせを、そして初めてできた同性の友達にささやかなお礼を返せる自らの死というものでもいいかなと、考えた。

 授業が始まって二時間目、僕は大量の薬を入れた巾着袋を取り出した。

「先生、トイレに行きたいです!」

元気よく僕は立ち上がって言った。

僕はトイレにはいかず、廊下にある水道の蛇口をひねった。勢いよく流れだす水。僕は巾着袋から大量のカプセルから取り出しておいた薬を手に乗せて、口に運ぼうとしたその時、何者かが大量の薬を持っている右手の腕を掴んだ。大量の薬は飛び散ってしまった。

「死ぬのはだめだよ、山梨君」

僕の後ろそこにはなんと、賛同君の姿があった。

「な、なんでここに?」

「君は死にたがっていた。違うかい?」

すべてを見透かされている恐怖。僕は素直に頷くしかなかった。

「なんで?」

「僕は初めに何故君が、百合先輩と仲がいいのか推測した。彼女は君に頻繁に会いに来ない。普通付き合っているとしたらもっと頻繁に会いに来るはずだろう?

彼女と君は友達だという線も考えた。友人ならば、共通の趣味があるはずだ。失礼だけれど僕は、百合先輩の趣味を調べさせてもらった。百合先輩の趣味はすぐに分かったよ。図書館で連日毒や人体や麻酔に関して調べていたからね」

「なんでそこまで」

「彼女の左手には殺傷のあとがあった。なんだか不安を感じて調べたんだ。死を求める者は、周囲にも死を求める者を引き寄せることがあるからね。始めは百合先輩が君のことを殺そうとしてる可能性も考えた。快楽殺人犯か何かかと・・。

けれど百合先輩は内向的で、人に危害を加えるタイプではないと僕は結論づけた。まぁ、完全に人の行動を予測するのは無理だから、ここは僕の勘というものもふくむけれど。

何故自殺願望がつよい百合先輩と君の仲がいいのか、それは百合先輩の願望を君が叶えてくれる殺人鬼かもしれない可能性。もしくは自殺願望の賛同者の二択だと僕は思った」

「でもそれじゃぁ、ただ単に百合先輩と僕となにかテレビとか本とかの趣味があっただけかもしれないよね?」

「もちろんその可能性も考えた。けれどその場合は安全だから、安全じゃない方の可能性を追求することにしたんだ」

僕は溜息をついた。

「何故僕が殺人鬼だとは思わなかったの?」

「君はサイコパスの特徴にも当てはまらず、君は百合先輩に恋しているようでもなかったからね」

もう一度僕は溜息をついた。

「何故僕が今死ぬと思ったの?」

「ただの勘だよ」

勘だと賛同君は言うが、なにか賛同君の中に僕の行動についての確信があるのだろうと思った。

「嘘だ。賛同君には僕が死のうとした理由もわかっていたんだろう?」

「僕の勘だよ」

「賛同君の勘の根拠を教えてよ」

なんでもかんでも賛同君は分かっているような気がする。僕はそんなにわかりやすいのか?悔しくて、僕は泣きそうになる。

「初めて君を見た時から、僕は君がさみしそうに見えた。誰からも注目されたことがない」

「うるさい!黙れ!!賛同君なんて大っ嫌いだ!!僕は寂しくなんてない。何も知らないくせに、僕のことを分かったように言うな」

「そうだね。人の気持ちはわからない。すまない」

「賛同君」

「ただ一人で君がクラスにいたから寂しそうだと、予想をつけて適当に鎌をかけてみただけなんだ」

「・・・・・」

僕はまんまと賛同君に引っかかった・

「それに僕は神に愛されている存在だ。すべてが見通せる」

「・・・・ごめん。今賛同君につっこみをいれる気力がないよ」

「仕方がない。教室に戻ろうか」

「ああ、そうだね」

僕はなんだかこれ以上賛同君の顔を見ていたくなくて、廊下を歩き出した。

「山梨君!」

「何?」

「君は自分が思っているより、人に必要とされたがっている。君は死ぬべきではない」

「僕は死なない。いつか消えるだけ」

そういって今度こそ僕は教室に向かって歩き出した。僕は死ぬのを失敗したのだった。僕の脳裏に、百合先輩の姿が思い浮かぶ。僕は百合先輩のことが好きだ。恋している。けれど百合先輩は僕と恋人になる未来は望んでないだろうと思っていた。百合先輩が必要なのは、きっと恋人ではなくてただの同志なのだと。

僕はそれで満足をしてしまっていた。

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