第35話 “土蜘蛛” の糸
「さすがに “
藪鮫は言いながら土蜘蛛と呼ぶ火器を
糸は鋼鉄よりも堅い。厚さ十センチの鉄板でも軽く突き通す。
グワラアァッ!
疫鬼は立ち上がったまま骸骨の頭部を上に向け叫んだ。藪鮫は走りながら次々と糸を発射していく。 “
それを横目にリンメイは宙を舞い、鋭く伸びた爪で疫鬼を引っ掻く。
ハリネズミのように糸を打ちこまれ、疫鬼はどすんと尻を落とした。
「やったか!」
藪鮫は油断なく、ライティングに浮かぶ疫鬼を注視する。
リンメイは地面を蹴り宙に舞うと、疫鬼の顔めがけて爪を伸ばした。
ブゥンッ!
いきなり一本の尾がうなりを上げてリンメイの身体を叩く。
「ギャッ!」
ふいを喰らったリンメイは、くの字になったまま吹き飛ばされた。
疫鬼の身体が細かく揺れ始めた。一本、また一本と打たれた土蜘蛛の糸が疫鬼の身体から抜けていく。みるみるうちに何百本もの硬質の糸が大地に落ちていった。
「へえっ、さすが超疫鬼、ってかな。困ったもんだぁ。大抵の妖物はこの土蜘蛛の糸で封印できるんだけどなあ」
藪鮫はさして深刻な表情を浮かべていない。
「仕方ないかあ。やはり “天狗筒” を使わざるをえないか」
土蜘蛛をホルスターへ素早くもどすと、ベルトの後ろへ手を回した。
その時、いきなり藪鮫の立つ足元の土がはじけ飛んだ。地中から疫鬼の尻尾が飛び出し、藪鮫の身体を跳ね上げたのだ。
うつむいていた疫鬼が顔を上げた。スクッと立ち上がる。空中でバランスを崩した藪鮫は大地に激突した。寸でのところで受け身を取り、衝撃を分散したもののすぐには起きられないほどのダメージをくらってしまった。
つづく
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