第15話僕の友人は馬鹿である。

「黒田さんは有名な調教師らしいの。痛みすら快楽に変えられるそうよ」

とんでもないことを百合先輩は言い出した。

「俺はサディストです。貴方たちの消え去ることが望みなら、俺も手伝えるかもしれない」

黒田の言葉に、僕は絶句。

「いやいやいや、僕にそういう趣味はないし、僕は痛みもなく自分の存在をけしたいだけだからね!!」

「無理よ。痛み亡くして死ぬなんて。私は死にたいの。でも死ぬのはたいそうな激痛よ。人に手伝ってもらわなければ」

「百合さんはこの人に殺してもらうの?」

「ええ。すこし考えているの」

「自分自身を自分の手で消え去ることが、美しいんじゃないか!どこのかもしれない人間なんて」

僕は何とか美しく百合先輩に死んでほしい。僕は何とか百合先輩に気を変えてもらおうと、言い募る。

それまで黙っていた黒田悟が後ろから、僕の首筋に触れた。僕の全身が鳥肌立つ。

「俺ならば自我を失わせるように、気持よく殺せることができるかもしれない」

「僕は男に興味はないよ!不用意に近づかないでくれ!怖いんだ」

僕は先生に口づけられて殺されそうになった傷もまだ癒えてなかった。

黒田は後ろから僕の首に力をこめて、僕の体を机の上に押し付けた。全体重をかけられて僕は呻く。

「大丈夫。あなたの存在が侵略され辱め、存在がズタズタにされる。それが君の望みだろう?」

「いやいやいや!ちょっと!百合先輩助けて!!」

百合先輩は溜息をついた。

「あなたはサディスト。人に痛みを与えて殺すのが好きですものね。痛みなくして殺すことは無理かしらね」

「痛みを快楽にかえて調教はできるかもしれない」

ぎりぎり後ろから僕の首を黒田は締め上げる。黒田の爪が僕の皮膚に突き刺さって地味にいたい。

「僕は痛みの一切は厭なんだ!自分で消すからほっといてくれ!!」

「痛みを調教ね。いいわね。やってみようかしら?」

百合先輩が狂い出した。なんとかせねば、美しい消滅の世界が、SMの世界に塗り替えられてしまう。

「百合先輩正気に戻ってください。そしてお前さっさと僕の首から手を放せよ!!」

「すまない」

謝罪して素直に男は、僕の首から手を放した。

「どちらにせよ、山梨君。あなたは死に関して甘く見すぎよ。苦痛なくして死はあり得ないわ」

「・・・・そんなことは」

「俺ならば気持ちよくして、死を味わせることができるかもしれない」

しょうこりもなく黒田が言うので、僕は頭に血が上る。

「お前はさっさと帰れ!」

「悪いわね、山梨君が動揺している。今日は帰ってもらえるかしら」

「ああ。分かった。これを」

黒田は胸のポケットから名刺を取り出して、二枚テーブルの上に置いた。

「俺は基本人を殺すことはしていないが、気持ちの良い痛みを味わいたかったらいつでも連絡をしてくれ。安くしておく」

「ありがとう。黒田さん、これ今日の分」

百合さんは茶封筒を、黒田さんに手渡した。黒田さんは茶封筒をスーツの胸ポケットに入れた。

「・・・・お金を支払うなんて!あの男は一体何者なんですか!!」

「ネットで知り合った職業ホストの人よ。主に女の人に対して調教していたみたい。あの人のうたい文句が、痛みを快楽にということだから興味があって、バイトしたお金で少し頼んだの」

「そこは素直にモルヒネにしておきましょうよ」

「モルヒネは手に入らない。下手したら私たちが捕まってしまうのよ。家族に迷惑はかけられないわ」

「百合先輩が自殺しようとしている点で、もう家族に迷惑が掛かっているような気がします」

「それもそうね」

百合先輩は笑った。だから僕も笑った。

「頑張って死にましょうね」

いつもの百合先輩の決まり文句。

「はい!」

僕もいつものように元気よく返事した。

百合先輩と他愛のないことを話し、それからしばらくして僕は洋服を着て百合先輩の家を後にした。

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