黎明の霊廟。
入力機器を叩く音が響く。
彼にとっては使い慣れたキーボードだ。
他の誰にも扱えないだろう一点物の。
規則的なその音が止み、彼は一息つく。
といってもこの場所には大気がないので形式的なものなのだが。
「平和だな」
零れ落ちた思いは紛れもなく自分の求めたもの。
「ここには争いはない。悲しみも、怒りも、そして憎しみも」
ああ、そのとおりである。
残酷なまでに真実、この場所は平和であった。
「不変のものは神だけで、その他は絶えず形を変え続ける」
それほど不安定な空間であるから、力は発揮されやすい。
「計画された偶然、設定された運命、実行された奇跡」
その隔絶した視点は理を映し出す
「それらに何の価値を求めているのだろうね、私は」
神という存在が不変のものである、なんてそんなこと有り得はしないのだ。
鏡の枝が揺れる。
漆黒の草原がなびく。
深緑の幹は何も語らず。
純白の花は咲き誇る。
七色の雲は空を飾り。
透明な星は空を彩る。
黄昏の空はただ其処に、寂びた天秤の導きを待つ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます