天命刹歌 第20話 777メートルの地下

薄暗い、それこそ足元がようやく見える程度の通路を歩いていく三つの影。

しばらくすると地下への階段があり、誰が決めるでもなく下に降りていった。


「……人工物、しかも高度」

随所の明らかな不自然さと、素材名がはっきりしない半透明な床。

「暗ーい」

「狭ーい」

暗さに不満を表明した黄金に応えるように、光が満ちる。


全く気付いていないが、半透明だった床は明確な実体を持っていた。

「……ひらけている?」

「今度は高ーい」

狭さの不満を声に出した白金に応えるように、大きな広間に出た。


「結晶だ、きらきら」

「結晶だ、ぴかぴか」

その中心には、透き通る緑の結晶が鎮座していた。


「……これが、見せたかったもの?」

「「ううん、さっきは入れなかったもの」」


緋葉は、それに手を触れてみる。

「……冷たいわけじゃない、むしろ少し熱い?」

明確に、生物のような温もりを感じた。

「わーあったかーい」

「わーってあれ?」

黄金が手を触れた瞬間、その広間、エレベーターは動き出す。


「「動いた」」

「……結局下がるならなんで階段降りさせた」

広間が床ごと下に沈んで行く。

やがて、透明な結晶の壁に囲まれた終着所で止まった。

さっきより広い。

ほぼ完全な円に近い形だった。

さっきより高い。

天井には星が煌めいていた。

さっきより遠い。

入り口の高さから、約777メートル下がった。


先ほど、入り口の通路ほどではないが暗くなった辺りを見て、双子は。

「ちゃんともどれるかな」

「ちゃんとたどれるかな」

今更すぎると思う。


「……今それをいう?」

「「うん」」

「……最初の床から出るの怖くなってきたんだけど」

「大丈夫っていってるから大丈夫」

「大丈夫じゃないって思えるから大丈夫」

「……結局どっち?」

「「とにかく進もう」」

双子が指を指す。

「……はあ、わかった」


指す先、この広間の端っこに見える通路、淡く光が見えた。

それを目指して、3人はまた歩き出した。

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