第29話 自殺マニア

ある男は顔を隠し、教会を訪れた。そして男は紙に書かれた一枚の手紙を、牧師の男に手渡した。

牧師は手紙を開いてその手紙を見た。その手紙には男の告解が書かれていた。


ああ、満たされない。

虫を殺しても

動物をいたぶっても、俺はどうしても満たされなかった。俺の心には大きな穴がある。その穴はセックスをしても、人と話していても、決して満たされない。人を虐め辱めるときにだけ、俺の心に人の苦悶の表情だけに、俺の心は反応した。人に屈辱を与える。すると俺は興奮した。人に嫌がられ、八倒され、それを無視して俺は人を蹂躙する。その時にだけ僕という存在が満たされる気がした。けれどそれはまやかしだ。静寂な死を愛する人間に出会ってしまった。彼は虚無を愛している。何をしても彼は俺のことを見もしないだろう。自分自身への愛とは、死だということを彼は言っていた。俺はこのときはじめて相手の求める者を与えようと思った。でも俺は彼に苦痛をも与えたいと思った。俺という存在を彼にも見てほしかったからだ。必死に俺自身を彼にアピールしていくうちに、俺は気づいた。俺の中に満たされない焦燥は日に日に強くなっている。それでも俺はいつのまにか彼を満たしたいと思っているうちに、俺自身のことなどどうでもよくなっていた。俺は幸せを手に入れていた。だから彼にも幸せでいてほしかった。

だから・・・・俺は、俺は彼の求める死を与えようと思った。

 

 牧師は手紙を折りたたみ、神への祈りを始めた。

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