第34話 LAで猫のアダプション 家族が増えた日。


第34話 LAで猫のアダプション 家族が増えた日。


LA時代の大きな出来事は市民権の取得もですが、猫を飼い始めたことだ。


LAで母を呼び寄せることになった。日本を離れて寂しい母へせめてなにか毎日が楽しくなるようにと考えたのが発端だった。

猫は私も大好きだが、移動が多いミリタリー生活なので引退してからと思っていた。

生き物を飼うってとても責任があると思う。亀のかめちゃんはアイダホに連れていけずに(当時爬虫類と両生類は連れて行けなかった)泣く泣くお友達に託していった夫も慎重だった。

「う~ん、猫ね、ちゃんと世話をするよね?ぼくは出張も多いよ?」

「母が世話をするって言ってるよ、私も手伝うし」

「旅行もあまりいけなくなるよ?よく考えた?」

「うん、考えたよ」


根が真面目な私たちはそんな話を毎晩していた。

最初何も知らずにペットショップへ行ったのだが、犬も猫も売っていない!

この時はもう違法になっていることを知らなかった。 ペットといえばペットショップもしくは外で子猫を拾うまたは子犬をもらう。という考えしかなかった私達あせった。

のら猫も保護されるのでいない。

拾いたくても、のら猫はいない。買いたくてもペットショップにもいない。


 ある日ペットショップに張り紙がしてあるのを発見した。 そこには、今度の日曜日アダプション会(里親会)ある。と書いてあった。 


「あ!これ、これだよ。良かった行ってみよう!」

LAトーランス近くにあるローンデールの大きなペット屋さんに日曜日行った。 今まで売るための子犬や子猫が入っていたケージにアダプションの子猫が!!

「ギャ~この子を!」

「もう予約済みなのごめんなさいね。今から5匹子猫が来るって連絡受けているから、待ってて」と言われて、もんもんと待つ私、夫、息子、そして母

みゃあみゃあと小さい子猫が5匹。ダンボールに入れられてやってきた。


「きた~~~~!!」テンションマックスな私達


ちなみにダンボールはカップヌードルUSA。 持ってきた女性はメキシコ系の女性で泣いていた。旦那のほうは「ほれ、早くしろよ」みたいな感じで2人でスペイン語で話していた。

くっきりした顔だちで灰色の毛並みの一番小さかった子猫に決めた。抱っこさせてもらった夫はあまりの可愛さ、あまりの小ささに悶絶。


おとうたん、一番厳しいこと言ってたのにノックアウトの瞬間だった。

だけど、その日にもらって帰れないと言われた。なぜかというとLAの法律で生後2ヶ月以内の子猫は譲歩できないのだそうだ。

なので、最初の子猫も(予約済み)だったのだ。一週間後に来てくださいと言われて

「いや~~~~~」蛇の生殺しだ。でも仕方なく、次の週までワクワクと待った。

さて、運命のその日。灰色毛並みちゃん、いた、いた!!。茶トラの子猫と一緒に寝ていた。 うんやっぱりかわいい~と書類にサインを始めた。 譲歩にあたって厳しい項目がたくさんあった。一つ一つよく読みながらサインをしていく。


(完全に室内飼いにすること)(爪の除去手術は絶対に行わない)(ワクチン注射は必ずすること)(避妊手術も必ずおこなうこと)


ここで里親会の人と夫と話が始まった。 実は一緒に寝ている茶トラの子猫はまだ里親が決まっていないだと。

私は最初は一匹と決めていた。ペットの病院代が高いのを知っていた。それから譲歩にもお金がかかるのだ。確か一匹120ドルだった。これには避妊手術代金が含まれている。

座って手続きを待ってた私に夫がそろそろと近づいてくる。

「あの、あのね」くねくねしてる。

「もう一匹いーですか?ツーいいですか?」

「え~~??だめだよ、最初は一匹!」

「兄弟がいるの、オレンジタビー(茶トラ)だって一緒にスリーピング」


目がうるうるしてる。涙目の夫くねくねしつつ

「可哀想だよ、ハグしてる。引き離せないよツープリーズ!」

「う~ん、だって病院代もかかるんだよ…」

「お給料上がったから!」


そのうち母と息子も来て3人で目で訴えられた私。

「しょうがないなあ、じゃあそうする?」


わ~~と盛り上がる家族。 いそいそともう一枚書類を書く夫。

どれどれ売れ残りの茶トラはどんな顔?と見に行こうとすると、なんとなんと次に来た子猫は真っ白なチンチラ種の子猫でキャットフードのモデルのよう。こんな美しい猫見たことないというような子猫だった。

