第10話 僕の友人の妹のこと

「この方はうちのクラスの担任の先生をしてらっしゃる、一崎紫朗先生です。一崎先生、こちらの美しい方は私のお兄様の一郎お兄様。お兄様の御隣の方は山梨様。お二人とも私の上履きを探すのを手伝ってくれる方です」

「そ、そうか」

一崎先生の腕を、可憐さんは抱きしめている。生徒と教師の距離がなんだかおかしいなと、僕は不思議におもった。

確かに一崎先生は、女にもてそうな清潔感がある姿をしているが、賛同君みたいなすごいハンサムというわけでもない。一崎先生は女子中学校だからもてているのかもしれないと、僕はうらやましく思った。

「一崎先生、山梨様とお兄様はまるで恋人のように仲がいいんですよ」

先ほど可憐さんは僕に賛同君に手を出すなとくぎを刺したはずなのに、まるで賛同君と僕の仲を恋人のようと、人前で言うことに違和感を覚えて僕は首を傾げた。

賛同君は溜息を吐くと、僕の手を手でつないだ。

「わ」

しかも賛同君はつないだ手を、普通の友達つなぎから、賛同君は僕の手を恋人つなぎで指の間に指を入れて手をつなぎなおした。

賛同君は微笑んで、たじろぐ一崎先生の方を見た。

「一崎先生少しお話があるのですが、よろしいですか?」

賛同君の問いかけに、一崎先生は頷いた。

「可憐、山梨君、少し僕は一崎先生と話があるからここで待っていてくれないかな?」

「・・・いいけど」

一崎先生に賛同君の話とはなんだろう?僕は不思議におもう。

「いってらっしゃい。お兄様」

可憐さんは賛同君と一崎先生の話が気にならないのか、満面の笑みを浮かべている。賛同君は苦笑いを浮かべ、ご機嫌な可憐の頭を撫でた。

「行ってくるよ」

賛同君を見送ると、可憐さんは呟いた。

「お兄様は本当に優しいわ。それも私にだけ」

僕にも賛同君は優しいと思う。それを口には出さず、ぼんやり賛同君が去って行った方向を見ている可憐さんの横顔を、僕は見た。


「ただいま」

それから三十分ほどに賛同君は一人で、僕と可憐さんの元に戻ってきた。

「可憐、一崎先生はお前のことを好きにならない。あきらめなさい」

急に賛同君がそう言いだして、僕は驚いて心臓が止まりそうになった。

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