第5話

「おい早く席に着け―」


井上先生の声に、クラスのみんなが話しながらも自分の席へと戻って行く。


「山梨。お前放課後、職員室に来い」


井上先生が何故か僕に言った。


「へ?僕何かしましたか?」

「それは後で、話す」


 そういって井上先生は、出席をとり始めた。

 僕はどうして担任に呼び出されたのか心底わからず、首を傾げた。勉強だって真面目にしているし、宿題だって忘れたことはないのにな。

まぁ、何か用事でもあるんだろうと僕は軽く考えて、机の上から教科書を開いた。

授業を全部終わると、学校のチャイムが鳴った。  


「一郎君、僕井上先生から呼び出されているから、少し待っていてほしいのだけれど」


僕は一郎君の席を訪ねて言った。


「分かった。待っている」


一郎君の了承を取り付けて、僕は職員室へと向かった。


 「失礼します」


僕はそういって、職員室にいる井上先生のもとへと向かった。井上先生は、僕の顔を見ると笑った。


「少しお前への重大な話がある。生徒指導室へと行こうか」


僕は頷いて、井上先生の後を歩き出した。

生徒指導室は、職員室の奥にある。生徒指導室に入ると、僕は椅子に座った。


「山梨、お茶飲むか?」


お茶?生徒指導室に来ると、お茶なんてものをだしてもらえるのか。


「はい」


お茶が入った湯呑が、井上先生の手から僕の前に置かれた。僕は喉が渇いていたので、早速お茶に口をつけた。

目の前の井上先生が、異様にお茶を飲んでいる僕の顔を見ていることに気付いた。


「あの?」

「いや、山梨は、いつのまにか賛同と仲良くなっているなって」


なんだか眠くなってきて、僕は欠伸をした。


「こないだ賛同が、教室で佐々雅先生を殺した犯人を推理していただろう?」


 ふと、井上先生は、横から包丁を取り出して、僕の方へ向けた。僕は息をのんだ。


「せ、先生?」

「声を上げたら今すぐ殺す」


包丁の切っ先が、僕の首に向けられる。


「じょ、冗談はやめてくださいよ」

「悪いが、俺は本気だ。俺が、佐々雅綾子を殺した」


衝撃の井上先生の言葉。おい!警察!まったく犯人違うだろうが!!僕は心の中で、盛大に警察を罵った。

井上先生は、笑いながら身動きの取れない僕を、見下ろしていた。

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