天命刹歌 第7話 宇摩志阿斯訶備比古遅神

紅い眼に、白い髪、褐色の肌が、ただ異様。

でも、それがあえて、紅白の神聖さを引き立てる。

白カビと、からできた泥、そして、まだ人間だった自分の


「……キミは、なんだ」


天使が息をのむ。


「……おなか、減った」


2人そろってずっこけた。


「あいた、いや、そうじゃなくて、そうだ、キミの名前は?」


「……存在としては宇摩志阿斯訶備比古遅神ウマシアシカビヒコヂノカミ、早くご飯頂戴」

そんなこといわれても。

この世界は今のところ昔のOSソフトみたいな平原が果てまで続く世界のため、

食糧なんてさっき消えたバックの中以外に存在しない。

「食物が現在時点のこの世界には存在しないんだが、

というかキミらはニンゲンの食べるものを食べても平気なのか?」

転んだ先で立ち上がる所作まで美しい天使カミに聞いてみる。


「大丈夫ですよ?えっと、概念的な供物が最も効率がいいですが、

一定以上のエネルギー量を持つものでも代用は可能です。

私は高天原そのものからエネルギーを得ているので、

存在にリソースを割く必要はないですね。

とはいえ、食物を摂取してわざわざエネルギーに変換するのは、

他の方法と比べて効率が悪いので、あまりお勧めはしません」


長文ありがとう。

「確かに想念で存在できれば楽……でも私は食べないと存在できないから。

だから早く、愛玩動物に飼い主が餌をやるのは当然のこと」

堂々と自分を愛玩動物ペットと言い放つアルビノ褐色。

しかしながら実際自分が創造主ということ自体は歴然たる事実。

正直全部が全部、純然たる偶然の賜物なのだが。


こう、創った当初には想像もつかないくらい騒がしく、なった?

この世界に若干の感慨を覚えながら、何か出せるだろうかと考える。

「エネルギー?なら、これでもいいかな?」

いつも宇宙空間で張るバリア的なものをいつもより分厚く張る。

「……十分、これからも養って」


もっきゅ、もっきゅ。


文字で表したらこうなるであろうその食事捕食風景は、

何とも言えない愛玩動物のような小動物感を漂わせる。

「こう、庇護欲というか、癒しが溢れ出ていますね」

それは、母性というものではないか?

その心の声ホンネを押し殺し、地面に落ちたままの刀と鞘を回収する。

「確かに」

そう、短く返す。


この瞬間とき高天原セカイは確かに平和だった。

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