第3話 亀ちゃんの思い出
まだ結婚する前、基地の独身者用のドームの彼の部屋へ遊びに行った時の事のはなしだ。
在日米空軍の独身者は一部屋をルームメートと共有している。当時でも結構狭いところに住んでいるんだなあと思った。
それぞれ工夫してあり、彼のルームメイトはベッド周りに病院のようにカーテンを引いてあった。プライバシー用にだろうか。男性も女性も同じドームで、ルームメイトは同性に限られていた。
彼の部屋。そこにはなんと、2畳ぶんの畳が敷いてあった。ベッドがあり、そのすぐそばに2畳の畳。 初めて見たときはびっくりした。
「え~たたみ~??」
「うん、いいでしょう?タタミマット!ヘビーだった!」
2畳分の畳マットを買ってかついで帰ったんだ?
そして壁には布のタペストリーがかっていた。
黒字に(京都)(日本)の金文字、絵は富士山と桜と舞妓さん。ものすごい、べたなTheジャパーンだ。
「これ、どこで買ったの?」
「あ!これ好き?欲しい?」
いらない。
壁に貼ってあるThe japanないろいろなものを見せてくれた。机の上にも金色の龍の置物があった。え?龍?それはジャパンかな?
さらにベッドの上に毛布が掛けてあり、ロイヤルブルーの毛布に一面に大きな虎の模様が描かれていた。
なんか、それ、もう、絶対に日本じゃないし。
ハリウッドの日本人が出てくる場面でジャーンと銅鑼が鳴り響くような感じだった。
それにしても、提灯とか紙でできたランプとかどこもかしこも日本ラブにあふれていて、私はぷっと笑いながらもすごく嬉しくなってしまった。
それから、ペットの緑がめを大事に飼っていた。 大きな水槽に綺麗な水。色とりどりの石を敷き詰め、宝箱のような飾りも入っていた。
「あ!カメ飼ってるんだ!名前は?」
「かめちゃん」
……そのまんまだ。
かめちゃんを買って帰った日に亀という日本語を辞書で調べたそうだ。そしてかめちゃんは初めて行ったお祭りで買ったのだという。それは多分福生の七夕祭り。
「金魚すくいは楽しかったけど、難しかった」とか「焼いたコーンはソイソース味で美味しかった」とかすごく嬉しそうに話してくれた。写真もたくさん撮っていた。
そして小さいかめちゃんに一目惚れした夫。
「あうう~これ、いくらでーすかー?」と涙目で聞いたに違いない。確信しているのは理由があるだ。これは後から書いていこうと思う。
すごく大事にかめちゃんを飼っているのを見て、そして優しそうな目でカメちゃんを見るのを見て、この人は家族を大事にする人に違いないと直感した。
そしてその直感は大当たりだったのだった。
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