ふわっふわの真っ白。せこいけど買ったら10万円くらいしそうと瞬時に考えてしまった。それにしても可愛すぎる。

「ギャ~~~すっごい可愛いの来た!!この子がいいなあ、ねえもう遅い?」とひどい私。

「遅いし、2匹飼いたいのはそんな理由じゃないよ、仲良しの兄弟だからなんだよ」

あううう美猫には人が群がってる。ボランティアに来ていた高校生まで

「私、この子ドネーションする!」と言い里親会から断られていた。

「え?どうしてノーなのよ!」ガム噛みながら怒ってる。この里親会は人をよく見ていて断わっている家族も多かった。

5匹の子猫が来た時に他の子猫を抱っこさせたもらっていた家族は断られていた。小さい子供が多くて、それは良いのだが、猫の扱いが乱暴だった。話し方などもよーく観察していたようだ。

そういうことはあとから聞いたので、信用されたのだなあと嬉しかった。

そんなプロな里親会の女性は夫を見ぬいた。

売れ残ってる茶トラ、この人なら幸せに出来ると。


「兄弟一緒のほうが良い、特にこんなに仲良しならば」と言われて抱っこしあって寝ている子猫を見せられて腰が抜けたおとうたん。

鬼嫁にそーっとお願いした。鬼嫁はしぶしぶOKしたものの、あとから来た白猫に心奪われている。

「いっそ3匹でも良いですよ」なんて言ってくれた。どこまで信用されているんだ、おとうたん。ああ~白のチンチラあ~。


「いえ、今回はこの兄弟をお願いします」と我に返ったおとうたん。書類を済ませ、お金を払い、必要な物を全部そのペットショップで購入した。 子猫のフード、トイレ、砂。それから小さいキャリーも2つ買った。 ペットショップはペットが売れなくなった今、こうやってビジネスを続けていて、合理的ですごくいいことだと思った。


「じゃあおうちに帰ろうね」とそれぞれをキャリーに入れます。茶トラの方の顔立ちは正直灰色の方よりも劣っていた。 ひとことで言うと、わるそーだった。

うう、まだ心残りの白い猫をせめて写真を撮ろうとして息子に怒られた。

「何してるのママ、うちの子はこの子だよ」と悪茶トラを抱っこしている。

「そっか…そうだよね、うちの子だもんね」車の中でキャリーを開けて茶トラに

「よろしくね」と挨拶をすると

「えっぷし」と加トちゃんのようなくしゃみをされ、顔に鼻水を飛ばされた。

「き、きたねー!」


そんなはじめての挨拶を交わした私達。家につくと元気に2匹で飛び跳ねている。

グレータビーはコタロウ。呼び名はコタちゃん。 

オレンジタビーはチャチャマルと名づけた呼び名はチャチャ。


「あ、可愛い、一緒に遊んでる。やっぱり2匹でよかった仲良しだね」

「ね、言ったとおりでしょう?」鼻の穴膨らますおとうたん。

子猫のあまりの可愛い動作に私の心も捕まりかけた。が、なんかくせえ。お腹を壊していたチャチャの足が汚れていた。

「あ~もう、しょうがないなあ」にこにことバスルームのシンクに連れて行って足を洗おうとゆるいお湯をかけた瞬間

ふぎゃ~~~~~~と私の肩まで駆け上り、そのままどすんと下に落ちぶっ飛んで逃げて行った。


「こ、このやろう!!」

私の胸には13本の傷。たぶん前足10本分、後ろ足3本。


「ばきゃろー恩知らず!!」

そして鬼嫁は夫を指差して

「一匹でいいって言ったよね!!返してきて!!」ひどい。


それから5年。

チャチャはものすごい甘えん坊で私のことが大好きでどこでもくっついてくる。私も見ているだけで泣いてしまうほど、溺愛している。あまりのかわいさに失神しそうなくらいだ。ねこのいない生活は考えられない。

そして夫には冷たいチャチャ。 夫の一言でうちの子になったのに。

「ママは本当はひどいんだよ、君のことを返してきてって言ったんだよ」と時々言いつけている夫だった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る